パイソンカマムシの娘
産んだ。
お腹を痛めて、私は産んだ。
初めての出産、初めての我が子。
「元気な女の子ですよ」
初めて会う、我が子は、パイソンカマムシだった。
三万ある個眼が私を見つめ、私を頼っていた。
「いやあぁぁあ!」
泣き叫ぶ私に看護師さんは、落ち着かせようと笑顔で言った。
「赤ちゃんって、みんなこんなものなんですよ。初めて見るお母さんの中には驚かれる方もいらっしゃいますけど、触れ合ううちに、そのうちかわいくなってきます」
虫 虫 虫 虫
あたしはお母さんに嫌われてる。
幼い頃から、そんなことはわかってた。
でも17歳にもなったら綺麗になりたいじゃない。
鏡の前で、私がお化粧をしてたら、後ろからおぞましいものを見る目でお母さんが、言ったのだ。
「虫が……お化粧してる!」
その横で、15歳になったばかりの妹のコロンが、あざけるように笑う。
「ここみお姉ちゃん、ブスなんだから、お化粧なんかしたって無駄よ」
なんで……?
あたし、そんなにブスなの……?
どうしてみんな、あたしのことを嫌うの……?
虫 虫 虫 虫
ある晩のことだった。
喉が渇いて、何か飲もうとキッチンへ歩いていると、お母さんがお父さんに話しているのが聞こえた。
「ここみを見てるとイライラする……! 気持ち悪いのよ! だってあの子、パイソンカマムシじゃない!」
「何を言うんだ、花名美。ここみはパイソンカマムシなんかじゃないぞ。人間だ。ブスだが、虫なんかじゃないだろう」
「どうしてみんなにはここみが人間に見えているの? あの子、虫じゃない! しかも世界一気持ち悪いパイソンカマムシじゃない! 私、あの子のこと、とてもじゃないけど愛せないわ、安古市さん!」
「我慢しろ。ブスすぎて虫に見えてしまうのはわかる。しかし、こんな話をもし、ここみに聞かれてしまったら……」
聞きました。
しっかりと、聞きました。
イグアナの娘だったら優しすぎて、ただ悲しむだけだろうけど──
暴れてやる。
虫 虫 虫 虫
あたしの家庭内暴力は嵐のように過ぎ去った。
金属バットで一殴りしただけでお母さんは死んでしまった。人間がこんなに脆いものだなんて……。
棺桶に入ったお母さんを見て、あたしはびっくり仰天した。それは菊の花に包まれた、一匹のパイソンカマムシだった。
「なんだ、あたし……お母さんに似ただけじゃない」
パイソンカマムシだったから、お母さんは金属バットで一殴りしただけで、緑色の体液を流し、潰れて死んだのだ。
はは……
ははは……
はははははは!
あたしは酒を飲んだ。
何もかもを忘れて眠るためにはハイボールがいっちばーん!
少年院で飲む酒はうまし!
この作品はフィクションであひ、登場人物は実在のペンネームのひととは……ゴニョゴニョ