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第27話少女の心配

 完全に意識を失った武装集団を見た研究員Bは目を見開き、叫んだ。


「!……どう考えてもこっちの方が重大では!?」


「そうかね? 盗賊のアジトをパトロールしていたクーシー達が捕まえたのだよ。盗賊の関係者だと思うが」


 ツンツンと枝で突いているクーシーが撃退したのだから、戦闘能力はそれなりと言ったところだ。


 今後似たような集団が、数をそろえて来ても問題なく撃退できるだろう。


 まさしく雑事だと笑みを浮かべると、研究員Bは明らかに様子がおかしかった。


「……いえ、彼らは。おそらく私のいた国の騎士です」


 私は少しだけ驚いた。


 鎧が立派だったからどこかの組織に属する人間だとは思っていたが直に関係者とは。


 盗賊と密通なんて言うのはどう考えてもしょうもない話らしい。


「ほう。なら君を助けに来たのかな?」


 研究員Bが彼らとつながりがあるのならそう言うこともあるだろう。


 しかし研究員Bは視線をさ迷わせ弱々しく首を振った。


「どうでしょうか? それはないと思いますが……」


 チョットだけ捨て鉢というかありえないと笑う研究員B。


「では、君を殺しに来たとか?」


「……」


 だから私がより深く斬り込むとさすがに研究員Bは黙り込む。


 この沈黙は肯定ととってもよさそうだ。


 本人も確定したくはないのだろうが、極めて高い確率で彼女の処分に彼女の国が動いていると見た方が良いのだろう。


「なるほど。まぁそう言うこともあるだろうね。その時は撃退に君に上げた機体を使っても構わないよ。君自身が相手を無力化するのなら、加減は練習しておくといい」


 そう許可を出す。


 自分でやりたいのならそれなりに生存率も上がるだろうと思っての提案だったのだが、研究員Bは明らかに納得していない様子だった。


「……! な、なんで何も聞かないんですか? もっと他に……」


「必要なことは聞いただろう? それに、私には関係がないからね」


 私はあっさり答えると研究員Bの目じりがつり上がった。


「関係は……あると思います。私がここにいることでご迷惑が掛かることもあるとは考えないのですか?」


「それを含めて、どうとでもなると考えているよ。本来ならこの場所に一人で住むはずだったんだ。外敵との遭遇は想定内なのだよ」


「場合によっては騎士の襲撃を受けるとしても?」


「想定内だ。人だろうが獣だろうが襲ってくる時はくるものだよ。私に害が及びそうならすべて綺麗に撃退するさ。それにね……私は人間相手の方が経験豊富なんだよ」


「……!」


 実際に自衛できると思えるだけの備えはしてきている。


 数々のロボットや、もっとえぐい武装だって用意はあった。


 それでもどうしようもないのなら、ここには居住不可能と判断して別の世界にでも行けばいい。


 ただ引っかかるのは研究員Bのこちらを心配していますよというあからさまな態度だった。


「だが、その辺りを考えるべきは君の方だと私は思うね。私の安全やらなにやらは一切考慮しなくていいよ。ただ―――私を巻き込んだうえで、私と敵対する可能性があるのなら高くつくかもしれないと覚えておいてくれ。自分が望む結果になる様に行動してみたまえよ」


「すごい自信ですね……私は怖いんです。詳しく話もせずに何を言っているのかと思われるかもしれませんが」


「ふーむ……君は私が君を放り出すことが最善だと考えているということかね?」


「……普通はそうすると思います」


「なるほど。では私が放り出したとして、君の敵から自分が死なない勝算はあるのかね?」


「……わかりません。逃げる事しか私は思いつきませんけど」


 伏し目がちに勝ち目はないと言う研究員Bだが、今の言い様だと裏を返せばうまく逃げおおせることが出来れば、生き延びることが出来ると考えているともいえる。


「ならば、痕跡も残さず逃げきる事だ。それが君にとっての完全勝利というものだろう? 私もよく使うよ」


「でも……とてもうまくいくとは思えません……」


「そうだろうとも。だが勝ち目を見いだしているのなら確率はゼロではないと君は考えている。私は君の考えを尊重しよう。ただね、私を巻き込めばもう少し高い勝率を保証出来る。何せ大切な現地人の協力者だからね。出会いは大切にするスタイルで行こうというのは当初のプラン通りだよ」


「それは……助けてくれると言うことでしょうか?」


「いやいや、売り込んでいるんだ。ここにもう少しいてくれれば命の保証が出来るよと。それくらい私は君の知識に魅力を感じている」


「……とても割に合わないことだと思います。他にも何か理由が……あるのでしょうか?」


「今の理由では足りないかね?」


 実際大したことでもない。


 その程度の些細なトラブルは私にしてみれば、旅のスパイスだと言うだけのことだ。


 だが今の問答でわかったこともある。


 私は目を細めて、不安そうにこちらを見ている少女に告げた。


「話はここまでだったのだが……やはり少しだけ提案させてもらっても?」


「な、なんでしょうか?」


「君の国に行ってみようと思う。協力願えるかね?」


「……!!!」


 なんでそうなると愕然とした研究員Bだが私は方針を決めた。


 ここまでの話で分かったことは、研究員Bはこの私を侮っているということだった。


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