第14話研究員Bの魔法実演
「では……魔法を使ってみます」
黒髪の少女、研究員Bの手のひらに不思議な光が灯るのを私はこの目で見た。
それはトリックではない。手のひらから直接炎のように揺らいでいて、色は紫っぽい黒である。
「ほほう……黒いと認識できる。光を吸収しているのか?」
普通に光られるよりもずっと不可思議に見える。
私にはこの闇? というか光が、骨をどう動かすのかまるで想像できなかった。
「炎に近いもののようにも見えているが……触ってもいいものなのかな?」
「おすすめはできません。この魔法は魔力を枯渇させますから」
「魔力を枯渇? なるほどなぁ」
えいっと、手を突っ込んでみる。
すると虚脱感が体を襲い、手が水分を吸われたように干からびた。
「な、なにを!」
「ふーむ。確かにこれはしんどいなぁ。いや、面白いねぇ」
ひとまず手の方を眺め、何枚か画像を撮影しておく。
ついでに血液のサンプルも取って、栄養剤を注射しておくと、少しだけ落ち着いた。
「早く治療を……危険だと言いましたよね?」
「体感するのが一番だろう? なるほど面白いね。私に魔力?とやらがあるのか疑問だったが、変化があったと言うことはそれに相当するものが、この身体から奪われたんだろう」
「基本的に魔力は誰にでもあるモノなんですが……何かわかったんですか?」
「いや? 何もわからないことが分かった。細かく調べねばね」
「……」
そう複雑そうな顔をするものではないよ研究員B。
最初は何でも未知なのだ。
それを調べて調べて人の手で扱えるようにしてこそ面白味があると言うものだ。
そして最後に私にはしなければいけない些細な質問があった。
「私も魔法が使えるのかな?」
「いえ。おそらくは……魔法は使えるものが限られる技術ですから」
「…………そうかね」
(魔法、使いたかったのかな?)
研究員Bは声にこそ出さなかったが、そんなことを考えていそうな顔をしていたが、そんなことはない。
ただほんのちょっと出来るかもしれない可能性がある以上は、確かめておきたいじゃないか。
「すぐに試せないのは残念だが、まぁ魔法を使うのはおいおいとしておこう」
「どうにかなるとは思えないのですけれど……」
「何とかするさ。余すことなく調べ上げれば、糸口くらいは近いうちに掴んで見せるとも」
自信満々にいいきる私に、研究員Bは困惑していたが根拠は君だからね?
ここ重要なことなので早いうちに察して研究への協力を考えてほしいところだった。