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見捨てられた姫様は国を亡ぼす資格があるらしい  作者: サチオウ
自由な旅人

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第45話 雷光の翼

宿に戻ると、オフィーリアは単身で情報収集に出た。


ギルド職員・冒険者・情報屋――諜報員として磨いた手腕を総動員し、雷光の翼に同行したパーティの行方を追う。


やがて、かつて彼らと組んで生き残った冒険者の一人に接触する。


「雷光の翼とダンジョンを潜ったときのことを聞かせてくれ」


「は? 何でそんな……」


オフィーリアが無言で金貨を示す。


男は即座に頷いた。


「――ああ、わかった。何が知りたい?」


「まず、同行した経緯は?」


「向こうから声をかけてきた。『人手がほしい』ってさ。Aランクの働きを間近で見られるし、魔物の討伐報酬を三割くれるっていうから乗ったんだ」


「実際どうだった?」


「最初は楽勝だった。魔物は全部あいつらが片付けてくれるしよ。

だが、突然仲間が落とし穴に落ちた。

しかも底にアースドラゴンがいて、落ちた三人は瞬殺だ……」



「そのとき、雷光の翼は?」


「仲間のことしか見てなかったんで、よく覚えてないんだが、しばらくしてから『助けられなくてすまん』と謝ってくれて、すぐ撤退した。でも報酬の分け前はきっちり渡してきたぜ」


「ほかに気づいたことは?」


「妙だと思ったのは、あいつら自身は落とし穴の真上を歩いてたはずなのに、誰も落ちなかったことだな」


別のパーティにも同様の話を聞く。

やはり、同行者だけが落とし穴に落ち、雷光の翼は無傷――不自然すぎる。


「落とし穴の下にアースドラゴン。しかも雷光の翼はその位置を把握している……」


落とし穴に誘い込み、アースドラゴンに餌をやっている?

それが何のためなのかは、まだ読めない。


だがアースドラゴンの居場所を知っていることは分かった。


あとはサティエルをどう説得し、戦ってもらうか――正直に頼むか、それとも雷光の翼の“策”に乗せて落とし穴に導くか……。


オフィーリアは夜の路地でひとり思案に沈むのだった。


*   *


雷光の翼のリーダー、ソルゲイルには長年追い続けてきた夢がある。


それは、ドワーフ族の至宝とされる伝説のアースブレーカーを手に入れることだった。


それはドワーフの誇りの象徴であり、ソルゲイルにとって究極のあこがれだった。


彼はガリダダンジョンに伝わる「アースブレーカーは討ち取られたアースドラゴンの墓標とされた」という伝承を信じ、十年もの調査の末、封印の術式が施された古壁を発見した。


封印を破ると、壁の向こうには手つかずのダンジョンが広がっていた――そしてそこには、強大なアースドラゴンが巣食っていた。


やがて、多くの中ー上級冒険者が新ダンジョンの噂を聞きつけ、次々と探索に挑み、何人かは命を落とすも特別な発見は得られていなかった。


だが、雷光の翼だけは違った。ソルゲイルの執念によって、ついにアースドラゴンの「寝床」を突き止めたのだ。


その場所は、ただの行き止まりに見えるが、その真下がアースドラゴンの「寝床」になっている空間があった。しかもその構造は、伝承に語られる「アースブレーカーの眠る場所」と一致していた。


入り口は二つ。一つは最奥から続く下り坂で、アースドラゴンが日常的に出入りに使う通路。


もう一つは、その十五メートル手前にある「落とし穴」で、アースドラゴンが獲物を狩るために使っているものだった。


この二つの入り口は、普段は結界によって完全にカモフラージュされており、見た目も感触も他の床と同じ。結界はアースドラゴンが不在のときも張られていて、無理に突破することはできない。


つまり、アースブレーカーを探すには――

アースドラゴンを倒すか、あるいは結界が一時的に解除される瞬間を狙うしかない。


だが、アースドラゴンを倒すのは並大抵のことではない。アースブレーカーがあれば勝機も見えるが、それはそのアースドラゴンの寝床にある可能性が高いのだ。


それゆえ、ソルゲイルは「討伐」という選択肢を断念した。


そんな中、彼はひとつの法則に気づいた。


アースドラゴンは落とし穴の上に獲物が乗ると、一時的に結界を解除して落とす。その時、もう一つの入り口の結界も同時に消えるのだ。


そして獲物に駆け寄り、捕食を終えてから結界を張り直す。


この結界を張りなおすまでの“わずかな時間”――ここにこそ、寝床に侵入するチャンスがあった。


実際に何度か結界解除の瞬間を突いて潜入に成功した。その結果、地下の一角に獲物の遺骸や壊れた武具が山積みになった“ガラクタ置き場”を発見した。


中には、時代物と思しきドワーフ製武具もあり、アースブレーカーが混ざっていてもおかしくはなかった。


だが、この「結界が解ける瞬間」は滅多に訪れない。おとりとなる“獲物”が必要だった。


最初は魔物を無理やり落とし穴の上連れてきたりもしたのだが、落とし穴が作動することはなかった。


アースドラゴンは「不自然な状況」には警戒して結界を解かないようだった。


そして、ソルゲイルはある“答え”に辿り着いた。


――何も知らない低ランクの冒険者を連れて行き、偶然を装って落とし穴に落とす。


彼は仲間と協力し、巧妙な行動で低ランク冒険者たちを落とし穴の上に誘導することにした。


結界が解けた瞬間に彼らが落下し、それを見計らってソルゲイルたちは奥の入り口からガラクタ置き場へと侵入する。


しかし、結界を張りなおすまでの限られた時間内でアースブレーカーを見つけるには至っていない。


この計画はすでに三度成功していた。


だが、犠牲者が相次いで出たことにより、ギルドに雷光の翼による低ランク冒険者の同行を禁止されてしまった。


ソルゲイルは考えた。――ならば、次は“不慣れな高ランク冒険者”を利用するしかない。


高ランク冒険者なら、冒険者ギルドも文句を言わないだろう。それにアースドラゴンとの戦闘時間が長くなれば、その間にガラクタ置き場をじっくり探れるだろう。


問題は、彼らが何かに気づくリスクだ。だが、背に腹は代えられない。



そうして、新しくギルドにやってきたAランクパーティ「エナメルの旅人」に目をつける。


構成は、Aランクエルフ、Bランク人間、そしてEランクの子供。


Eランクの子供は、どうせただの荷物持ちだろう――


「案内がてら一緒に行きませんか?」


そんな誘い文句を携え、ソルゲイルは新たな“おとり”を求め動き出した。

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