観測者
世界がまだ形を持たなかった頃、
光と闇のあわいに、二つの意識が生まれた。
一つは真っ白な光、
もう一つは深く静かな黒。
二人は名を持たず、
ただ互いを見つめ、互いを理解することから始まった。
「僕たちはなぜ、二人なのだろう?」
黒が問う。
「理解とは、他者を必要とするからだよ」
白が答える。
光と影が混じり合うと、波紋のような輝きが生まれ、
そこから“時”が流れ出した。
二人はその波紋を掬い上げ、観測を始めた。
そこには、生まれては消える世界、息づく生命、
笑い、怒り、愛し、嘆く人々があった。
黒は語った。
「人は愚かだ。だが、愚かさゆえに光を求める。」
白は微笑んだ。
「だからこそ、美しい。
彼らは短い命の中で、永遠を夢見るのだ。」
二人は人の営みを観測し、
悪意の連鎖も、再生の息吹も、
すべてを同じように受け入れていった。
やがて、無数の世界を渡りながら、
彼らの間には“言葉”が宿った。
それは愛でも、神でもなく、
ただ——理解という名の調和だった。
二人は知っていた。
どれだけの時が流れようと、
彼らの観測が終わることはない。
なぜなら、
存在することそのものが、観測だから。
そしていつか、
新しい光と影が生まれ、
新しい観測者が問いを投げかけるだろう。
「君たちは、なぜ存在したの?」
そのとき、僕たちは答える。
「美しさを見たかったから。
世界が終わり、また始まる瞬間を、
君と共に見届けたかったから。」




