星屑日記(四)
今回の試合から大幅にコスチュームを変えた。すべてをピンクに統一したのだ。そして二つ名も〝愛戦士〟と改めた。
これは取りも直さず、タノスケが愛に目覚めたが故である。
愛無き言動により散々妻子を苦しめ、それで絵に描いたような因果応報方式でもって現在、暗黒漆黒の谷、その、一寸の光も届かぬ孤独の底の底でもって喘いでいるバカの典型たるタノスケが愛を語るなぞ、いわんや、愛を武器に戦うなぞ、誰が聞いても片腹ストマックエイクに違いあるまい(最近タノスケは英語アプリで英語学習を始めた。英語を学ぶのは中一の時、英検五級の試験に落ちて英語が嫌いになって以来である。嫌いなのに何故始めたのかといえば、たまに外国の選手と話す機会が生まれたからという、それだけの理由である。んなわけで、ストマックエイクとか、こうしてふいに流暢な英語が出てしまうというわけなのであるベリーベリーソーリープリーズアゲイン)。
だがしかし、タノスケはこれから愛戦士として戦っていくことにしたのだ。それは、目の前の人、それが仮に敵だったとしても、断固として愛を注ぐ、そういう決意、姿勢、生き様、信念こそが、結果として今は離れて暮らす妻子(冬美、夏緒、春子)へと愛を伝えることとなるとの光り輝く天啓をある日突然に受けたからなのである。
んで、実際に十九日の試合で愛戦士スタイルで戦ってみたのだが、結果どうなったかといえば、対戦相手には大いにキモがられるし、観客席からは「ヘ、ン、ターイ! ヘ、ン、ターイ! ヘ、ン、ターイ!」コールが起こるし、試合後、会場にいた子どもたちに対し、決め台詞の「愛、足りてる?」を発しながら笑顔でハグしようとしたが全力で逃げられるしで、思っていたのとは全く違う、こんなはずじゃなかった展開になってしまった……
が、しかし! が、しかし! が、しかし!
愛戦士タノスケは挫けない!
西村賢太が歿後弟子道を歩む後ろ姿、その静かに燃える後ろ姿がタノスケの眼にはいつも貼り付いているから! それがいつもタノスケを支えているから!