第12話モンスターが現れた
「「「ワンワンワンワンワンワン!!!!」」」
クーシー達が興奮して一斉に吼え、非常事態を村に告げる。
明らかな異常に私は気を引き締めた。
「なにかあったのかね?」
手近にいたクーシーに訊ねてみると。クーシーは襲撃だと答えた。
「スケルトンデス! 森からいきなり襲って来たデス!」
「スケルトン?」
「ワン! 骨の魔物デス!」
チョット正確なところはわからないが、傍らにいた研究員Bがクーシーの言葉を補足した。
「スケルトンは……死者の魂が魔物化したものだと言われています。墓所や、魔力の濃度の濃い場所によくいると言う話は聞いたことがありますが」
「ほう? 骨になっても動ける人間が? まるでゲーム……いや、異世界なのだ、そう言うこともあり得るのか」
実に興味深い。
そして暗い森の中からゆっくり出て来た人骨は、確かに動いていて私のテンションはもう一段上がった。
「本当に動いている……筋肉も何もないようだが、危険なのかね?」
しかし見たところ朽ちた骨が動いているのは軽そうだ。
大した力もなさそうだがと振ってみると研究員Bは静かに首を横に振る。
「危険です。場合によっては人間より力がある場合もあるとか。その上生きている者に強い敵意を持っていると……」
「そうデス! いつもはすぐ逃げるデス!」
「ダッシュデス!」
「振り返ったら最後デス!」
「うーむ。それはデンジャラスだ」
ぞろぞろ湧き出す彼らは、ずいぶんきれいな骨格である。
カタカタと骨のパーツとボロボロの武装がぶつかる音をたてながら、歩いてくる姿は完全にホラーだった。
「お化け屋敷的な生理的嫌悪感がないではないが……昼間では台無しだな」
それに人間相手に勝ったり負けたりする程度では、焦る必要性を感じなかった。
「まぁ何とかなるだろう。警備のクーシー君たち。戦闘モードを使ってみたまえ」
村の警備用にと用意した警察仕様ロボットスーツは、すぐにスケルトンの対応に当たる。
クーシー達がその機体に乗り込んでパトロールする姿は、正直チョット微笑ましかった。
「「「ワンワンワン!」」」
ロボットスーツに乗りこんでいるクーシー達は尻尾をシュンとさせてはいるものの、勇気を振り絞って前に出る。
こちらの意図が正確に伝わったのは、機体に搭載した赤いパトランプを見れば一目瞭然である。
激しくランプが点滅し、駆動音を大きくするロボットスーツは持っている材木片手に、スケルトンに襲い掛かった。
「喰らうデス!」
カカカカカ!
戦闘のスケルトンはクーシーに気がつくと、目を輝かせて剣を片手に襲い掛かろうとする。
剣と木材。
どちらが勝つかと言えば単純な話。
どちらも必殺の威力を秘めていたのなら先に当たった方だ。
パッカーン!
「……!」
粉砕された骨が全身くまなく吹っ飛んだ。
分解され地面に転がったスケルトンは、もはや動くことはなかった。
「おお、スケルトンとやらもバラバラになれば動けないようだね」
パチパチと私は手を叩く。
まぁ暴走した車両を正面から受け止められるくらいのパワーはある。
多少力があろうが骨の質量くらい、木っ端みじんに出来るだろう。
一番驚いているのは、スケルトンを仕留めたクーシー達だ。
全員が目を丸くして、お互いを見て……。
そしてギラリと目を輝かせると一斉にスケルトンに襲い掛かっていた。
「ぶっ飛ばすデス!」
「その骨よこすデス!」
「ペロペロしてやるデス!」
数分後、山ほどいたスケルトンの群れは、無事クーシー達のおやつの山となり果てた。
「うーむ。せめて頭蓋骨は持ち込まないでくれたまえよ?」
「わかったデス! ペロペロペロペロ!」
「……」
野生に帰った犬、まさにそんな感じである。
うん。骨に夢中すぎるなこいつら。
私はせっかく綺麗に出来上がった村が、早々にリアルすぎるハロウィン仕様にならないことをこっそり願った。