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第23話勝利の感触

戦闘用ロボットスーツはより直感的に行動するためにより人体に近い構造を採用した軍用機である。


 とはいえカミラがそんなことを知るわけもなく、開かれた鎧の中に滑り込んだ。


 カミラを中に招き入れたスーツは、中に外の風景を映し出した。


「見える……体を動かすと……この子も動く。これは分かりやすい」


 カミラは前方のアンデットを前に息を深く吸い込む――――そして吐くと同時に、駆けだした。


 だが同時に身体を浮遊感が襲う。


 ドカンとすごい音がして、機体が前のめりにバランスを崩したのは一瞬だった。


「何て力!」


 合わせられたのは、ただの偶然に過ぎない。


 カミラは咄嗟に拳を打ち出した。


『―――!』


 しかし強い魔法の力の流れが、スーツの拳をすんでのところで止めていた。


『カカカカカ!』


 カミラには黒いスケルトンの纏う濃すぎるほど濃い死の気配が見えていた。


「……でも」


 恐ろしいと感じる。


 しかし拳を繰り出したまま固まったロボットスーツは、甲高い音をたて始め―――。


「え?」


 ズズンと死の気配ごと、スケルトンを押し潰した。


『カッ……!!!』


「これにももっと強力な奴がついてるの!?」


 先ほどよりもはるかに強力な重力場に黒いスケルトンは完全に地面に縫い留められる。


 そして止められていた拳は黒いスケルトンの気配を四散させ、直接その体を叩き潰した。


「……マズイ。仕留めちゃったかも」


 余りに爽快な手ごたえにカミラは青ざめる。


 カミラは勢いあまって前方にひっくり返りながら、しかし息つく間もなく撃ち込まれる無数の光の矢を見た。


「へ? うわわわわわ!!」


 何とか転がって回避。


 上空から雨のように降って来た光の矢は黒いスケルトンに殺到すると、爆発ではなく氷の山が目の前に現れた。


 そしてどうにかなったと理解できたのは、氷の山の中で氷結した黒いスケルトンを見つけたからだった。


「……一体何が起こったの?」


「やってやったデス!」


「ミサイル攻撃デス!」


「氷漬け最強デス!」


 ヒャッホイ! と喜んでいるクーシー達の声が無線で飛び込んできたが、言っていることはさっぱりわからなかった。


「氷の魔法……ではないのよね?」


「ウヒョー! やったぜ! すげぇじゃん! ダイジョブかい!」


「…………まぁね」


 そこに喜んでカミラの所にかけてくるのは盗賊男で、彼は純粋に助かったことに喜んでいるようだ。


 ただ相手が相手だけに、それが間違っているとも言い難い。


 カミラはフゥと息を吐いて、ロボットスーツから這い出るとなんとなく訊ねていた。


「あなた……そう言えば名前は何ていうんだっけ?」


「俺? 俺はロイだよ……いや、研究員Aでよろしく」


「そうね。そうします」


 カミラは氷の塊を見た。


 そこには黒いスケルトンがいて、まだ五体満足で何かしようとしていたことが分かる。


 あの黒いスケルトンとまともに戦えば、国の騎士団を連れて来ても全滅してもおかしくない化け物だった。


 それを適当に貰った装備で、こんなに簡単に圧倒出来たのは大金星と言っていい。


「いえ……適当な道具ではありませんね。この鎧は魔人機に匹敵するのでしょうか?」


「じゃあ急いで回収して帰るデス!」


「こんなところにいつまでもいられないデス」


「次が来そうな気がするデス!」


「「はい!!」」


 いつもなら騒ぎ出しそうなクーシー達がわき目も降らずに氷を切り出しているのを見て、カミラ達も慌ててそれを手伝った。


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