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Cube box*

作者: 栖里 嘉一
掲載日:2011/11/13

大丈夫。しかくい箱が私を守ってくれる。

ここまでくれば大丈夫。


まゆこは何度も口の中で繰り返した。


ここから出たくなんてない。

私を守るのはこの白い箱だけ。

ここから出たら私を守るものなんてない。


部屋の片隅で丸くなっている物体。

まゆこは身を守るようにきゅっと体を縮めた。

俯いた顔をあげることはなかった。


わかっている。本当は。

ここにいちゃいけないということ。

曇りのない面に囲まれて

何も考えずに生きていくことなんて許されない。


――もう少し。もう少しだけ。

煩雑な外の世界。

端のない殻。捕まえることはできない。

常にそばにいて見張っているのに

私を守ってはくれない。


床と壁と天井と、区別のつかない部屋。

その形状は美しくまゆこの心を慰めた。


一歩を踏み出す勇気を。

前を向くことからはじめなくては。

この箱を、開くのは私。


重い扉。かけた手が思うように動かない。

部屋が呼んでいるのがまゆこには聞こえた。


かえっておいで

いつでもはこはまっている

あまいざれごととすてきなゆめをよういして


まゆこはただ、白い壁を見つめていた。

ややあってから、ゆっくりとかぶりを振った。

さぁ行こう。

逃げてくればいいんだ。

傷つけられても。


さぁ行こう。

見つかるかもしれない。

この箱より美しく、私の心を揺さぶるものが。


――生きるのに必要なのは、夢と、希望か。


さぁ進もう。

私は私でなくなるかもしれない。

悲しいけれど。


さぁ進もう。

忘れてしまえばいいんだ。

この箱より美しく生きることなんてできないのだから。


まゆこには分かっていた。

――生きるのに必要なのは、諦めと、絶望だ。



もう確かめることはできないけれど


私が変わってしまったとしても


私が故意に忘れたとしても


私が、消えたとしても


世界が醜く歪んでも


その箱は美しくあり続け


私の存在などものともせずに


また、誰かを慰めていくのだろう。


お読みいただきありがとうございました。

作者は空箱とかについ惹かれて集めてしまうことが多いです――どうでもいいですが。

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