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見捨てられた姫様は国を亡ぼす資格があるらしい  作者: サチオウ
砦のお姫様

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第23話 従魔

ロック鳥が部屋に入ったのを見た人物が、部屋の外から声をかけてきた。

続けてドアがノックされ、勢いよく開けられる。


入ってきたのはヨエル。サティエルをこの砦に連れてきてから、何かと世話を焼いてくれる人物だ。


「姫、大丈夫か!?」


そのすぐ後ろから、ヘレーネの孫のクスターも飛び込んできた。


サティエルは慌てる二人に向かって、落ち着いた声で答えた。


「うん、大丈夫。この鳥は、私が飼ってるの」


クスターは目を丸くして驚いた。


「こんなに大きくなってたのか……」


「えっ? クスター、お前も知ってたのか? これ、いつから飼ってたんだ?」


「一週間くらい前から」


「……いや、それはマズいだろ、この鳥を飼うのは……」


「いいじゃん、鳥ぐらい」


クスターの言葉に勇気をもらい、サティエルは少し悲しげな顔をして、上目遣いにヨエルを見つめた。


「……だめ、ですか?」


「うっ……。副団長を呼んでくる」


その視線に負けたヨエルは、逃げるように部屋を出て行った。


しばらくして、パトリシア副団長が部屋に入ってくると、鳥を一目見て言った。


「……それはロック鳥じゃないのか?」


「はい」


その言葉に、クスターの顔が青ざめる。


パトリシア副団長は厳しい口調で問いただした。


「そんな危険なもの、どこから手に入れた?」


「山で出会ったエルフから、卵をもらいました」


「そんな貴重なものを……。だが、黙って育てるのは問題だな」


「ごめんなさい」


「……クスター。お前も知ってたんなら、報告すべきだった」


クスターはうつむき、言葉を詰まらせる。


サティエルは、自分のせいでクスターが怒られていることに胸を痛めた。


「クスターは、これがロック鳥だって知らなかったんです。悪いのは私です」


その言葉にパトリシア副団長は一瞬言葉を詰まらせ、少し話題を変えた。


「しかし……もったいないな。ロック鳥は、生まれてすぐなら“従魔”にできるはずだったんだが……もう遅いか」


従魔――そういえば、メーディアからもらった魔法書に契約の魔法が載っていた気がする。


でも、もう手遅れ……?


サティエルの中で落ち込むサティシアに、エルネスタが声をかける。


「確か、契約する時点で魔物より魔力が多ければ問題ないはずよ。あなた、魔力は多いんだから、試してみるといいわ」


希望がわずかに灯る。


「パトリシア副団長、この鳥に従魔の契約魔法をかけてもいいですか?」


「できるの?」


「……たぶん」


「わかった。もし従魔にできるなら、それが一番だ。できなかった場合は、また相談しよう」


サティエルは魔法書を取り出し、ページをめくりながら言った。


「少し時間がかかるのと、集中したいので……一人にしてもらえますか?」


「了解した」


パトリシア副団長はうなずくと、他の者たちと一緒に部屋を出ていった。


クスターが出ていくとき、サティエルはそっと声をかけた。


「ごめんね。巻き込んじゃって」


クスターは振り返り、にかっと笑った。


「これくらい、いいって!」



部屋に一人になったサティエルは、再び魔法書を開いた。


細かい場合分けがたくさん書かれている。


えーっと……従魔にする魔物の種類は……鳥系。


「鳥系は頭がよく、意思疎通が容易。視覚共有や物の運搬に有効」


なるほど……。


「インプリンティング状態の鳥系は、最も契約成功率が高い」


インプリンティング……つまり、生まれて最初に見た存在への刷り込み。

私のこと、ちゃんと覚えてるよね?


続いて呪文の記述を確認する。


「我が名は○○。汝が見たる最初の光。汝の名は○○。この絆、天に誓う。

我が眼となり、遥かなる地を見渡せ。我が翼となり、大空を自由に舞え。

魂の響き、今、一つに」


呪文を唱えながら、魔力で相手を包み込む。

ここで相手の魔力に負けると、契約は失敗する。


名乗りは“サティエル”じゃなくて、“サティシア”のほうがいいかな。魂の契約だから。


ロック鳥の名前も考える。

“ぴーちゃん”はさすがに安直すぎるか……よし、“ろっくん”にしよう。


サティエル――いや、サティシアは「ろっくん」と向き合い、そっと両手を添える。

魔力を集中させ、静かに呪文を唱えた。


「我が名はサティシア。汝が見たる最初の光。

汝の名はろっくん。この絆、天に誓う。

我が眼となり、遥かなる地を見渡せ。

我が翼となり、大空を自由に舞え。

魂の響き、今、一つに」


光がサティシアの両手から溢れ、ろっくんの全身を包み込む。

だが、ろっくんの魔力も成長していて、強い反発を放ってくる。


負けない……!


サティシアは全神経を集中させ、力の押し合いをじりじりと制し、ついに――


契約は成立した。


「……やった」


サティシアの肩がふっと落ちる。


契約が結ばれた瞬間、彼女の頭に一つの“理解”が流れ込んできた。


――ろっくんは、大きさを自由に変えられる。

実物大から小鳥サイズまで、自在に。


……便利すぎる……!


喜びを噛みしめながら、ろっくんを小鳥サイズに縮め、パトリシア副団長の元へ向かった。


「私の従魔になった“ろっくん”です!」


「ピー!」


小さな鳴き声とともに、ろっくんは胸を張って挨拶する。


「姫……あなた、すごいわね。本当に良かった……」


パトリシア副団長は深く息をついた。

あのサイズのロック鳥との契約は、ほぼ不可能だと見ていた。


もし失敗していたら――処分するしかなかった。

その事実を、彼女は告げなかったが、胸の底から安堵していた。


その後、砦の他の団員たちにもろっくんを紹介することになった。


敵と間違われて攻撃されるのを防ぐためだ。


「この子が、私の従魔“ろっくん”です。ロック鳥なんです、こんなふうに――」


サティエルが魔力を込めると、ろっくんが大きくなった。


「うおっ、でか……ロック鳥の割には、まだ小さいな」


「まだ子どもなんで!」


そんなやり取りもありながら、無事に皆に紹介を終えた。


ろっくんは普段、自分で山に行って食事をとるようになった。

だが夜になると、決まって部屋に戻ってくる。


遠くにいても、意識を向ければちゃんと伝わる――それが従魔の力。

「戻ってきて」と思えば、ちゃんと帰ってきてくれる。


視覚共有の訓練も始めた。

短時間だけなら、彼の目で見た景色がうっすらと映るようになってきた。


これから、もっと練習すれば――。


ろっくんとの新たな日々が、静かに、そして確かに始まっていた。

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