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第3話とある盗賊の受難

「よしよし大量だな。いい金になりそうだ」


 その日、彼ら盗賊団はすこぶる好調だった。


 獲物として狙っていたクーシーという犬型の妖精がいる。


 普段は中々見つからないそいつらの集落が思ったよりもずっと簡単に発見できたことが大きい。


 クーシーの毛皮は魔法の力を宿していると評判で、好事家たちに高く売れるのだ。


 こいつはしばらく遊んで暮らせる額になると檻一杯に詰め込こまれた金貨達を見て、盗賊の男はほくそ笑む。


 そんな時だ―――そいつが森の奥から現れたのは。


「……あ?」


 森から何の前触れもなく出て来た白い髪をした子供を男は見た。


 何でこんな場所にと疑問は湧いたが、にこやかに笑う子供に最初、男はまったく脅威を感じなかった。


「なんだお前? どこから出て来た?」


「こんにちは。初めましてだね。ご機嫌なようでなによりだ」


「なんだこいつ? 気味が悪ぃ……まあいいか。おい、中々いい服着てんじゃねぇか。お前も高く売れそうだな」


 男はすぐに頭の中で子供を捕まえた場合の利益を計算する。


 しかし答えが出るのを遮ったのは、そんな子供の一切恐怖の欠片もない声色の言葉だ。


「悪党だねぇ。友好的でないとはっきりしたところで、じゃあ……無力化させてもらうよ」


「は?」


 何を言っている?


 嘲笑って、何ならぶん殴るはずだった。


 しかし子供の小さな手から、何かが地面に撒かれたとたん―――。


「まぁ死ぬかもしれないが、頑張ってくれ」


「……!!!!」


 猛烈な勢いで地面を割って飛び出した何かに男は一瞬で飲み込まれた。


***


 モッチャモッチャ。


 おお、食べられてる、食べられてる。


 私はチンピラ風の男が巨大植物に食べられる光景を満足して眺めていた。


 相手に捕食されたとも気づかせない捕食スピードは自分で作ったものながら実に芸術的だった。


「しかし……思ったよりも大きくなってしまったな。やはり地球用の調整ではダメかな?」


 ドクタークレイの大発明。食物連鎖頂点植物はモリモリ有機物を取り込んで、すくすく育つ素敵な植物である。


 食虫植物に似ているが極めて悪食。たんぱく質をこよなく愛している。


 熱や衝撃にも強く、極めて強力な再生能力を持つ。


 食物連鎖のピラミットを円にするかもしれない腹ペコ植物は、野生化すれば世界を変えるに違いない。


 直接生物を摂取し、余った過剰な栄養はそのまま大地に還元される植物に優しい植物なのだ。


 その性能は、この通り。


 触手で捕獲が次々進むたびに悲鳴がそこら中から上がって、周囲の男たちはパックンチョと植物に取り込まれていった。


「まぁ。この子はオリジナルより大分調整しているんだが、十分実用的だ。消化に時間がかかるタイプでね、ゆっくり囚われていてくれたまえ。今全員捕獲するからね。一時間で間に合わなければ許してくれ。生命維持ぎりぎりのラインだが……まぁ、頑張ってみるから」


「むー!」


「あっはっはっ。ふむ……何を言っているかはわからないが、同意を得られたということにしておこう」


 さて全員一時間以内に捕まえることが出来るかな? 少々不安はあったのだが、しかし幸い彼らは血気盛んだった。


「なんだこいつは! 見た事ねぇ魔物だ!」


「火を持ってこい火を!」


「囲め囲め!」


「おお。生きがいいな」


 逃げるどころか、自分達からホイホイ捕獲されに来た。


 まったくもってそれは非常に都合のいい展開である。


「効率的で実に素晴らしい……えい」


「「「ぎゃあああああ!!!!」」」


 せっかくなのでオマケにあと二号と三号を追加すると、悲鳴の上がる速度は3倍になった。



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