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見捨てられた姫様は国を亡ぼす資格があるらしい  作者: サチオウ
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第61話 ルーナ大神殿・決着

幸運なことに髪飾りが壊れたことでわずかな時間ができる。


焦るエルネスタに、今度はサティシアが呼びかける。


「大丈夫、魔法で牽制する。威力はないけど、タイミングを崩せる魔法があるから!」


それを聞いたエルネスタは平静を取り戻し、反撃の準備が整う。


再び両者が構え直す。


ヴォルフが踏み込もうとした瞬間――


「――エアーキャノン!」


圧縮した空気の弾がヴォルフの顔を直撃する。


今使えるノーモーション魔法では大きなダメージは期待できない。だが呼吸を乱し、視線を逸らさせる程度の効果はある。


真剣勝負において、その一瞬の乱れは致命的だった。


ヴォルフの剣が鈍る。


サティエルは懐へ飛び込み、掌底を叩き込む。


「気功掌!」


「ぐっ……!」


ヴォルフは気功鎧で防ぎ、辛うじて致命傷を避けるが、その表情には動揺が走っていた。


何だ、今のは……???


サティシアはさらに、剣を振る瞬間の肘、着地寸前の足元へと魔法を撃ち込み、ヴォルフのリズムを崩す。


徐々に主導権はサティエルのものとなっていった。


やがて、ヴォルフが無理な体勢から中途半端な斬撃を繰り出す。


サティエルはそれに合わせて、強力な一撃を放った。


「――プチアルティマータ!」


「剣を……素手で受けに来るだと!?」


嘲りを浮かべた刹那、剣身が消滅する。


「なっ……!?わが魔剣が消し飛ぶだと......」


理解不能の光景に、ヴォルフに動揺が走る。


剣を失った今、互いは素手同士、しかも間合いは至近距離。


サティエルの武術――柔気流は、ヴォルフにとって未知。


一方でヴォルフの武術は、エルネスタが学んでいた流派に近しく、サティエルにとっては対処が容易だった。


形勢は完全に逆転する。


連続の当身が決まり、苦し紛れに放ったヴォルフの捨て身の蹴りを捕らえて関節を極め、地面へ押し倒す。


「――これで終わり」


足裏に気を集め、急所へ叩き込む。


「気功蹠!」


ヴォルフの体に気が突き抜け、やがて沈黙した。



「あー、危なかった……。こんなに強い人がいるなんて」


サティエルは息をつきながら呟いた。だがすぐに首をかしげる。

――私、なんでこの人と戦っていたんだっけ?


思い出して振り返る。


「ルーナ人は?」


そこにはまだ結界の中に閉じこもる女性の姿があった。


近づいて覗き込むと、額に第三の目を持つ彼女が必死に結界を維持している。

やっぱり……仮面と同じで、ルーナ人は三つの目を持つんだ。

驚きはしたが、サティエルは構わず声をかけた。


「もう、結界を解いても大丈夫だよ」


しかしセレネにとって、目の前の人物は正体不明の存在だった。


しかも仮面をつけ、突如現れては恐るべき強さを見せつけた相手。

簡単に結界を解けるはずがない。


セレネは戦いを中から見ていた。


本当は二人が戦っている間に逃げ出したかった。だが、二人の戦いは目で追えぬほどで、とても動ける状況ではなかった。

結局、結界に閉じこもるしかなかったのだ。


「あなたは何者ですか?」


セレネは祈るような気持ちで問いかける。せめて神殿関係者であってほしいと願いながら。


「私はルーナ仮面。自由な旅人だよ」


ルーナ仮面?自由な旅人?

――意味がわからない。

セレネは困惑するが、会話ができる以上、頼るしかなかった。


「私、ここの神官と話がしたいのですけど……」


サティエルは周囲を見回す。崩壊した大神殿。生存者の気配はまったくない。


「多分、この近くに神官はいないと思う」


その言葉で、セレネはようやく周囲の惨状に気づいた。

――大神殿が破壊されている? どうして……。


絶望に胸が押し潰されそうになる。


その時――


「ヴォルフ隊長!」


兵士たちの声が響いた。


面倒なことになると悟ったサティエルは、即座に決断する。


「ここから離脱するよ」


そう言って掌をかざすと、プチアルティマータが閃光を放ち、結界を粉砕した。


セレネは、自信を持って張っていた防御がいとも簡単に壊されたことに呆然とする。


「ねぇ、逃げるよ」


返事を待たず、サティエルはセレネを軽々と担ぎ上げ、ろっくんに飛び乗った。

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