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見捨てられた姫様は国を亡ぼす資格があるらしい  作者: サチオウ
旅立ち

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第19話 破壊神

マルムフォーシュ王国のキーファー大臣は、騎士団や魔法士団とは別に秘密諜報部のウェントゥスに、大魔導士メーディアの弟子に関する調査を命じていた。


任を受けたウェントゥスは、早速カンパーロの町へ向かう。


大臣から騎士団や魔法士団からの調査結果はすでに聞いていたので騎士団たちとは別に、自ら独自の調査を進めるつもりでいた。


──メーディアの弟子はモーブ色(薄い灰紫)の髪をした少年という話だが......。


モーブの髪飾りをつけている可能性はあるが、「姫」である可能性は低いだろう。


なぜなら、特に魔力の強かったサティシア姫は重度の〈魔力石化症〉を患っており、まともに動くことすら困難なはず。気功術を身につけるなど到底不可能だ。


それに、もし気功術を習得しているのなら、魔法は使えない。メーディアの弟子にはなっていないはずだ。少なくとも、一定以上の魔法を使えなければ「弟子」とは呼ばないだろう。


──では、なぜ姿を隠す必要があるのか?

それが、最初の疑問だった。


そしてもう一つ。

それは――邪竜ファーブニルの件である。


かつて『暁の牙』によって封印された伝説の邪竜。

全盛期の彼らをもってしても、「封印」が限界だった存在。

そのファーブニルを、今になってメーディアと弟子のたった二人で討伐したというのか?


確かに、メーディアは歴とした大魔法使いだ。だが、単独でファーブニルと戦えるとは到底思えない。


やはり、カギを握るのはその弟子か──?


……まあいい。まずはファーブニル側から、この件を探ってみよう。


これまでの報告によるとファーブニルの封印にはまだ効力が残っていたはずだ。

それをわざわざ解いて討伐したとは考えにくい。


いや、王国に黙って封印を解除するなど、常識的にはあり得ない。


まずは、封印の地を調べてみよう。


ウェントゥスはファーブニルが封印されていた場所へ向かった。

そこで目にしたのは、地面が深く抉れ、周囲の木々が根こそぎなぎ倒されている光景。

まるで何かが爆ぜ、暴れ狂った痕跡だった。


この様子から見るに、ファーブニルが自ら封印を破ったと考えるのが自然だ。


──確か、小屋からそれほど離れていない場所に、戦闘の跡があったという報告があったはず。


今度は、その現場を確認しに向かった。


そこには、焦げた大地と無残に倒れた木々が広がっていた。

まさしく、ファーブニルが暴れたとされる跡。


それにしても、たった二人でこれを退けたというのか?


……だが、実際にファーブニルが敗れているのだ。


その瞬間、ウェントゥスの脳裏にひらめきが走る。


──もしや、メーディアの弟子は〈人間ではない〉のではないか?


そう考えれば、メーディアが弟子の存在を隠して育てていたことにも、合点がいく。


そして、ウェントゥスはそれを裏付けるための新たな情報を手に入れる。


──それは、ある冒険者のからの情報が始まりだった。

「森の奥で山が崩れ、大規模な森林火災が発生していた」というのだ。


現地へ赴いたウェントゥスは、そこで信じがたい光景を目にする。

想定以上の広範囲で山が崩れ、木々はなぎ倒され、大地は焼け焦げていた。


明らかに何者かが暴力的な力で破壊したとわかる跡が広がっていた。


……これは。

もとは何かの集落だったのか?

辺りには、砕けた建材の破片や焦げた残骸が無数に散乱していた。


そんな中、ひときわ大きな影が目に入った。


一体のオーガが、黒焦げの木々の中にうずくまっていた。

その顔は、生気を失ったように虚ろで、まるで死んだような覇気のなさだった。


ウェントゥスは慎重に近づき、声をかける。


「……おい。この有り様は、何があった?」


「……テンバツダ……」


「天罰、だと?」


「……ヤクソク ヤブッタ ト イワレタ……」


「どんな“天罰”を受けた?」


「……クチカラ スベテヲ ハカイスル ホノオ ヲ ハイタ……」


「そいつは何者だ?」


「……ニンゲンノ コドモノ スガタ シタ……カミサマ ダ……」


人間の姿をしている神だと!?


「なぜ、それを“神”だとわかる?」


「……テンバツ ト イッタ……」


「――神、というよりまるで破壊神だな」


ウェントゥスが低く呟くと、オーガが突然、声を張り上げた。


「ソウダ! アレハ ハカイシン ダ!」


信じがたい話だった。だが、この惨状と、目の前のオーガが語る証言から察するに――“人の姿をした、邪竜すら凌ぐ何か”が、たしかにここに現れていた。


恐らく、それがメーディアの弟子。

あの婆……いや、メーディアは一体何に魔法を教えたというのか......。


そんな化け物が、この森のどこかに潜んでいるのか?

それともすでに、別の地へと去ったのか?


どちらにせよ、これ以上の捜索には新たな手がかりが必要だった。


一度、王城に戻り、報告するべきだろう。


城に戻ったウェントゥスは、キーファー大臣へ報告を行った。


──メーディアの弟子と思しき存在は、子供の姿をした『破壊神(仮)』であること。

──もし接触時に対応を誤れば、邪竜ファーブニルを上回る被害が出る可能性が高いこと。


ウェントゥスの言葉に、大臣の表情は険しさを増していった。


サティシア姫ではなくジューベーとメーディアが人外の者を育てていた?

訳が分からないが、今は敵対しているわけではない。しばらく、慎重に警戒を続けることにしよう。


*  *


一方エルフィリア王国では――


マルムフォーシュ王国の動向を探るため、派遣された一人のエルフが、密かに国境を越えていた。


エルフィリアの民しか知らぬ古の通路を通り、彼はフィニス山脈のマルムフォーシュ側の稜線へと出ていた。


そこは標高が高く、木々は疎らで、遠くの地まで一望できる場所だった。


ふと、視界の端に異様なものが映る。


「あれは……?」


広大な範囲で、森が黒く焼け焦げている。

前回この地を訪れたときには、そんな痕跡はなかったはずだ。


地形と位置を記憶し、慎重に山を下る。

やがて問題の場所に近づいたとき――


人間とオーガが、荒れ地の中で言葉を交わしているのを見つけた。


エルフは素早く木の上に身を隠し、気配を殺して様子をうかがう。


人間の方は、かなりの手練れと見えた。

だが、オーガの様子が明らかにおかしい。覇気がなく、まるで抜け殻のようにうつろな目をしていた。


そんな中、オーガが突然、叫んだ。


「ソウダ! ハカイシン ダ!」


破壊神――?


耳を疑った。


やがて人間がその場を立ち去った後、エルフは静かに木から降り、オーガに接触した。


反応は鈍く、意識も曖昧なようだったが、彼が語る“破壊神”が、サティエルであることはほぼ確信できた。


その後、エルフは人間の町へと足を運び、情報収集を開始した。

そして、すぐに気づく。人間たちが、サティエルらしき少年を探していることに。


確か彼は、エルフィリアに来た当初、こう言っていたはずだ。


――こちら側の国では、居づらくなった、と。


……そういうことか。


状況の合点がいく。そして、さらなる衝撃が待っていた。


なんと、邪竜ファーブニルがその“少年”――サティエルによって討たれたというのだ。


ロック鳥を倒したことですら驚きだった。

だがそれ以上の存在、邪竜ファーブニルをも打ち倒した破壊の化身――“破壊神”。


エルフはすべての情報を携え、急ぎエルフィリアへと戻った。


アルベルティーナ女王に、サティエルの正体と、の持つ圧倒的な力について報告する。


邪竜ファーブニル以上の脅威――破壊神と。



そして、諜報員の中でも特に優秀な一人、オフィーリアに監視任務を与え、()の後を追わせるのだった。



そうして、サティエルの知らないところで勝手に破壊神と呼ばれ噂が広まるのであった。

次回より新章となります。山を越え異国にたどり着いたサティエルが砦で新たな生活を始めます。


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