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第10話理想郷計画

「なるほどなるほど……了解した。ならば早速ここを地上の楽園へと変えてみせようじゃないか」


「「「「ワオーン」」」」


 私が宣言すると。クーシー達が盛り上がる。


 期待に応えられるよう理想郷計画とでも名付けようか。


 しかし形にすると言うのなら、この私の力をもってしても時間は必要であった。


「君達にも期待しているよ。創造性こそ人類の長所だと私は信じているからね」


「ハイヨロコンデ……」


「わ、私も頑張ります」


 研究員Aは死んだ目で。そして少女の方は妙に入れ込んで応える。


「うん。よろしく。では女の子の君も研究員としておこう。Aはあげてしまったから……Bだね」


「B……」


「なんで不服そうなんだよ」


「いえべつに」


 とんでもなく微妙な顔をされてしまったが、暫定ならこんなものだろう。


 これから大々的に始まるプロジェクトを早期に終わらせるためには効率的に行きたい。


 ひとまず2人の序列はクーシー達の下からスタートである。




「というわけでまずは、クーシー達をメインにした快適な村を作ろうと思う」


「……あの、貴方は人間? なんですよね?」


「そうだが? その疑問いるかね?」


 研究員Bの質問にドクタークレイは首を傾げた。


 どこから見ても人間だと思うのだが?


 しかしそこでドクター閃いた。


「ああしかし、天才マッドサイエンティストは人間を超越しているのだと考えると、その限りではないのかもしれないが……」


「いえ、それはよくわかりませんけれど……あなたは人間なのに、クーシー達中心の村づくりをするんですか?」


「ああ、そこ? もちろんそうだとも。ご近所の治安は良い方がいいだろう?」


 すでに家と研究施設は準備済み。後はお散歩できるご近所が、未開拓の森だけというのはいささかバカンス味がなさすぎる。


「ちょっと外に出るだけでアドベンチャーではね。クーシー達も襲撃されたばかりで村の建て直しは必要だ。ならばいっそと言ったところだ。まぁ、私の好みに多少寄るところは目を瞑ってもらいたいものだが」


「そ、そうですか……」


「難しく考えないでいいよ。君達の家も好きに作って構わないからね」


 言われて目を白黒させているところを見ると、私の言った言葉の大半は正確に伝わっていなさそうだった。


「いやね。村って言っても魔境でってなると大したものは出来ねぇと思いますよ?」


 無茶ってもんでしょう?と内心小ばかにしているのが透けて見える研究員Aを見れば一目瞭然だった。


 こいつはいよいよ見せつけてしまった方が早そうだと私はそう結論付けた。




 さてさて忙しくなってきた。


 まずはクーシー達の生態を知るために私達はクーシー達の暮らす居住区に向かう。


 確認した彼らの元住居は崖に穴を掘った構造の洞穴で、かろうじて扉っぽいものがあるだけの簡素な作りだった。


 しかもすでに襲撃された後でほとんど破壊されていた。


「うーんこれはひどいな」


「襲撃はしょっちゅうデス!」


「またいい場所見つけて穴ホルデス!」


「お手軽お引越しデス!」


「逞しすぎる。だからこその簡素な住まいというわけか」


 どうやらクーシー達はこの辺りでそう強い種族ではないようだ。


 移住前提の撤退のしやすさは、彼らなりの生存戦略と言うことなのだろう。


「しかし。私の庇護下に入る以上は、それでは困る」


「じゃあどうするデス?」


 首をかしげる一匹のクーシーを抱き上げて私は宣言した。


「君達が使いやすい家を作ろう。次の家は長期滞在を考えてもらうよ」


「それじゃすぐ逃げられないデス」


「逃げる必要はない。私といる限りはね。まず整地と、区画整理からしていこうか。ある程度均し終わったら施工を開始しよう」


 思えば元居た世界では、ずいぶんと長く一か所に長くいられない生活を続けていた。


 私は少しだけクーシー達に感情移入してしまったのかもしれないと、人間っぽいことを考えてしまった。


 そして楽しくなってきた私がクーシー達に貸し出したのは、元居た世界ではベストセラーにもなった名機である。


「さぁ道具を出すよ。使ってみてくれたまえ。きっと気に入るはずだ」


 ドクタークレイの大発明。異次元倉庫は、異世界転移にも応用した空間に作用するゲート技術の副産物だ。


 こことは違う別の空間に無限を作り出し、収納できる。


 その中に研究所ごと入れる事さえやってのけているわけだが、やろうと思えば無限に物は収容できる。


 中から物を出すこともすこぶる簡単。


 私はさっそくゲートを大きく開き、それを纏まった数取り出すと、ギャラリーはそれはもう盛大に驚いてくれた。


 次々に虚空から出現する巨大機械は、土木建築用に設計された私デザインの人型機械だ。


「汎用性作業機械……まぁロボットスーツでいいだろう。これをまずは進呈しよう。土木作業から移動の足、そして戦闘までこなせるロボットスーツだ」


「ワン!ワン!ワン!ワン!」


「いい返事だ。君達が二足歩行で五本指なのは助かったね。わずかな調整で君達にも使いこなすことが出来るだろう」


 目がキラキラしているところを見ると、クーシー達は自分たちの乗る機械を大いに気に入ってくれている様子だった。


「「「……」」」


 対してそんな様子を唖然として今いち受け入れられないのは人間組。


 君達は少々頭が固いようだね?


 彼らはもう少しなにも考えず、あるがままを受け入れることを学ぶべきだろう。


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