第33話光の神
かつてカミラは母であるその人を光の化身の様だと感じていた。
身に纏う軍装を思わせる純白の衣装とマントは、この国最強の守護者の証である。
それを体の一部の様に身に纏う金色に輝く髪の美しい女王はカミラの目から見て完全無欠の存在だった。
その力は恐ろしい魔物の手から祖国を完璧に守り、善政を敷き人々から尊敬される。
彼女の威光は圧倒的で、光の神に等しい。
「……」
そして今、カミラは謁見の間にて跪き、やはり神にも等しい母の姿を見上げていた。
誘拐されて、騎士に連れられてくれば会うことくらいは出来たのかと、ずいぶん冷めた感想が浮かぶが、もはやどうでもいい事だった。
そして行われているのが尋問まがいの報告会ともなれば、うんざりもする。
女王の傍らにいる審問官の男は訝しげな表情で質問を繰り返していた。
「貴女の襲撃を計画した者がいる。盗賊は雇われていたと?」
「そうです」
「未知の技術の他に魔人機に似た道具……到底信じられるものではない」
「無理もない話ですが、全て事実です」
本当のことを伝えるのはせめてもの誠意だ。
真っすぐに女王を見つめるカミラに、女王はそっけなく肩をすくめ目を閉じた。
「……まずは疲れを取り。良く休むと良い」
「いえ……その前にお尋ねしたいことがあります」
「いいでしょう。なにを聞きたい?」
「……此度の襲撃。女王陛下は、犯人への心当たりはあるのでしょうか?」
不躾すぎる質問に女王は閉じていた瞼を開けて、淡々と断言した。
「ありません。今後厳正に調査しましょう」
「……そうですか」
カミラは後に言葉が続かず黙り込む。
この先を追求することに意味があるのか、カミラにはわからない。
女王が知らないと言ったのなら、この話はここで終わりだ。
ただ、じっとこちらを見つめる女王の表情には一欠けらの動揺もなかった。
しかしおそらくは真実を彼女が知っているであろう確信が、カミラにはあったのだ。
ああ、どうにももどかしい。
カミラはどろどろとした感情の中に、今にも飛び出してきそうな激情があることに自分で驚く。
そしてこの期に及んで、何も言わないであろう自分を想像して絶望しかけたその時―――突然張り詰めた空気を破壊したのは、場違いなほど明るい笑い声だった。
「アッハッハッハッ! いやすまない。まさかいきなり問いただすとは思わなかったものでね。君、本気で確かめるつもりあったかい? それとも確かめる必要もなかったのかな?」
「……っ!」
カミラはその瞬間確かに脈打つ心臓の音が聞こえた。
しかしまさかこんなタイミングで現れるなんて予想出来るはずがない。
警備なんてまるでないもののように、ドクタークレイは散歩するような気安さでやって来て、優雅に頭まで下げるのだからカミラは血の気が引いたのだが。
「ごきげんよう女王陛下。お初にお目にかかります。わたくしは自称マッドサイエンティスト、ドクタークレイと名乗っています」
「……誰?」
ただ……そこに現れたおそらくドクタークレイ? は、どう見ても子供の姿ではなく壮年の男性だった。