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見捨てられた姫様は国を亡ぼす資格があるらしい  作者: サチオウ
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第59話 ルーナ大神殿・事態急変

明日はトランシルにあるルーナ大神殿へ向かうと決めたエナメルの旅人一行。

夕暮れ時、オフィーリアは窓の外を指しながら言った。


「ちょうどあの方角に、トランシルの大神殿があるの」


彼女はテーブルに地図を広げ、大神殿までの道筋を説明していく。


その時、不意に外が騒がしくなった。


何事かと外へ出ると、村の外から数十人の一団が訪れていた。ちらりと見えた中には神官の姿もあり、村人たちは彼らを神殿の集会室へ案内して事情を聞くことにしていた。


「何かよくないことが起きている……」

そう直感したオフィーリアは、村長に同席を願い出る。


「私たちも話を聞かせていただけますか?」


村長は一瞬迷ったが、エナメルの旅人たちがただの冒険者ではなく、貴族である可能性やその実力を思い出し、むしろ同席してもらった方がよいと判断した。


「ぜひ、お願いします」


こうして三人は村長に続き、神殿へと入った。


そこには老人や女性、そして子供の姿もあった。皆、疲労に顔を曇らせている。


村長が前に出て声をかけた。

「いったい、どうなされたのですか?」


代表して神官が口を開いた。

「ルーナ大神殿が、何者かに襲撃を受けました」


「なんと……それは一大事じゃ。攻めてきた相手に心当たりは?」


「いえ、ありません。ただ、魔物を従えていて、戦い慣れた者たちでした」


「……どこかの国や貴族の隠密部隊、ということですかね。それで大神殿の様子は?」


「詳しくは……。ただ、長くはもたないだろうと告げられ、私たちは逃げるよう命じられました」


村長は使いを走らせて領主に連絡を取り、有力者たちに村の警戒を指示する。


「わかりました。もう今日は遅い。皆さんは今夜はこの村で休んでください。今後のことは、明日改めて話し合いましょう」


事態を聞き終えたオフィーリアの顔は険しくなる。


まさか、こんなことになるとは。

これではサティエルを大神殿へ連れていくどころではない。

さらに軍が近くにいるのなら、村から離れた方が安全だろう。

だが、大神殿に攻撃を仕掛けるなど尋常ではない。いったい何が起こっているのか……。


部屋へ戻った後、オフィーリアが言う。

「明日の大神殿行きはやめて早朝、この村を出ましょう」


だがサティエルは返事もせず、窓の外に目を向けていた。

幼い頃から月を眺めるのが好きだった彼女は、夜空に浮かぶ満月を見つめている。


思い返すのは、ムーンゲートにまつわる数々の出来事だった。メーディアとの出会い。邪竜ファーブニルとの戦いのきっかけ。砦を去ることになった原因も――。


サティエルにとって、月とムーンゲートは特別な意味を持つ存在だった。


ムーンゲートとは何か。月との関係は? その向こうにあるものは――

そんな思索にふける中、不意に月とは別の光が目に飛び込んできた。


「あれ?……神殿の方向だ。ムーンゲートが開いている?」


隣にいたシルヴィアが振り返る。

「え? でも今日は満月だけど、スーパームーンじゃないよ?」


「このところ、普通の満月でも開いてるよ」


「本当?」


オフィーリアも窓の外を見て、眉をひそめた。

「確かに大神殿の方角だ。軍に襲われ、なおムーンゲートが開いたとなれば……大神殿は絶望的かもしれない」


サティエルはじっとその光を見つめ、違和感を覚えた。

「……いつものムーンゲートとは少し違う気がする。確かめてくる」


「待って、サティエル。軍勢がいるかもしれない。関わると厄介よ」


「じゃあ、バレないようにする」


彼女はそう言うとマントをまとい、フードを深くかぶる。さらにルーナの仮面を顔に当て、窓から外へ抜け出すと、ろっくんの背に跨がった。


「行ってくる」


夜空へ飛び立つサティエル。


呆然とそれを見送ったオフィーリアに、シルヴィアが声をかける。

「サティエルなら大丈夫でしょ」


「そうだろうけど……」


気にしているのはそっちではないのだ。軍との接触は避けるべきだ。

その軍を擁する国そのものが、世界から消えることになりかねないのだから......。

おかげさまで累計PV1万を超えました。ありがとうございます。


物語も10万字を超え、いよいよ本格的な活動が始まります.

引き続きよろしくお願いします。

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