第11話家を建てよう
ゴウンゴウンと反重力装置特有のエンジン音を響かせて飛んで行くのは完全自立制御で動く建設用ロボットたちだ。
整然と出撃していく彼らは、建築ロボなのに迫力があった。
こちらは人が乗らない分無茶が出来る、頼れるサポーターである。
「基礎的な工事は私が担当するから、住む場所は君達もどんどん意見を出してくれ。欲しいものがあれば、ロボットたちに伝えてもいい。直に作業をしたい場合はなるべくロボットに乗り込む様に。危ないからね」
とは言いつつもクーシー達がどんな反応を示すのか私は全く予想出来ていなかったが、クーシー達はすでに相当数が私と一緒に建設予定地にやってきていて、皆一様に尻尾を振っていた。
「作るの得意デス!」
「誰が一番器用デス?」
「ガンバルデス!」
「うん。頼むよ」
とはいえ見た目犬だし、そんなに期待はできまい。
内心そんな風に思っていた私は、しかし嬉しい意味で予想を裏切られることになった。
「え? おお……これは、すごいな君達」
「頑張ったデス!」
「新しいお家デス」
「素敵な村デス」
胸を張るクーシー達がバカ可愛い。
そして彼らは私が与えたロボットスーツを今や手足の様に使いこなしていた。
結局オートで動く建機ロボットたちが手掛けたのは、上下水道や電線などの基礎工事くらいのものだ。
ドーム状の煙突の付いた家がたくさん並ぶ村は、道が綺麗に舗装され、ロボットスーツもスイスイ通れるゆったり規格。
街灯が等間隔に設置された町は、夜にも明るく安心だろう。
「君らが手伝ったりしたのかね?」
そう人間面子に訊ねると、一斉に首を振られた。
どうやら、クーシー達が私の資材を使い、自ら作り上げた村の様だ。
「いやすごいな……思っていた以上だ。この調子ながらどんどん村を発展させていけるだろう」
実はこのクーシー達とても高い知能を備えた生命体の様だ。
これはインフラ整備を頑張ったかいがあったというものだった。
「上下水道は安定稼働。電力は、家の地下にある核融合炉で賄える……せっかくだからこちらの世界専用の通信機械でも用意したいところだが……」
嬉しい誤算に夢は広がりまくりなのだが、人間二人はポカンと口を開けていた。
「……なんかすげぇ。訳が分からねぇ」
「……順応性が高いですねクーシー達は」
「いやはや全くその通りだね。人間用のものは大きさが不便そうだから一から作らないといけないか。それで? 君達はどんな感じなのかね?」
続いてそう尋ねると研究員達の目は泳いだ。
「研究員Aの建てた家はどれだね?」
「これデス!」
「あ! こらバカ!」
クーシー達の一人が差したところを見るとそこには、布と木の枝で作ったテントが張ってあった。
「……アウトドア派なのかね?」
「いや! まさか丸投げしたらあんな普通の家が建つなんて思わないじゃないですか!? こう……キャンプ的な一時しのぎかと」
「ふーむ。それでは研究員Bは? こっちはきちんと注文したのだろう?」
「は、はい……いちおう」
しかしそこには倉庫くらいの、四角い小屋が建っていた。
「こういうところに住みたいのかね?」
「いえ! 注文したんですが……こうなってしまって」
それはまるで、マイ〇ラで初めて作った家のような仕様である。
まぁ初めて自分で指示を出すのならこうなっても仕方がないのかもしれない。クーシー達が自然にかわいい家を同じデザインでお出ししてくる方がおかしいとも言えた。
「人間なのになぁ……」
「いや! 頑張ればもうちょい行けますって! ただの勘違いって言うか!?」
「そうです! 次こそはうまくやって見せます!」
「そうなのかね? まぁ君達の家なのだから好きにすればいいがね。こちらでやってもいいと思っていたのだが……」
「「お、おまかせしてもいいですか?」」
「……もちろん。人間サイズならストックがあるよ。ラッキーだね。君達」
すぐさま声をそろえた研究員たちに、私はやれやれと肩をすくめた。
だがせっかく素晴らしい村が出来ていたというのに、異変は突然村にやって来た。
「大変デス!」
「スケルトンが来たデス!」
大慌てで走ってきたクーシーは、私達に向かってそう叫んだ。