第39話 自己紹介
宿の一室、三人はテーブルを囲んでいた。
最初に口を開いたのはシルヴィアだった。
「私はシルヴィア・カールソン。十八歳。ここからずっと西のノニア地方の出身で、嵐牙流剣術を使うの」
オフィーリアが確認する。
「ということは、その流派の本拠地あたりか?」
「まあそうね。一応、騎士の家系よ」
その返事のあとシルヴィアがサティエルの顔を見た。
「私はサティエル。マルムフォーシュ王国出身、多分十二歳。柔気流気功術が使えるよ」
「ちょっと待った! さっき魔法使ってたよね? なんで気功術使いになってるの?」
「えーと……魔法も使えるよ。ただ、“○○流”って名前がないから、つい言い忘れちゃった」
「いやいや、そういう問題じゃないってば! オフィーリア、なんか言ってよ」
「……やはり、両方使えるの?」
「うん」
「えっ、それ本当? そんなことある?」
シルヴィアは信じられないというようにオフィーリアを見る。
「私も最初は疑ったが、仲間から“両方使ってた”という話を聞いた」
「なにそれ……?」
「なにそれって言われても使えるものは使えるんだよ」
「……」
そして、オフィーリアの番になる。
「私はオフィーリア。エルフィリア王国出身。魔法使い。年齢は秘密よ」
「オフィーリアって、サティエルの監視役とか言ってたけど、どういうこと?」
「上からの命令で監視任務を遂行している。それ以上は機密」
「じゃあ、サティエルって何者なの?」
「私は……自由な旅人?」
「そうじゃなくて、監視されるような心当たりはある?」
「うーん……ああ、あれかな?」
そう言って、サティエルは髪飾りを外す。
すると、髪が淡い金糸のようなホワイトブロンドに変わり、ぼんやりしていた顔立ちが一気に整い、美少女がそこに現れた。
二人とも、息をのむ。
「なんかね、この姿でいると色々と問題になるみたい」
「監視の理由って、これ?」
シルヴィアがオフィーリアを見る。
オフィーリアは首を振った。
「……今、初めて知った」
「違うの?」
サティエルの問いに、オフィーリアは小さく頷く。
改めてサティエルを見つめ、シルヴィアは言う。
「確かに、この姿で町にいたら、人さらいに狙われそうだけど......」
サティエルは、オフィーリアの反応をうかがう。
「……無用なトラブルを避けたいなら、その髪飾りはつけていた方がいいかな。でも、それって簡単に手に入る魔導具じゃないでしょ? やっぱり、かなりの上級貴族の出?」
「うーん……そういうの、覚えてないの。森でおじいさんと暮らしてて、その後はおばあさんと。もし私が誰なのかわかったら、教えてね」
「じゃあ、マルムフォーシュ王国に戻る?」
「……今はあの国には戻りたくない」
「そう……」
そのやり取りを見ていたシルヴィアが口を開く。
「じゃあ、私の行きたい場所に付き合ってくれない?」
「どこに?」
「はっきり決まってるわけじゃないけど、私の仇がこのモルキア王国のどこかにいる気がするの。だから、しばらくこの国の中を巡りたい」
「仇って、両手に赤い鱗の刺青をした大男だったっけ?」
「そう」
「わかった。オフィーリアは?」
「私は、サティエルの行くところに行く」
「じゃあ、決まりだね」
シルヴィアが提案する。
「移動のタイミングだけど、冒険者ギルドで依頼を受けて、ある程度お金が貯まったら次の町に移動って形にしない?」
「うん、それでいいよ」
「じゃあ、明日この町の冒険者ギルドで依頼を受けよう」




