第41話こんな機能は知らない
「何だ今のは……声か?」
私はノイズのような、女性の声らしきものを聴いた気がしたが確証はなかった。
偶然そんなように聞こえたと言ってしまえばそれまでなのだろうが、現に現象として目の前で変化が起こっていればそう割り切るわけにもいかない。
私は神経を総動員して目を凝らす。
コックピットのおそらくはカミラ研究員を中心にして、光の妙なゲートを確認した。
そして、機体に染み入る様に光が定着した時には、ロボットスーツの外観が完全に変化していた。
「……なんで?」
デザインが一新されてしまったのだが?
そして私は、つい数分前に似た感じの現象を見たことがあった。
魔神機、アルマギオンが出現した時と類似した光だ。
その光が生じたことで、私の発明品は作り変えられたのだと思われた。
「ふーむ。魔法の作用と言えばそうなのだろうが……」
だが私以上に驚愕していたのは、女王である。
彼女の乗る魔神機は小刻みに震え、威圧感を激しく増すと城が震えるほどの咆哮を発した。
「魔神機が共鳴している……だと? ありえない!」
「ん? どの辺がだね?」
「すべてだ! お前はカミラに何をした!?」
「……偶然拾っただけなんだがね? 実験を手伝ってもらってはいるが……一応
承諾は取っているよ?」
女王の私の作品を見ながら出てきた単語に私は訝しんだ。
デザインが変わったから魔神機? 共鳴している? 共鳴するのは同じ魔神機が現れた時?
具体的には実際に試してみなければわからないが、しかし言われてみればロボットスーツの新しいデザインは、どことなくファンタジー的で魔神機を思わせる雰囲気があった。
しかし変化に驚いてばかりもいられない。
おそらく完全に制御を取り戻した今、戦闘は継続中である。
カミラカスタム? は、更に黒いモノで作り出された槍を、狼怪人の背で掲げる。
真っ黒だが見事な槍は黒い嵐をまき散らしながら知らない武装を解き放った。
「……我が一撃は欺瞞を切り裂く―――聖槍顕現」
カミラ研究員の魔法が槍を中心に渦を巻いた。
それは槍の一撃なんてものではなく、広域に効果のあるもっとヤバい兵器にしか見えない。
「くっ……!」
対して強烈な敵意を感じ取り、女王の聖剣は目を焼くほどの光を発し始めた。
更に光が収束し、剣と言う方に押し込められたようにも見える現象は、目の前で具現化されて、神々しい刃となる。
「我が王道は断罪する―――聖剣顕現」
「おっと、これはまずいね」
死ぬ感じなので、ひとまず防御態勢と回避。
更にこの部屋を丸ごと包むシールドを更に強化する。
瞬間、二機から繰り出された必殺の一太刀は正面から激しくぶつかり、光に包まれた。
ドクタークレイの大発明。魔力探知機でモニタリングしてみたが、数値は振り切れて不明というあまりにも不甲斐ない結果である。
こいつは改良が必要の様だ。
私はむむっと顔を顰める。
情けない話だが、この目で目にしていると言うのに、何が起こっているのかさっぱりわからない。
ただ結果を想像するに……ほんの一瞬だが途方もないエネルギーのぶつかり合いの果ては、単純な話。
押し負けた方が砕かれるのだろう。




