アイダホ 番外 (面接 出前)
出 「ども~」
主 「いつもの服はどうしたラーメン屋」
出 「変なあだ名つけんのやめぃな、アタシの普段着がこれやから。アタシのいつモンはこの服や」(着ている、ぬのカッパっぽい服を、主’に伸ばしてみせる)
主 「じゃあ俺の前に現れる時は仕事着で頼むわ」
出 「なんでやねん。なんで一々顔みせんのに着替えせにゃならんの」
主 「ほら、他の奴に比べて、特徴、皆無に等しいし、名前が出前だし、総じて地味だし」
出(一言ごとに、肩が沈む。最終的に立ちヒザで地面に両手がつく形になる)「なんやねんそれ……。そンなら、髪型かえたるわ。髪ビョーンにする。髪ビョーンにしたる」(立ち上がる。髪の毛もつまんでビョーン持ち上げる)
主 「で、何しに来たんだ? 三人なら部屋戻ったぞ」
出(ビョーンの手をゆっくりと後ろにやる)「いやさっき、面白いことしとった聞いて、来たんや」
主 「してないしてない。例えしていたとしても、絶対にしてない」
出 「なんやねんそれ! 軽いいじめやんか!」
主 「と、怒鳴るも無表情なのな」
出(一拍、ムッとする)「じーがーおっ!(人差し指を立てた手で、自分の顔をぐるぐると囲む)元々こうゆう顔」
主 「大御所の師匠ってこんな感じだよな」
出 「知らんがな!!(ちょっとのけぞる)」
主 「関西人って、声張る割にずっと同じ顔のイメージあるなー。怒りながら喜んでたりしてそう」
出 「だで、知らんっちゅーねん! 関西ってどこぉ?! アタシ関西人ちゃう! ここよりずっと西の生まれ!」
主 「関西って西だぞ」
出 「えっそうなん? へぇ~~西っちゅうことはアタシの親戚おったりするかも、しぃひん! へ~~ちゃう!! 知らん言うてんねん!! 大体、怒りながら喜ぶってどないやねん。(一拍開ける)ムカつくわー(万歳)ムカつくわー(万歳)めっさ気持ち悪い」
主(出’を指差す)
出 「やめぇい!(手を払う)」
主(指を差す)
出(払う)
主(指を指す)
出(払う)
主(指を指す)
出 「だあー! ええかげんにせい!」(払う)
主 「どうもありがとうございましたー!」(出’の背中を押して、部屋から追い出す)
出(部屋を出る)
主(ソファーに座る。雑誌を眺める)
(15秒ほど、この状態)
出(部屋に入る。ドアを閉める。直立)「おい」
主(雑誌眺めながら)「はい」
出 「せめて面接やって」
主(顔だけ向ける)「……やる?」
出 「うん。ここでホンマ帰ったら、家で思い出して泣いてまう思うねん」
主 「そうか。じゃー……向かいのソファー座って(雑誌を閉じる。雑誌をテーブルの隅に置く)」
出 「はい」(座る)
主 「名前は?」
出(満面の笑み)「匿名希望」(どや顔)
主 「特技は?」
出(普通に続けることに驚く)「え……特技ー……出前かなあ」
主「ですよねー!! (人差し指たてた両手を一回廻す。出’を指差す)ですよねー!!」
出(よそを見る)「なんかめっさ腹立つ……」
主(テンションが戻る)「趣味は?」
出 「趣味?! 趣味……本読むことかなあ」
主 「はい、わかりました。今回の面接は以上です。ご苦労様でした」
出 「終わり?! もっと盛り上がりないン? あー……アレ、本当はアレ。趣味はポン酢を頭から被ることです!」
(3秒静止)
主 「出口はあちらです。採用の合否は後日通達します。ありがとうございました」
(互いに立つ)
出 「あ……ありがとうござぃ……。え、こんなもんなン?」
主 「面接って本来こういうもんだろ。何を勘違いしたか、あいつらがおかしいんだよ」
出(少しモヤモヤ顔)「え、うん。なら帰るわ。……もうちょい、ボケ入れたほうが……?」
主 「いやむしろ、これくらいが丁度いいよ。一番まともでほっとする、出前みたいなやつは俺がいた世界でも、友達にいたから」
出 「あ、そうなん?(頬をかく)まーええか。帰るわ。ほな、また明日な」(部屋を出る)
主(見送る)「おう」(一人。ソファーに座る。雑誌を取り、再び眺める)