第48話 後始末1
少しして、奥の通路から雷光の翼のメンバーが入ってきた。
目の前に転がるアースドラゴンの死体と、無傷で立つエナメルの旅人の姿に一瞬目を見張るが、すぐに平静を装って声をかける。
「皆さま、ご無事でしたか?」
オフィーリアは冷たく返す。
「――落とし穴に落としておいて、よくそんな口がきけるわね」
そのとき、リーダーのソルゲイルが姿を現す。
鋭い声で反論した。
「落とし穴はアースドラゴンの結界によるものだ。我々の仕業ではない!」
オフィーリアは冷笑を浮かべる。
「ふふ……あなたたち、これまでに何度、同行した冒険者を“偶然”落としてきたのかしら? こうやってアースドラゴンを誘き寄せて、後ろでいったい何をやってたの?」
「ぐっ……貴様、何が目的だ!」
「言ったでしょう? “アースドラゴンと戦わせたい子がいる”って」
「なら、問題ないだろう!」
「問題があるのは、わざわざ落とし穴に落としたこと。正面から案内すればよかったんじゃなくて? これまでの件も含めてギルドに報告させてもらうわ」
「貴様ッ!!」
怒りに任せたソルゲイルが、最も近くにいたサティエルに飛びかかる。
拘束して人質にとろうと――
だが次の瞬間、彼の体が宙を舞った。
「ぐはっ!」
サティエルが無造作に投げ飛ばし、地面に叩きつけたのだ。
呻きながら起き上がったソルゲイルは、腰の斧を抜き、怒りに任せてサティエルに斬りかかる。
「おおおおおっ!!」
サティエルは、斧の軌道に手をかざし、小規模な究極魔法を放った。
ボン……ッ!
斧は光に包まれ、掻き消えた。
「……ッ!?」
何が起こったかわからず動揺するソルゲイルに向けて、サティエルは迷いなく掌を突き出す。
「気功掌」――!!
ドンッ!
ソルゲイルは床に崩れ落ち、動かなくなった。
「……」
沈黙のなか、オフィーリアが残った雷光の翼のメンバーを見回し、静かに言い放つ。
「これを見てもまだ戦う気があるなら、相手をするけど? 降参するなら、手荒なことはしないわ」
さすがに、アースドラゴンを倒し、リーダーを瞬時に無力化した相手に、戦おうという者はいなかった。
「……わかった。降参する」
オフィーリアは近づき、彼らの頭に手を当てて呪文を唱える。
「パラリシス・カース」
「軽い麻痺の呪いよ。今はしびれ程度だけど、私たちに攻撃しようとすればその場で動けなくなる。おとなしくしててね」
そして、冷たく尋ねる。
「さて――ここで、いったい何をしていたのかしら?」
「……あそこに、ガラクタ置き場があるだろ。そこに何かいいものがないか探してただけだ」
その言葉に、オフィーリアはすぐに察した。
「なるほど、アースドラゴンが獲物を襲いに出た隙に、そこを漁ってたのね。まさか《アースブレーカー》でも狙ってた?」
「…………」
「ずいぶんセコいやり方ねぇ。でもまあ、見逃してあげる」
オフィーリアは振り返って言った。
「じゃあ私は一度ギルドに戻って、アースドラゴンの回収の応援を頼んでくるわ。――シルヴィア、サティエル、あなたたちはその人たちの監視をお願い。ついでに《アースブレーカー》を探してもいいわね」
そう言うと、オフィーリアはさっと身を翻し、迷いなく去っていった。
「……オフィーリアって、なんかすごいね」
シルヴィアは呆れと尊敬の入り混じった声でつぶやいた。
サティエルは微笑む。
「うん、なんか頼りになるよね」




