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見捨てられた姫様は国を亡ぼす資格があるらしい  作者: サチオウ
自由な旅人

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第56話 コボルド討伐準備

村に戻ると、畑で作業している世話係のニルスを見かけたオフィーリアが声をかける。


「コボルドの巣を発見しました。村長に報告したいのですが」


「わかりました。離れの方でお待ちください」


そう言って、ニルスは走っていった。


しばらくして、離れで休んでいた一行のもとへニルスが再び現れる。


「夕方、神殿の集会所で話し合いの場が設けられることになりました。その際にまたお呼びします」


忙しそうに言うと、ニルスはまたすぐに去っていった。


*  *


夕方、再びニルスに呼ばれて神殿へ向かうと、前回と同じく村長や有力者たちが集まっていた。


「おお、エナメルの旅人の皆さま。よくぞコボルドの巣を見つけてくださいました。場所はどの辺りでございましたか?」


オフィーリアが地図を広げ、コボルドの巣の位置を指し示す。


「そこでしたか……それで、コボルドの数はどのくらいと見ておられますか?」


「正確な数は不明です。ただ、100匹、200匹いたとしても問題ありません。必要であれば大規模な魔法を使って――」


「お待ちください!」


村長が急いで制止する。


「そのような大きな魔法を森で使われては困ります。この土地は領主様から使用を許されているもので、大きく破壊してしまえば罰則が下る可能性があるのです」


「……そうですか」


オフィーリアが一瞬言葉を止め、隣のサティエルに目をやる。


サティエルが淡々と応える。


「大きな魔法がなくても大丈夫だよ。コボルドくらいなら」


「とはいえ、取りこぼしがあれば厄介だな」


シルヴィアが続けると、村長が提案を出す。


「では、村の方からも腕に覚えのある者を何名か同行させましょう」


「わかりました」


「明日、村の者たちに声をかけて選抜を行いますので、討伐は明後日でお願いできますか?」


「了解しました」


こうして、コボルド討伐は明後日に決定した。



離れに戻り、ひと息ついた頃。


シルヴィアがぽつりと口を開いた。


「ねぇ。洞窟のコボルドを倒すときなんだけど、私のとこでは“パープルぺリラ”の葉を使った煙玉でコボルドを燻り出してから討伐していたのだけど、みんなのとこはどうしてた?」


すると、オフィーリアが淡々と答える。


「うちは……巣の中に爆裂魔法を撃ち込んだ後、“メルトアース”で洞窟ごと潰してたわね」


「えぇ!? なにそれ! オーバーキルにもほどがあるでしょ!?

それに今回、森を壊すような魔法は禁止なんだから、そんなの使えないって!」


シルヴィアが抗議すると、今度はサティエルがのんびりと返す。


「……あんまりやったことないけど。やった時は……そのまま洞窟に入って……普通に皆殺し?」


「……なにそれ、全然参考にならないじゃない!」


思わず脱力したように肩を落としたシルヴィアは、勢いよく立ち上がる。


「よーし、じゃあ明日は煙玉の材料を集めるわよ!」


パープルぺリラの煙玉に必要な材料は、以下の三つだけ。



パープルぺリラの葉、煙の実、藁袋



実は、パープルぺリラは食用ハーブとしても使われており、この村でも畑で育てられていた。


事情を話すと、村人から葉を分けてもらうことができた。


藁袋も村人からいくつか譲ってもらい、残るは「煙の実」の採取のみとなった。


煙の実は、3センチほどの卵型をした灰色の木の実で、火をつけると勢いよく煙を発する性質を持っている。


森の中でも特定の樹にしかならないが、サティエルが手際よく見つけて次々に収集していった。


煙玉の作り方はいたってシンプル。

刻んだパープルぺリラの葉と、いくつかの煙の実を藁袋に詰めるだけで完成する。


ただし、パープルぺリラの葉は刻んだ直後が最も強く臭うため、袋詰めは現地――つまりコボルドの巣の前で行うことにした。


ちなみにこのパープルぺリラの臭いは、人間にはそれほど不快ではない。


しかし、嗅覚の鋭いコボルドにとっては強烈な刺激臭らしく、かなりの嫌悪感を示すのだ。


「これで準備は万端ね……あとは、コボルドを燻り出して、全員で叩くだけよ!」


シルヴィアはにんまりと笑って煙玉の材料を確認した。

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