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見捨てられた姫様は国を亡ぼす資格があるらしい  作者: サチオウ
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第62話 ルーナ人

空を翔けている途中で、セレネはようやく正気を取り戻した。


最初は動揺して声も出なかったが、冷静さを取り戻すにつれ、恐怖と疑念が湧き上がってくる。


「……私をさらってどうするつもりですか?」


「えっ? あのままだと襲われそうだったから助けただけだよ。戻りたいの?」


「……」


確かに、ムーンゲートを出てすぐに襲われた。それをこの人が倒してくれた.....。


その後、襲ってきた人の仲間らしき人たちが近づいてきた......。

確かにあの場に戻る選択肢はない。だが、この状況も安心できるものではない。


「いえ。ただ……なぜあなたが突然現れて、助けてくれたのかがわからなくて。不安なのです」


「ああ、それ?

ムーンゲートが気になって見に来たらあなたたちがいて、

“ルーナ人”って言葉を聞いたから気になって降りたの。

そしたら、いきなり攻撃されちゃって。だから返り討ちにしただけ。

そんな奴らに襲われてたあなたを放っておけなかっただけなんだけど」


「……そうなの?」


納得しきれない。何より怪しいのはその仮面。


「そのお面は……?」


「ああ、これね。神殿が軍に攻められたって聞いたから、誰だかわからないように顔を隠してただけ」


そう言ってサティエルは仮面を外した。


「――っ」


現れた顔を見て、セレネは息をのんだ。


気品を漂わせる、美しく若い女性。まるでお姫様のようなこの人が、本当に大猿を瞬殺し、あの剣士をも倒し、さらには、自分の結界すら容易く砕いたのだろうか?


――まさか女神様!?


恐る恐る尋ねる。


「……あなた様はどなたでございましょうか?」


「私はサティエル。自由な旅人だよ」


旅人? 本当にただの……?

半信半疑だったが、追及するよりも、

助けてもらった礼を先にすべきと判断した。


セレネは姿勢を正し、深く頭を下げた。


「失礼しました。私は月から来たルーナ人、セレネと申します。助けていただき、ありがとうございました」


「――月?」


サティエルが疑問を口にしたその時、ろっくんは村長宅の離れに降り立った。



シルヴィアがサティエルを出迎えた。


「お帰り」

「ただいま」


「大丈夫だった?……あれ、髪飾り外したの?」

「壊されちゃったの。すごく強い人がいて、危なかったんだよ」


「で、その人は誰?」

「神殿で襲われてたルーナ人」


「ルーナ人?」


その声を聞きつけ、オフィーリアも姿を現す。

「今、ルーナ人と聞こえたのだけど?」


「この人、ルーナ人みたい」


紹介された女性の顔を見ても、オフィーリアは懐疑的だった。第三の目が閉じている状態では見分けがつきにくいのだ。


セレネは無言で立ち尽くしていた。だが、命を救ってくれたサティエルに比べれば、こちらの二人は普通の人に見え、少し安堵する。


「まあ、中で話そう」


一同は部屋に移り、それぞれ席につく。


オフィーリアが仕切った。

「で、何がどうなってるの?」


「大神殿にムーンゲートが発生してて、そこから出てきたこの人が襲われてたの。近づいたら私まで攻撃されて……だからそいつらを倒してこの人を連れてきたの」


この子、面倒ごとに巻き込まれたわね……。


オフィーリアは嫌な予感に眉をひそめた。


黙り込んだ彼女の代わりに、シルヴィアが尋ねる。


「ねえ、ムーンゲートって魔界につながってるって聞くけど……あなた、魔界から来たの?」


「いえ、月からです。ムーンゲートの先は月ですよ」


「月?」


「はい。私は月の住人、ルーナ人です」


そう言って第三の目を開く。


シルヴィアが息をのむ。

「……嘘でしょ」


「本当に、ルーナ人なの?」オフィーリアも驚いた。


「はい」


「これは大事だわ。ぜひエルフィリア王国にお連れしなければ」


シルヴィアが制した。

「ちょっと待って。その人にだって、こっちに来た目的があるでしょ」


「……なぜ大神殿に来たのです?」


「大神官に聖女として招かれたからです」

――本当の理由は言えない。


「それで、大神殿はどうだった? サティエル」


問われたサティエルは他のことが気になって聞き流していた。


「月から来た……」その言葉が胸に残り、幼い頃に読んでもらった唯一の心の癒しだった本の内容を思い出していたのだ。


――月の魔法使い。本当に存在したの? 月ってどんな世界なんだろう……。


「サティエル? 大神殿はどうだったの?」

「えっ? あ、うん。破壊されてて、神官はいなかった。いたのは、私たちを襲った人たち」


「それは誰?」

「わかんない。セレネ、知ってる?」

「私も存じません」


オフィーリアが確認する。

「どんな奴らだった?」


「えーと、ギガントエイプを連れた剣士のおじさん。技を出すとき“白狼流”とか言ってた」


セレネが補足する。

「確か、ヴォルフ隊長と呼ばれていました」


オフィーリアは頭を抱える。よりによって――。

「おそらくゲルデン帝国特殊部隊の、白き狼ヴォルフ隊長だ」


ゲルデンに目をつけられたら厄介だ……。


その言葉にシルヴィアが驚く。

「えっ? その人ってゲルデン最強の剣士って噂の……。サティエル、本当に倒したの?」


「ゲルデン最強なんだ? ほんと強かったよ。危なかったし……髪飾りも壊されちゃった」


「そんな人に勝つなんて、サティエルさんは何者なんですか?」


「自由な旅人」


「……」

セレネは不満そうな顔をした。


オフィーリアが取りなす。

「悪いわね。言えないこともあるのよ」

まさか“破壊神かもしれない”なんて言えない。


「……そうですよね」




「それで、あなたはこれからどうするつもりですか?」


「大神官を探して話をしたいのですが……。もし叶わなければ、月へ戻りたいです」


サティエルの目が輝いた。

「えっ、月に戻れるの? 私も行ってみたい!」


「大神殿にある逆行の魔導具を使えば、ムーンゲートの出現位置を調整でき、月方向にも行けるようになります。ただ、あの様子では無事かどうか……」


「じゃあ、明日大神殿に行って、確かめようよ」


オフィーリアは眉をひそめた。

「ゲルデン軍がいるなら、そう簡単にはいかないわ」


確かに。神殿に人質や魔導具があるなら、アルティマータや広域魔法は使えない。多人数相手は面倒だ――サティエルもそう思う。


「じゃあ、隠れて様子だけ見に行こうよ」


「……わかった。セレネさん、それでいい?」

「はい。こんなに親切にしていただいて、本当にありがとうございます」


こうして翌日、神殿の偵察に向かうことが決まった。

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