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第19話異世界の魔法

 異世界ロボット大いに結構。他の種族とやらも大いに厄介そうだ。


「やはり肝となるのは魔法かな? まぁなに。糸口はすでにつかんだようだしね」


 しかしどうやら幸運なことに、私は異世界に来て早々にとてもいい出会いに恵まれたのかもしれない。


 サンプルは多い方がいい。


 良いサンプルが手に入り、私が始めたのは―――スケルトンの研究だった。




 拘束具で動きを完全に止められたスケルトンは本当にただの骨が動いていた。


 筋肉はないのに不可視の力場が表面を覆い、体を動かしているようだ。


 骨は未だにくっつこうとしているようにも見えた。


「ほほう……これも魔法なのか。なにか、力の源はあるのかね?」


「それは……おそらく、胸の魔石だと思います」


「魔石? よく見ると……欠片のようなものはあるか?」


「これは、魔法を与えられた種族に存在する、魔力を生成する器官と言われています」


 今回助手を務めるのは研究員Bである。


 魔法の造詣が深い彼女には、今回のために純白の白衣をプレゼントしていた。


「あのこの服は?」


「研究室の制服だよ。下の服装は好きな者を着ていいが、ラボにいる時には白衣着用は厳守してくれたまえ?」


「は、はぁ……それともう一つ質問いいですか?」


「なにかね?」


「今日は……その。子供のお姿なんですね」


「うむ。何かを学ぶ時は成長期がいい。吸収力が違うよ」


 私の今日の肉体年齢は12歳。体が若々しいと思考も前向きで好奇心が止まらない。


 白衣がフリーサイズではないので袖は長いが、大きくなる場合もあるので仕方がなかった。


「見た目についてはあまり気にしないでおいてくれたまえよ。それよりも続きをお願いしても?」


「は、はい! 魔石は魂の力を魔力に変えると言われています。ですから死と言う特殊な状況下で魔法が発動した結果が……スケルトンではないかと」


「魂か……」


 私は思わず口に出し、妙な顔になっている自覚があった。


 今更だが実際に叱咤ワードが出てくると、微妙な反応にもなろうと言うものである。


「どうしました?」


「ウーム魂の探求とは、錬金術師にでもなった気分でね」


「そ、そうですか……」


 元の世界でなら鼻で笑うところだが、しかしそれでも確認できるなら認めなければならない。


 それと言うのも、魂に干渉することが出来る物質が手元に存在するからである。


「にしても魔法結晶は本当にワンダーだ。異世界に来てすぐ見つかると言うのも複雑だが、まぁこういうものかもしれないな」


 こいつにビリビリと電気的な刺激を与えると、明らかにスケルトンが反応している。


 ちょっとしたきっかけで世界を揺るがす場合だってあるだろう。


 だが考えてみれば世界を超えると言うのはちょっとしたことではないなと私は優雅に笑った。


「確認するがこのスケルトンは、生前魔法を使えなかったのだよね?」


 一応前もって聞いていた情報を確認する。すると研究員Bは頷いた。


「はい。来ていた鎧は大昔の一般兵でした。剣もごく普通の鉄の剣でしたし」


「ならばもし魔法を使える人間がアンデッド化したのならどうなる?」


「それは……」


 研究員Bは言い淀んだが、まぁおそらくはもっと強力なスケルトンになるんだろう。


 自分の心臓にその原料があるとなれば、答えを迷うのも仕方がないのかもしれない。


 心臓の魔石の質が魔法を使えるかどうかに関係があるとみていいだろう。


 彼女を詳しく調べるのもやぶさかではないが、私としてはそんなもったいないことをするつもりはなかった。


「今日はこんなものか。じゃあクーシー君たち。ひとまず分解したスケルトンを捕獲機に戻しておいてくれるかな」


「「「わかったデス!」」」


「食べてはダメだよ。お腹を壊すからね」


「「「了解デース……」」」


 ああいういかにも危険なものは口に入れないように躾けるべきかな?


 今後も注意が必要だった。


「骨しかないのに生前と同じように、いや、生前以上に動き回っている。筋肉や脳が存在しないのにそれに代わるものがある。言ってしまえばロボットのようなものではないかな? 君の知る兵器も同じ理屈で動くのかい?」


 まぁこれが魔法で出来ると言うのなら、複雑な機構がなくても動くだろう。


 何せ人骨だけでも動くのだから、言ってしまえばその辺の石や木だって動かせると思った方がいい。


 しかしその辺り本当に研究員Bも詳しく知らない様子だった。


「理屈は……わかっていません。そう……ですねそれは、血によって継承される神の兵器だと言われています。古の女神との契約によって呼び出すことが出来るようになるんです」


「……君もできるのかな?」


 なんとなくそうなのではないかと私が尋ねると露骨に研究員Bの表情が強張った。


「いえ……私には資格がなかったのだと思います」


「なるほど、そういうものなのか。いやはやまさしく選ばれし者の強大な力というわけだ」


「……ええ」


 研究員Bは表情こそ無表情を装っていたが、ものすごく腹に据えかねる事情があるようだ。


 現物が見れないと言うのは残念だが、しかし有名なものならそのうち見る機会もあるだろう。


「ちなみに、その兵器に名前はあるのかな?」


 質問した私に研究員Bは答えた。


「魔神機―――アルマギオンです」


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