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見捨てられた姫様は国を亡ぼす資格があるらしい  作者: サチオウ
自由な旅人

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第53話 サティエルの二面性

三人は、オフィーリアの案内で神殿の集会場から礼拝堂へと移動した。


この神殿はルーナ教のものであるが、この大陸においては、神殿は宗派に関係なく誰でも礼拝に訪れることができる場所として認識されており、信仰が異なっていても祈りを捧げるのが常識とされている。


そのため、オフィーリアだけでなく、ルーナ教の信者ではないシルヴィアやサティエルも、当然のように礼拝に参加した。


それを見たオフィーリアは、サティエルも最低限の礼儀はわかっているらしいと、少し安堵する。


礼拝を終えると、オフィーリアは神官にお願いし、ルーナ教の教えを初心者向けにまとめた冊子を一冊受け取っていた。



宿に戻ると、さっそくその冊子をサティエルに渡す。


「これから色んな人と関わるようになるからね。常識的なことは覚えておいた方がいいわ」


受け取ったサティエルは、ぱらぱらと目を通すと、ぽつりと呟いた。


「……あんまり、自由じゃないんだね」


「はは、まあ……共同体で生きてるから、全部が自分の思い通りってわけにはいかないのよ」


これに不満を感じたエルネスタがサティシアの意識を抑えて表に出てきた。


「オフィーリア。あなた、こんなもの持ってきて何がしたいのかしら?」


その言葉に、場の空気がわずかに張り詰める。


「民衆にはこういう道徳を教えているけれど貴族や上位の神官たちは、これをちゃんと守っていると思う?


むしろ、こういう『教え』を利用して、自分たちに都合のいい社会を作ってるのよ。あなたなら、それくらい分かってるでしょ?」


少し声を低くし、彼女は続ける。


「私がこのようなものに従えば、きっとルーナ教会に都合よく扱われるだけ。だから私は私の基準で動くわ」


エルネスタのこの発言には、明確な背景があった。


彼女の実家、グランフェルト侯爵家は、長年にわたり宗教勢力とたびたび対立してきた。

表では慈悲や博愛を語りながら、裏では権力のためにどれほどの策略と犠牲があったか。

彼女は、その「裏側」を、幼い頃から見て育ってきたのだ。


そして今や、サティエルは一国を亡ぼす力すら持ちうる究極魔法を備えている。

そんな彼女が、宗教勢力に安易に加担したくないと考えるのも無理はなかった。


その言葉を聞いたオフィーリアは、ハッとする。そして――少し青ざめた。


……サティエルは、ただの世間知らずじゃない。


いつもの無邪気な振る舞いや素直な発言に惑わされていたが、改めて考えてみれば、魔法も武術も超一流。その時点で、ただ者ではないのだ。


今回の発言からも、サティエルが貴族社会で教育を受けて育ったことは明らかだった。


むしろ、"世間知らず"なのではなく、“貴族社会しか知らない”のかもしれない……。


だが、オフィーリアにはそれ以上に、サティエルの言葉に込められた何かが気になった。


先ほどまでの彼女とは、まるで別人のような落ち着きと重みを感じたのだ。


……何か、違和感がある。まるで、彼女の中に"別の顔"があるような……。まさか、破壊神の意志?


確かに、破壊神である自分に別の神の教えを学べと言われたなら怒っても無理はない......。


壮大な勘違いをしそうになっていたオフィーリアであるがその疑念はひとまず胸にしまい、心を決めた。


いずれにしろ……このままにしておくわけにはいかない。予定通り、トランシルのルーナ教大神殿には行こう。


そこなら、もっと深く神官たちと話ができる。そして、サティエルの考え方――いや、彼女の「本質」を、少しでも掴めるかもしれない。

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