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遺書

作者: Rab
掲載日:2026/03/14

創作です。

自分に希死念慮はないはずなので、心配はご無用です。


初めましてだね


自分のことについて事細かに話すことなんてこれまでなかったからな、ちょっと恥ずかしいな


僕はさ、今僕が生を実感している意義がわからない


母には感謝してる、父にもそれなりに感謝してる


ここまで僕を成長させてくれたこと、ここまで僕に最低限の生活を保証してくれたこと


いつも両親ともに家にいなかったけどね


小学生のころからずっと。


母はパートしかしてないはずなのに何故かいつもいなかったよね


まあ家の中は自由だったってのはよかったけどさ


父はいつも仕事だから仕方ないよね?


家族のためだもんね。


家族内の円満さを無下にして家族を豊かにしようとしてるんだ。


ありがたいことだよ


いつも僕は楽しかったさ、空は青いし、水はうまいし、お風呂も温かい


でもね、いつもいつも僕はなんとなく、ただちょっとだけ寂しかった


僕には友達がいなかった


友達どころか、視線を合わせ話してくれる人なんて一人としていなかった


いつも学校に顔を出しても、汚い言葉遣いをした人間の形をしたなにかかが僕に冷たい言葉を浴びせてきた


そこに足を運ぶたび、吐き気がした、めまいがした、消えたくなった


いつも外を見ていた、鳥が飛んだ、雲が開けた、枯葉が落ちた


外にはきれいなものがたくさんあった


僕は母や父でもなく、友でもない、そんなどこにでもある誰にでも感じられる美しいものに自分の寂しさを埋めてもらおうとしていた。


僕は毎日学校帰りに小さな空き地へ行った


空地の真ん中には大きな木が一本でかでかと立っていて、僕はいつもその木の隅に座って本を読んでいた


本を読み始めて十分もすると、目の前につがいであろう二匹の鳥が飛んでくる


彼らの体は薄緑いろをしており、目はくりくりとしていて愛らしい見た目をしている


僕は彼らの姿を見ているだけで心地いいんだ。


彼らは僕が本を読んでいると近寄ってきて、その本を読み上げろと言わんばかりの目つきで僕を見つめてくる


僕は彼らが来ると彼らの期待に応えるように優しく本を読んであげた


僕はあまり頭がいいほうではないと自覚しているし、そうわかっているからこそ読書をしている。


父は覚えているだろうか?


むかし僕の目を見ながら「お前は生粋の馬鹿だ、大馬鹿者だ」なんて、非道な言葉を僕に投げかけたことを


僕はこの言葉をいつも心に留めている。


この言葉を思い出すたび父のあの時の顔を思い出す、それに自分の尊大さを見つめなおせるんだ


同時に自分の感情をすべて押し殺せる


だから父あなたには感謝しているよ。


ありがとうね。


さあ、話をもどそうか


彼らは僕が本を読むとき僕の声が速かったり、よくわからなかったときに、声を鳴らして僕に言い直しや、解説を求めてくれる


いつも僕は鳴き声が聞こえるたび、そのひとつひとつの単語を丁寧に解説してあげた


この文を読んでる君はきっと「馬鹿な奴、鳥が人間の言葉を理解できるわけないのに」なんて思ったかな


そうだね僕は馬鹿な奴だ


でもね、いつも彼らは僕が本を読み終わると、綺麗な鳴き声を聞かせてくれるんだ


それはまるで僕に「ありがとう」と言ってくれてるように感じられるんだよ。


僕は毎日彼らに会いに行った、雨だろうが、風邪にかかっていようが、どんな日でも彼らのところに向かった。


そんなある日、彼らが僕に彼らの子宝を見せてくれたんだ。


僕は驚いたよ。


野生の生き物が、人間なんぞに我が子を見せびらかすような真似、死んでもしないと思っていたからさ。


僕は彼らに出産祝いの手向けとして、自分の一番好きな小説を一冊読んでやろうと思った。


僕は一度家に戻り例の本を手に取り空地へ再度向かおうとした


さあ、この本をもって彼らに読んであげよう!


と揚々と玄関の戸を開けるとそこに母がいた。


母は仏頂面で僕が手に持っている一冊の本を見てこう言った


「毎日本を読んで殊勝なものですね」


母の声色、発言、振る舞いそのすべてが僕を小ばかにするような皮肉を帯びている様に感じた


いや、実際そうだったのだろう


僕はそれを聞いた時、「ああ本を読むことが大切って言ってたのはあなたなのにな」、なんて思ってしまった。


本を読むことは母から教わった、本を読むことの大切さ、本を用いて勉強する方法、本の読み方もあなたに教わった


その考えが、頭をめぐると同時にどっと涙が出た。


こんなことで泣くなんて、メンタルが弱いやつなんだななんて思ったかな


そうだね、きっとそうさ


僕は母に声の震えを抑えながら投げ捨てるように言葉を吐いた


「はい、私への賛辞をありがとうございます。おかあさん」


そして僕は僕の言葉を聞いてため息ついてる母をしり目に先の公園へと向かう


公園についてみると彼らはいつものように地面をつついてご飯を食べている。


僕は安堵し、涙を拭い常なる自分を装って、いつもの定位置へ戻り本を開く


すると彼らはとたんこちらを向き、子を引き連れ僕の近くへ寄ってきた


僕は彼らへ少しだけ視線をやったのち、本を読み上げ始める


本とは長いものだ、そこが魅力でもあるけどね


今回取り上げた本は、僕がこの上なく好きな本だ


一人の少女が挫折や大切な人の死、そんな色々な経験を超えて、精神的にも、肉体的にも強く成長する。そんな話


ありきたりかもしれないけれど、僕はこの本がすこぶる好きだった


だから僕はこの本を彼らに読むことに決めた


本を読み始めたとき、空き地にある古びた時計の針は四時半を指していた


だけどあの時計が合っているかなんでどうでもいい


今が何時だろうともどうだっていい


今はただ彼らにこの本を献上したい


彼らは読んでる最中、一言として言葉を発さなかった


彼らの名誉のためにも言うが、我が子に無知な自分らを恥じて声を発っしなかった訳では決してない。


彼らは集中して聞いたいたのだ、しっかりと自分のものにできるように、しっかり理解できるように


今まで僕からもらった知識のすべてを総動員し、僕の発した言葉を彼らの言語に落としみ、しかと読解していたんだ。


そしていつか自分たちの声で、自分たちの言葉で、我が子に聞かせてあげるように。


本が読み終わったときには僕も彼らも静かに涙した。


僕はとてもうれしかった、彼らが本を理解し涙する、その光景を見るだけでさらに涙が出てくる。


父さん、涙もろくてごめんなさい


むかし涙を流すなんて男として恥ずかしいなんて、言っていたよね


僕が殴られてる場面を見てなおそういったよね。


だけど僕はこの光景を見て涙を流せない者のほうが恥ずかしいと思う。


母さん、本ばかり読んでいてごめんなさい。


だけど、僕は彼らに本を読むこと、本の面白さを伝えられたことを何よりの誇りと思っているよ。


あなたたちの子として生まれてきたことへの自負なんかより、何段も高尚な誇りだ。


世間では「生まれてくるんじゃなかった」なんて言うことをたまに耳にするね。


僕はそんなこと思わないよ、彼らに本を教えたこと、彼らの生の軌跡を見届けたこと、これはあなたたちが僕を生んでくれなきゃできなかったことだ


だから僕はあなたたちを恨みはしないし、それにいつまでも僕を想わなくたっていい


僕が生の息吹を止めたって世界は息を続けるし、彼らの子供も育ちゆく。


だから大丈夫、何も心配することもない。


何も気にすることはない。


僕は確かに世のなかや、父、母、この世のほとんどのものに憎悪を持っていた。


でもね、彼らが僕に生きる意義を教えてくれた。


それをここで明記はしない、皆が各々で探すべきものだから。


じゃあここでお別れだ、僕はすべてを嫌い憎んでいた、


だけど、それでもあなたたちの子は、幸せでしたよ。



読んでくださりありがとうございました。

二年前、不登校絶頂期に何となく書いた気晴らしです、優しい目で見てくれるとありがたいです。

気分がよかったので何となく、何となくここへ載せました

ただそれだけです。

ありがとうございました。

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