第52話 ベッサ村
エナメルの旅人の三人は、無事ベッサ村に到着した。
依頼を出した村長を訪ねると、村長は彼女たちを一目見るなり、すぐに若者を呼び、離れへと案内させた。
「ようこそお越しくださいました。私は皆様の世話係をさせていただく、ニルスと申します。討伐期間中は、この離れを宿代わりにお使いください」
その申し出に、オフィーリアが丁寧に答えた。
「ありがとうございます。依頼の詳細について、お伺いしたいのですが」
「それは明日、神殿の集会室に関係者を集めますので。本日は、ゆっくりお休みください」
「助かります。ありがとうございます」
案内された部屋は、質素ながらも最低限の設備は整っていた。豪華とは言えないが、不自由はなかった。
* *
翌朝。朝食を終えたころ、ニルスが現れた。
「それでは、神殿にご案内します」
彼に連れられ、三人は神殿の集会室へと向かう。
すでに室内には、村長と、村の有力者と思しき者たちが九人、ずらりと揃っていた。
「冒険者をお連れしました」
「うむ、ご苦労」
エナメルの旅人の三人は、整列して村人たちの前に立つ。
どうやら顔合わせも兼ねているらしく、村長が前に出て紹介を始めた。
「今回、冒険者ギルドより、コボルド退治の依頼を受けて来てくれた方々じゃ」
オフィーリアが一歩前に出る。
「この度、コボルド退治の依頼を受けました、Aランクパーティ《エナメルの旅人》、リーダーのオフィーリアです。こちらは、シルヴィアとサティエル。どうぞよろしくお願いいたします」
その名乗りに、誰かが思わず声を上げた。
「Aランクだと!?」
村長が笑って場を和ませる。
「ははは、今回は運良く、Aランクパーティが引き受けてくれた。皆、期待していいぞ」
「それは頼もしい!」
村人たちは一気に明るい表情になった。どうやら歓迎ムードのようだ。
オフィーリアはその流れを受けて、話を切り出す。
「それでは、詳しい状況をお聞きしてもよろしいですか?」
村長がうなずき、説明を始めた。
「最近、家畜の豚を狙ったコボルドの襲撃が頻繁になっての1、2匹なら、わしらでも対処できるんじゃが……この前は、五匹の群れに出くわしてな。さすがにやばいと感じて、冒険者ギルドに依頼したというわけじゃ」
「なるほど。最近、倒したコボルドの数は、どのくらいですか?」
「そうじゃなあ……十匹は倒したかのう」
「そうですか。であれば、近くに大規模な巣がある可能性が高いですね。心当たりは?」
「いや、はっきりとはわからんが……森の奥から来ておると思う」
「豚の管理はどのように?」
「昼間は村で雇った豚飼いが、森へ連れて行って、夕方には畑の休閑地の囲いに戻しておる。その豚飼いもコボルドに遭遇する頻度があがってるので何とかしてくれと訴えてきておる」
「その豚飼いに同行することは可能ですか?」
「かまわんよ。今日はもう森に出ておるが、戻り次第紹介しよう」
そして村長は念を押すように続けた。
「それと、もしコボルドの巣を見つけたとしても、すぐには手を出さず、一度村に報告してくれ。村も警戒態勢を取らねばならんからな」
「承知しました」
こうして、会合は和やかな雰囲気のまま終了した。




