閑話休題―山口家・野口家結婚披露宴の後の津田家―
どこに載せていいのか、わからないのでこちらにアップ。
シリーズ内の話なので、カンベンしてくださいませ。
主役の萩原が影も形も無いじゃん、なんてツッコミはナシで。
「暁君、ただいまー」
「ぱぱ、たーいまー」
玄関まで迎えに出た子供を抱き上げ、慧太は居間に入って行った。
「おかえりー。どうだった?野口さん、綺麗だったでしょう?」
キッチンのカウンターから顔を覗かせた瑞穂が、話しかける。
「そりゃ、一生で一番綺麗な日じゃない?式場の花、昨日野口さんが全部活けたらしいよ」
「あー、言ってた言ってた。ブーケもブートニアも自分でって。いいよねえ、そういう趣味。お茶淹れるから、着替えといでよ」
ネクタイを外しながら、慧太は引き出物の袋をカウンターに置く。
「カトラリーみたい。あと、お菓子」
スウェットに着替えて居間に戻ると、瑞穂がバームクーヘンの箱を開けているところだった。
「暁君にも、少しあげるからねえ。慧太、カウンターの上にコーヒー。私のもね」
はいはい、とサーバーからマグにコーヒーを注ぐ。
「山口さん、モデルみたいだったよ。白いタキシードで」
「かっこいいもんね。写真、撮ってきた?見せて」
渡したデジカメの液晶を確認しながら、瑞穂は綺麗、かっこいい、を繰り返した。
「あの二人の子供なら、相当期待できるだろうなあ。暁君、負けちゃダメだよ」
薄く切り分けたバームクーヘンを子供に差し出して、瑞穂が笑う。
「あら、暁君の方が可愛いに決まってるじゃない」
「親バカ」
「親バカじゃなきゃ、子育てなんてやってられません」
「山口さんと野口さんってのは、想像もしなかったなあ」
慧太が今更のように言う。
「似たもの同士ってところじゃない?あの組み合わせじゃなかったら、とっくにバレてたね」
コーヒーをすすりながら、瑞穂が相槌をうった。
「相手なんかすぐに見つかりそうな人たちなのに、結婚遅いなあとか思ってたんだけど」
「え?私、山口さんは結婚できないと思ってたよ?」
「なんで?」
慧太は瑞穂の言葉に驚いて、問い返した。
「だって、あの人、本音見せないじゃない。賢いのかも知れないけど、私は慧太みたいに、わかりやすい方がいい」
「頭良くて、いいじゃん」
「それとは別問題」
子供の顔についたバームクーヘンをとりながら、慧太はふと思い出す。
あれを聞いたのは、瑞穂がまだ佐藤と付き合っていた頃だ。
聞いたら、惜しいことしたとかって言うかな。
「山口さん、入社当時、瑞穂に気があったみたいだよ」
「知ってる」
けろりと返事が戻って、驚いたのは慧太だった。
「気がついてたの?それとも、山口さんに言われた?」
「言われなくたって気がつくわよ、女だもん。男の人って気がつかないフリしてると、勝手に純情だとか思ってくれちゃうし」
高校生みたいな外見で、初心そうで・・・そう言っていたような気がする。
山口さんともあろう人が、やっぱり騙されてたなんて。
「気がついてて、なんで・・・」
「言ったでしょ、好みじゃないの。あんな風に自分を売り込める人、好きじゃない」
慧太から見たらパーフェクトな山口は、瑞穂にはそう見える。
「でも瑞穂、普通に喋ってたよな」
耐え切れなくなったように、瑞穂は笑い出した。
「気がつかないフリしたんだから、意識しちゃダメじゃない。それくらいできるわよ、女だもん」
女だもんって、女ってみんな、そんなことができるわけ?
「・・・女って、怖っ」
「慧太がお腹に溜めて置けないだけじゃない。良かった、信頼できるダンナサマで」
笑いの止まらない瑞穂を横目で見ながら、慧太は腹の中で呟いた。
・・・俺って、修行足りねえ!
とりあえず、fin.
ストーリーに関係なくて、ごめんなさーい!