第57話 コボルド壊滅作戦
コボルド討伐当日。
討伐に同行する村人は4人。いずれも体格の良い20-30代の男性で、皆が長槍を手にしていた。
そのうちの一人が、やや緊張した様子で声をかけてくる。
「今日は、よろしくお願いします」
オフィーリアが代表して答える。
「こちらこそ。基本、討伐はこちらで行います。皆さんは逃げ出したコボルドの始末と、討伐の見届けをお願いします」
「……わかりました」
そして一行は森に入り、コボルドの洞窟近くの風下で煙玉の作成と簡単な打ち合わせを行った。
作戦の内容はこうだ。
まず、煙玉でコボルドを燻り出すのが第一段階。
その後、出てきたコボルドを手分けして迎撃する。
配置は以下の通りとした:
洞窟入り口左側:シルヴィア
右側:サティエル
入り口正面から少し離れた場所:オフィーリア
その後方:村人たち4人
そして、作戦を実行に移す。
まず、シルヴィアが準備した煙玉を洞窟入り口に投げ込む。
直後、オフィーリアがファイヤーボールを放って火をつけた。
「ウィンド」
オフィーリアは風魔法を使い、煙が洞窟内へとしっかりと流れ込むよう調整する。
しばらくすると、洞窟の中からうめき声とともに、コボルドたちが煙に追われるように飛び出してきた。
「嵐牙流 双剣連斬!」
待ち構えていたシルヴィアが二つの剣を交互に振るい、次々と斬り捨てる。
連続攻撃により複数の敵をなぎ倒していった。
一方、サティエルは今回の戦闘である実験をしていた。
気功術と魔法の同時使用の攻撃。
気功鎧を使いながらの魔法攻撃であればこれまでも行ってきた。
しかし、投げ技や当身技の最中に魔法攻撃をするとなると――これは容易なことではない。なぜなら、それぞれが異なる動きと発動の姿勢を要求するからだ。
たとえば、通常のファイヤーボールは腕を前に出し、掌を開いて発動する。
しかし、気功術の攻撃体勢中にそれを行えば、動きがぶつかってしまい、どちらも失敗する危険がある。
余裕があるときなら両立は可能であるが、切羽詰まった時は難しい。
この問題を解決するために、サティエルの中のサティシアは、新たな技術に挑戦していた。
それが――
『ノーモーション魔法』
体を動かさず、意識だけで魔法を発動する技術。
今の段階では、まだ弱い魔法限定だが、掌に発動させる程度は可能となっていた。
今回使ったのは、電撃魔法。
エルネスタが気功術による体術で敵に触れた瞬間、サティシアが掌に電撃魔法を発動。
触れただけで感電する複合技が完成していた。
この異様な戦い方に、村人たちは目を見開いた。
「……あの坊主、人外か?」
サティエルがモーブの髪飾りで変装しているせいで、彼らは少年と認識していた。
それはさておき、美しい動きの謎の武術を使い触れるだけでコボルドを次々と倒す姿は、もはや常人の理解を超えていた。
通常のコボルドがほぼ片付いた頃、洞窟からさらに4体の大型コボルドが現れる。
「……出たわね、エルダーコボルド」
身長2メートルを超える上位種。
このクラスになるとシルヴィアも一撃では倒せず、数度打ち合ってから仕留めていた。
一方のサティエルは――
2体を瞬殺していた。
残る1体が抜け出たところを、オフィーリアが魔法で仕留める。
そして――洞窟から、さらに大きなコボルドが姿を現す。
「キングコボルド……!」
その巨体からは群れの主としての威厳と力がにじみ出ていた。
なぜか、狙いを定めたのはサティエルだった。
唸り声をあげて爪で突進してくる。
だが――
「遅い」
サティエルは身をかわしつつ、軽く腕に触れて電撃魔法を放つ。
ビリッ
キングコボルドは腕を引き、僅かに苦悶の表情を見せる。
だが、さほどのダメージにはならなかった。
さすがにこのクラスとなるとこの程度の弱い魔法では倒せない。
「ノーモーション魔法の感覚はつかめたから、エルネスタ倒しちゃっていいよ」
「了解」
次の瞬間、再び爪を振りかざしてきたキングコボルドの腕を、サティエルがつかむ。
「はッ!」
ひねりながら投げ飛ばし、巨体を地面に叩きつける。
「ぐわっ!」
そのまま、倒れたキングコボルドの頭へ気功掌を叩き込む。一瞬、びくついたもののすぐに動かなくなった。
討伐完了
「これで最後かな?」
「……ああ、そのようだが、中に入って確かめよう」
三人は洞窟に入り、内部を確認する。
残党は見当たらず、これにてコボルドの巣の討伐は完了した。
村人たちは戦闘に加わることはなかったが、討伐の確認という役目は果たす。
「これで、コボルドの討伐は完了です」
「……ありがとうございました」
「巣の外にいた個体が戻ってくる可能性もある。しばらくは警戒してください」
「はい、わかりました」




