第18話可能性の話
私は思わず身を起こして、研究員Bに詰め寄った。
「……つまり、ロボ? いやいや、え? ロボなのかね?」
「ええっと。……嘘ではないです」
目が泳ぐ研究員Bは戸惑っていて、そんな姿を見た私は落ち着きを取り戻してジュースを一口飲んだ。
ちょっと興奮してしまった。いやしかし剣で戦う文明レベルを想像していたらまさかのロボ。
いや、機械であるかはわからないが少なくとも見た目が似ている何かがあるのならだいぶん想定が変わって来る。
「……来てしまったのかコレは?」
私は思わず天を仰ぎ見る。
何だいロボがあるとか聞いていない。まだ喜ぶのは早計だが、一ロボ好きとしては、どうしても期待してしまうのはどうしようもなかった。
「気が変わった……どうかな? 今から君を家まで送り届けるというのは?」
「……いやです」
即答で拒否されてしまった。まぁそう言うことなら仕方がない。
「ならばやめておこう」
「……いいんですか?」
研究員Bは意外そうだが、私にしてみれば無理強いするほどの事でもなかった。
「いいも悪いもまぁ急ぎではないからね。私の都合でガイドを頼むか頼まないかの違いでしかないよ。案内があればいくらか楽だから君の気が向けば良し。ないなら旅行は後回しだ。やることも他にある。極端な話、地図があるのだから気になったら自分で行けばいい」
「……ありがとうございます」
「礼を言うことなんてないだろう? 私も君達を見て学んでいる最中なんだ、まぁ君もバカンスだとでも思って楽に行こうじゃないか」
「は、はぁ」
思えば、自分でも休み方がよくわからないとつい先ほどわからされたばかりだ。
あれくらい気を抜くことが私には必要なのだ。
「それは……ご期待に沿えないかもしれません。私はあまり楽しみ方がわかる方ではありませんから」
そしてここにも同志が一人。
私はちょっと優しい気分になって、彼女の肩をポンと叩いた。
「ふむ。では、まぁ形から入るのもいいだろうね。私も自分と同じように感じる人間を客観視できるのはそれはそれで得るものがあるんじゃないだろうか?」
「そうですか? それはなんだか……おかしいですね」
「そうかね? どうにも普段やらないことを意識してやろうとしてもうまくいかないんだよ。まぁ何事も得手不得手はあるんだろうね」
私はいったん話を切り上げて、再びプールへと向かうことにする。
まあ今度は浮き輪のベッドでも使って浮かんでみるか?
これからやることも多そうだし、しばし休憩に挑戦してみるとしよう。