第15話 オーガの集落2
サティエルは残った最後のオーガに告げる。
「これで、私の勝ちでいいわよね?」
「イイヤ マダ オレニハ カッテナイ」
サティエルの中にいるふたりは悟った。
これ、全員倒すまで終わらないのでは――。
「オレ カツ アイツラ ユダン シタダケ」
次のオーガは、手に巨大な鉄製のハンマーを握っていた。
重そうなそれを片手で軽々と担ぎ上げる。
その言葉と構えを見て、サティエルは気づく。
フェアな戦いなどではなかった。ただ侮られていただけだと。
怒りが湧く。
「もし、私が勝って、また誰か出てくるようなら……天罰が下るよ」
今度は、エルネスタと連携を取る。
ハンマーが唸りを上げて振り下ろされる。サティエルは右手を前に出し、それを正面から受け止める構え。
そして、ぶつかる寸前--。
「プチ・アルティマータ」
手から出すのは「プチ・アルティマータ」呼ぶことにしていた。
彼女の掌から放たれた光が、ハンマーを一瞬で消し去った。
周囲に静寂が走る。ようやく、サティエルが只者ではないと気づいたオーガが指笛を鳴らす。
「ピィーーーーーー!」
続けて、怒声が響く。
「テキシュウ!!」
集落からオーガたちがわらわらと現れる。中には、背丈も筋肉量も常人の倍はあるような者も混じっている。
ああ、やはりこうなってしまったか......。
「どうする?」エルネスタが迷う。
判断は、サティシアの方が早かった。
「私の邪魔をするなら、滅ぼす」
その声には迷いがなかった。メーディアの最後の言葉を思い起こさせるものではあったがそれに従ったものではない。
オーガ達が柵から出て自分たちを取り囲む前に倒すという最も合理的な判断だった。
エルネスタは内心で舌を巻いた。この子、判断力がすごい。
いやそれだけではない。考えてみれば学習能力、魔法の才能も......。
そしてこの体、気功術との相性がとてもいい--当時は気づかなかったが、18歳だった自分が子供になっても違和感なく気功術が使えるほどに。
成長途中の少女の中にいて、この先どれほど伸びるのか正直怖いぐらいだ。
「準備するよ」サティシアが言った。
エルネスタは補佐にまわる。
サティエルが口に魔力を溜める。
狙いを定め、アルティマータを放つ!
左端のオーガから右へ-- 首を回しながら一条の閃光が吐き出される。
どおおおおおんっ!!
まばゆい光線が、オーガの集団を、木々を、住居を、すべてを一閃で薙ぎ払った。
光線が通過した場所から発火し、山火事のように火が走る。
轟音と共に、後方の山が崩れ、土砂が怒涛のように流れ出した。
集落は、一瞬で跡形もなく消えた。
サティエル自身も、その破壊力に目を見張った。
「ファーブニルのときは空に向けて撃ったから何も起こらなかったけど……
地上で使うと、こうなるのか。破壊の痕跡が、目の前に広がっている」
サティエルの中の二人は、メーディアの「この魔法だけでいい」という言葉を思い出し、心の中でつぶやく。
--いや、日常ではとても使えない。やっぱり他の魔法も必要だよ。
先ほどの三人のオーガはまだ生きていた。
もはや抵抗する力も意志も持たず、ただ地に伏して震えていた。
もう、追撃する気はなかった。
サティエルはただ一言、静かに言い残す。
「天罰よ」
そうして背を向け、立ち去った。
のちに、この出来事は語り継がれることになる。
--破壊神の怒りに触れ、オーガの集落は滅ぼされたと。




