表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
見捨てられた姫様は国を亡ぼす資格があるらしい  作者: サチオウ
砦のお姫様

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/56

第20話 シノロ第三砦と黒鉄傭兵団

サティエルは、アルティマータで開けた穴の終点にたどり着いた。


外に出ると、そこは入り口とよく似た、寒々しい山の中腹だった。ほとんど植物も見当たらない。眼下には緑深い山の裾野が広がり、そのさらに向こう、荒野の中に砦のような建物がぽつんと立っていた。そこからは一本道が延びている。


「……とりあえず、あの砦に向かおう。砦から道沿いに進めば、町にたどり着けるはず」


そう独りごちて山を下り、森の端に差しかかったところで、声が飛んできた。


「おい、坊主! 危ないぞ、その森には近づくな!」


声の方を振り向くと、しっかりした革鎧をまとった男たちが三人立っていた。


せっかくなので話を聞いてみることにする。


「すみません。町に行きたいのですが、このあたりで一番近い町はどこでしょうか?」


「ん? 迷子か?」


「いえ、旅の者です」


「旅の者が、なんでこんな山の中に……」


「山の向こうから来ました」


「んな馬鹿な……まあ、訳ありってとこか。とにかく今日はもう遅い。町までは無理だな。砦の隅っこでよけりゃ、泊めてやるよ」


「ありがとうございます」



案内してくれたのは、黒鉄傭兵団のヨエルという男だった。


ここはマテトキア王国、リストライネン辺境伯領にある「シノロ第三砦」。名目上は辺境伯配下の騎士隊の管轄だが、実際にこの砦を守っているのは、彼らが雇った黒鉄傭兵団だった。


砦に入ると、ヨエルが大柄なスキンヘッドの男に報告を入れた。


「団長、森で保護した子供を連れてきました」


目の前の大男が団長のベルンハルト。そして隣に控えている女性が副団長のパトリシアだと、他の団員が教えてくれた。


ベルンハルトは一目見ると面倒そうに手を振る。


「分かった。そいつはヘレーネに任せろ」



案内された小部屋は、古びたテーブルと椅子が置かれた簡素な空間だった。窓は一つあったがあまり大きくはなく薄暗かった。長く使われていなかったのか、埃っぽく、隅には蜘蛛の巣も見える。


やがて、ヘレーネという中年女性が水の入った木のカップを持って入ってきた。


「はいよ、水だけどね。で、お前さん、どこから来たんだい?」


さて、どう答えよう。先ほど「山の向こう」と言っても信じてもらえなかった。なるべく嘘にならない範囲で答えよう。


「森の奥から来ました。おばあさんと一緒に住んでいたのですが、亡くなってしまって……それで、森を出ることにしたんです」


「ほう、森の奥ね……。まあ、住んでる人が全くいないわけじゃないし、事情があるってことか。……で、行くあてはあるの?」


「いえ、とりあえず町に行ってみようかと」


ヘレーネはじっとサティエルの顔を見つめた。


「掃除、洗濯、料理……できる?」


「はい、一通りは」


「じゃあ、ここで住み込みで働いてみない? 私は孫と二人で働いているけど、手が足りなくてね。団長にはずっと増員を頼んでるんだけど、なかなか来てくれないんだよ」


サティエルは少し考えた。確かに今は、他に行くあてもない。


「……わかりました。お願いします」


「決まりだね。あとで私から団長に話しておくよ。……それにしても、そのマント、ずいぶん汚れてるじゃないか。部屋の中では脱いだらどうだい?」


サティエルは自分を見下ろす。確かに、泥と埃でひどい有様だった。


マントを脱いだ瞬間、ヘレーネの目が見開かれる。


「――あんた、女の子だったのかい!」


「はい」


「それを早く言いなよ……。変にちょっかい出されないようにしておかないとね。ちょっと副団長を呼んでくる!」



そう言ってヘレーネが出ていくと、すぐにパトリシア副団長を連れて戻ってきた。


「この子なんだけど、住み込みで働いてもらいたくてね。ただ、若い女の子だったからちょっと心配で……」


「男装してたのね。確かに一人で旅するならそのほうが安全だものね」


パトリシアはふっと笑い、肩をすくめた。


「わかったわ。変な気を起こしたら、私が殺すって脅しておくことにする」


冗談めかした言い方だったが、目の奥には本気がのぞいていた。


そのままサティエルのそばに歩み寄る。


「ここでは、女の子として過ごしていいわよ。荒っぽい人達ばかりだけど悪人はいないから」


彼女はサティエルの髪に目を留める。


「……へえ、髪飾りもつけてたのね。ずいぶん下の方に。見えないようにしてたの?」


「はい、フードをとっても見えない位置に……」


「そう、じゃあこれからは、もっと上につけても大丈夫よ」


そう言って、パトリシアが髪飾りに手を伸ばし、そっと外した瞬間――


サティエルの髪が、淡い金糸のようなホワイトブロンドに変わり、ぼんやりしていた顔立ちがくっきりと整い、そこにいたのは、息をのむような美少女だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ