第44話 キツネ狩り2
翌日、三人は冒険者ギルドを訪れ、捕獲したキツネの鑑定を依頼する。
代表してシルヴィアが受付に声をかけた。
「この二匹、鑑定お願いします」
受付の壮年の職員がキツネを見て、感心したように唸る。
「ほう……傷ひとつないとは、見事な腕じゃのう」
「でしょ?」
「さて……こっちがブラウンフォックス。もう一匹の艶がある方は、ラスターフォックスじゃな」
「えっ、どっちもグレイスフォックスじゃないの?」
職員は苦笑した。
「はっはっは。グレイスフォックスなんてそうそう見られるもんじゃない。依頼がずっと残ってたのは、そのせいじゃよ。難しいんじゃ」
「なるほど……。ダンジョン外の依頼で唯一残ってた理由って、そういうことか……」
「グレイスフォックスの見分け方、教えてもらえます?」
「おうとも。ラスターフォックスよりは艶が控えめで、毛並みはさらに細くて柔らかい。触れば一発でわかるぞ」
「ありがとうございます」
「ま、めげずに頑張れ!」
その日の夕方、三人は再び狩りに出た。
何匹かキツネを見かけたが、どれも普通のキツネだったため、見逃して通り過ぎた。
そろそろ諦めようかと思ったそのとき──。
「いた」
サティエルが声をあげた。そこには、ひときわきれいなキツネがいた。
しかし、ろっくんと目が合ったキツネは、すぐに巣穴に逃げ込んでしまった。
実は、ろっくんは小鳥の姿だと大型の鳥に狙われやすいため、いつも少し大きめの姿で飛んでいる。キツネにとってはそれが脅威に見えたのだろう。
「あー、巣穴に入っちゃったよ」
ぼやくサティエルに、オフィーリアがすぐさま返す。
「かえって好都合よ」
「えっ?」
「巣を後ろから壊せば、出口から出てくるのよ」
「そうなんだ……」
三人はキツネの巣穴の前まで足を運んだ。
サティエルが巣穴の前に立ち、構える。
その様子を確認してから、オフィーリアが魔法を詠唱した。
「メルトアース」
巣穴のずっと奥の地面が、じわじわと液状に変わっていく。
その異変を察知したのか、キツネが巣穴から飛び出してきた。
そこをサティエルが、迷いなく気功掌で仕留める。
「うわ、本当だ。毛がやわらかくてモフモフしてる。これ、絶対グレイスフォックスだよ!」
あとの二人も、キツネの毛に触れながら満足げに頷いていた。
* *
翌朝。冒険者ギルドのカウンターに立つと、
シルヴィアは自信満々の笑みとともにキツネを取り出した。
「これがグレイスフォックスでしょ?」
鑑定係のおじさんは目を細め、毛並みを隅々まで確認する。
やがて、感嘆の声を漏らした。
「見事だ。まちがいなくグレイスフォックス。それも傷一つない最上級品じゃ。鑑定書と預かり証を渡そう」
おじさんは丁寧に書類を手渡してくれた。
三人はその足で受付へ。
「グレイスフォックス納品の依頼、完了です」
「まあ、ずいぶん早いですね。かなり難易度が高いはずでしたが……確認いたしますね」
受付嬢が書類を確かめていると、後ろから怒鳴り声が飛び込んでくる。
「なんでこいつらとダンジョンに行っちゃいけねぇんだ!」
「そちらはDランク。アースドラゴン・モーグミーズがいる階層への同行はギルドとして許可できません」
声の主は、先日見かけたAランクパーティ――『雷光の翼』。
どうやら、ダンジョン探索に連れて行く仲間集めをギルドに止められているらしい。
「納品、確認できました。ご協力ありがとうございます」
受付嬢の手続きが終わったのを機に、シルヴィアが小声で質問する。
「後ろの騒ぎ、何かあったのですか?」
「ええ……実は雷光の翼、二度ほど低ランクの冒険者を連れてアースドラゴンと交戦したのですが、同行者に犠牲が出まして。
このギルドでは緊急措置としてCランク以下の同行を禁止にしたんです」
「どうしてまた、低ランクをわざわざ?」
「聞くところでは『人手が欲しい』と声をかけたら、たまたま低ランクばかり集まったそうで……」
「へえ……」
――何か裏がある。
オフィーリアの目が怪しげに輝く。
雷光の翼がわざわざ低ランクパーティを同行させ、犠牲者を出している。
そこには何か目的があるはずだ。
アースドラゴンが関係しているのは確実。
もし、アースドラゴンと遭遇できるならサティエルの実力を測る絶好の機会であることは間違いない。
危険ではあるが、サティエルに戦ってもらう方向で考えよう。




