表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
見捨てられた姫様は国を亡ぼす資格があるらしい  作者: サチオウ
プロローグ サティエル誕生

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/56

第10話 最凶の襲撃者2

発生した霧により、ファーブニルからの視界が遮られている隙に、メーディアは地面に激突したサティエルの元へ駆け寄り、肩を抱えながら後退。ファーブニルとの距離をとった。


「大丈夫か?」


息を荒げながら、彼女が問う。


「うん、気功鎧をまといながらの受け身で防げた。ダメージは軽いよ」


サティエルは顔をしかめながらも、しっかりと立ち上がる力を持っていた。


「もう一回、落とせないかな?」


「何かあてがあるのか」


「うん」


サティエルの瞳に、確かな意志が灯っている。


「わかった。とっておきの魔法を使う。ただし、チャンスは一度きり」


二人の間に、沈黙ではなく覚悟が交差する。


再び上空から炎の轟音が響く。ファーブニルの胸が膨らみ、喉奥に赤熱の魔力が集まり始める――火炎ブレスだ。


メーディアが詠唱に入る。空気がびりびりと震え、地面に影が揺れる。


「いでよ不断の光鎖、その輝きにて敵を拘束せよ――ルミナス・チェイン!」


天空に向かって放たれた魔力が光に変わり、無数の鎖となって収束し、ファーブニルの四肢を絡め取る。ぎしり、と金属が軋むような音を立てながら、巨大な竜が地上に引きずられてゆく。


「早くしな! 長くは保たない!」


サティエルは気功蹠で一気に跳躍。空気が震え、風を斬るように一直線に飛ぶ。


そして魔法の詠唱。


「アルティマータ!」


圧縮された魔力が瞬時に放出される。轟音とともに、ファーブニルの胸部を覆っていた鱗が砕け、煌く破片となって空に散る。


「気功掌!」


狙いは鱗のはがれた部分。力を込めて放たれた気のエネルギーが、竜の内部へと突き刺さった。


「グワワワーッ!」


怒りと苦痛の絶叫。ファーブニルはその苦しみから逃れるように、あばれ、光の鎖を咆哮と共に引きちぎる。


怒りに任せたドラゴンクローが容赦なくサティエルを切り裂き、続くドラゴンテイルが風を裂いてメーディアをなぎ払った。


「うぐ……この我がこんな痛みを……許さん」


傷ついた竜が呻くように唸りながら、再び空へと舞い戻る。その翼が生む突風が地表の草木をなぎ倒し、焼けた大地をえぐる。


そしてまた、喉に紅蓮の魔力が集まる――火炎ブレスの予兆。


地に伏したメーディアは、身動き一つできない。サティエルも傷だらけ。彼女の中に宿る一つの人格――エルネスタは、策を失い諦めかけていた。


だが、そのときサティシアが口を開く。


「アルティマータは掌じゃなくて、口の中の方がいいと思うの」


その一言に、エルネスタはハッとする。


――そうか。確かに掌よりも、口内の方が広く密閉された空間。魔力の濃縮がより効率よくできるかもしれない。


迷いはなかった。サティエルの体に宿る気が、彼女の決意に応えるように高まっていく。


これが決まらなければ終わる。その思いで最後の力を振り絞る。



気を用いて口内を守り、その内部に魔力を凝縮、加熱――そして、臨界点を迎えた。


口を開く。


どーーーーん!


空を切り裂く閃光。まばゆい光が一瞬にして邪竜を貫いた。


「バカな。この私が......」


空中のファーブニルが、大気を引き裂きながら落下する。地響きとともに地面に激突し、その巨体はぴくりとも動かなくなった。


……何とか、倒せた。


サティエルはふらつく体を懸命に動かし、メーディアのもとへ駆け寄る。


地に横たわるメーディアは全身を傷つけ、呼吸も荒い。それでも、その目には確かな光が宿っていた。


「アルティマータ……見事だった」


そう、これこそがメーディアの思い描いていた本来のアルティマータだった。


その一言を残し、彼女は気を失った――満足げに、そして安堵したように。


サティエルは急いでメーディアを小屋へ運び、手当てをしてベッドに寝かせた。自身も激しく消耗していたため、すぐにベッドに倒れ込んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ