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見捨てられた姫様は国を亡ぼす資格があるらしい  作者: サチオウ
旅立ち

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第17話 エルフィリア王国1

そのとき、後方から声が響いた。


「お前たち、手を出してはいけません!」


「アルベルティーナ様! ここは危険です、お下がりください!」


「もし、あの者が本気になれば、我らは誰ひとり生き残れないでしょう」


そう言って、ひとりの高位エルフ――気品ある女性が前に出てきた。


「大変、無礼をいたしました。私はこの地、エルフィリアの王、アルベルティーナと申します」


「私はサティエルです」


「このロック鳥を倒されたのは、あなたで間違いありませんか?」


「はい、そうです」


先ほどの閃光……二日前、このエルフィリアをかすめていったおそろしい光と同じ。

その発生源が、いま目の前にいる。


しかし、こんな山奥のエルフィリア王国に一体何の用が――?


好き勝手に動かれては困る。だが、敵に回すわけにもいかない。

ならば、こちらから招き入れ、監視下に置くのが得策だろう。


それが、アルベルティーナの判断だった。


「ロック鳥を討伐していただき、感謝いたします。実は、我々も被害に困っていたのです。

ところで、このロック鳥の遺体ですが、いかがなさいますか?」


「私には必要ありません。必要ならそちらにお譲りします」


「ありがとうございます。それでは、こちらで処理させていただきます。もし必要な部位があれば解体後にお渡ししますが?」


「いいえ、特に要りません」


貴重なロック鳥の素材をいらないとは……。

素材回収の間、滞在させ、情報を引き出そうと思っていたのに。


「それではせめて、我が屋敷で討伐のお礼だけでもさせてください」


 何か意図があるのか?面倒ごとになる予感がする。このエルフの女王、できれば関わりたくない。


 でも、ここで断ったら、周囲のピリついたエルフ達になにを言われるか......。


「……わかりました。少しだけ、お邪魔します」


サティエルはしぶしぶ頷き、アルベルティーナの後に続いた。


案内されたのは、大樹の上に築かれた壮麗な屋敷だった。


通されたのは、内装も豪華な一室。そこにアルベルティーナ女王と、二人の護衛が入ってくる。


やがて、飲み物とクッキーのような菓子が運ばれてきた。女王が最初に一口食べ、毒が入っていないことを示す。


「どうぞ」


すすめられたので、とりあえず一つつまむ。


――おいしい。


「お疲れのところ申し訳ありませんが、少しお話を伺ってもよろしいでしょうか?」


アルベルティーナはそう言いながら、サティエルを観察する。


見た目は人間の()()()。なぜか印象に残りにくく、身なりも特に上等ではない。ただ、所作はどこか洗練されている。


「はい」


「サティエル様は、なぜこの国へ?」


「山を越えようとしていて、たまたま通りかかっただけです。ここにエルフの国があるとは知りませんでした」


「この険しい山を、一人で越えてきたのですか?」


「はい」

……まあ、険しすぎたから、穴を開けて抜けたのだけど。


「なぜ、そんな無茶を?」


「少し、向こうでは居づらくなったので別の場所に行こうと思って」


「山の向こうで、強力な魔物でも出現したのですか?」


「いえ、そんなことはありません」


――おかしい。嘘をついているようには見えない。でも、他の場所に行くなら、わざわざこの山を越える必要はないはず。


それに、あのロック鳥を倒した魔法。もしあれが人間の間で一般的に使われているのなら、恐ろしい話だ。


「あの、ロック鳥を倒した魔法……あれは何ですか?」


「ああ、私のおばあちゃんと開発した魔法です」


「いま、人間の間では普通に使われているのですか?」


「まさか。皆が使ったら世界が滅びます。今のところ、使えるのは私だけです」


――なるほど。では、この人物はいったい何者?それに、本当に人間なのか?


なぜか、うまく認識ができない。人ではない可能性も考えるべきかもしれない。


実際には、モーブの髪飾りの影響だったのだが、女王の思考は別の方向へ向かっていった。


「お疲れでしょう。今日はここに泊まっていってください。夕食にはご馳走を用意いたします。

よろしければ、明日、私たちの町をご案内しますが、いかがですか?」


――正直、ありがたい。多少の警戒は必要だが、外での生活が続いていたし、休めるのは助かる。


それに、エルフの町にも興味がある。案内してもらえるなら、お願いしよう。


「ありがとうございます。では、明日お願いします」


――エルフの国を探るのが目的かしら?とりあえず明日は、無難な場所を案内して、興味の方向を探ってみましょう。


「食事の準備ができましたら、こちらへお持ちします。

そのほか何かありましたら、このベルを鳴らしてください。それでは、失礼いたします」


――この機会に、マントや服も洗っておきたい。


サティエルがベルを鳴らすと、すぐに使用人がやってきた。


「この服を洗いたいのだけど、水場をお借りできますか?」


「とんでもございません。お客様にそのようなことをさせては、私が叱られてしまいます。こちらでお洗濯いたします」


「では、お願いします」


使用人は服を受け取り、部屋を後にした。そして、すぐに女王のもとへ報告へ向かう。


――服は、ごく平凡なもの。ただ、こちらに話しかける態度や佇まいは、明らかに上位者のそれだったと。


女王は、先ほどの会話の中でもその気配を感じていた。ただ、そのような身分の者が平民を装い、一人で山を越えてくる理由がわからない。


サティエルのただの好奇心による行動だなどとは、想像もしていなかった。

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