表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カミバカバッカ  作者: 84g
第一話『奇妙奇兵』
8/11

#8:王者・相撃つ。

ドラ息子チーム 対 女子高生&女刑事チーム

葉山礼司✕―〇伊藤ステラ

田川末男✕―〇伊藤ステラ

洞須ニコラ〇―✕伊藤ステラ

洞須二コラ✕―〇牧門奇兵

神木長重郎・―・牧門奇兵

★☆★☆★★☆★織宮翼




「パァアアアアアアリィイイイイイイイっっ!

 まさかの対戦実現! 最新の王者! 対! 伝説の王者!

 実況はこの俺、アッチョ! 解説はこの人を置いて他にない!

 神木長重郎の師匠であり、牧門奇兵がはじめて世界大会を制したときにも戦った因縁の女傑、洞須二コラさん!」

「よろしくお願いします」


 テレビ中継めいたやりとりを傍目に見つつ、隣に強引に作っただけの解説スペースの横、一台のノートパソコンをパイプ椅子に座って四人で観戦することになった一同。

 当事者である葉山とステラを両端に、間に田川と翼が座り、その椅子の間隔も部屋の広さとモニターが見えるギリギリの距離を開いている。


 壁一枚隔てた先の、モニターの中のふたりは互いのデックをシャッフルを終え、サイコロを振る。

 出目は長重郎。先攻を取り、互いに7枚のカードを引いて初手の内容をチェックする。


「先手、キープ」

「3枚リロードだ」


 先手の長重郎は引いた7枚でゲームをすることを選択したが、後手の牧門はリロードを選択。

 カオスキーパーズではゲーム開始時の手札に不満があればリロードを選択できる。


 リロードは二種類。

 手札にコア専用カードがないか、手札にコア専用カードしかないときに公開し、手札7枚を全て戻して7枚引き直す、リセットリロード。

 今、牧門がやっているのは、任意の枚数をデックに戻し、戻した枚数より1枚少ない枚数を引く、チョイスリロードだ。

 リセットリロードは1度しかできず、チョイスリロードは何度でもできるが、その都度、ゲーム開始前から戦力である手札が減っていくのだ。


「2枚引いて……キープだ」

「それなら……」

『よろしくお願いします』


 ふたりが声を揃え、長重郎は7枚、牧門は6枚の初期手札を抱えてゲームを開始した。


「俺のターン、赤紫のコインコアをセットし、ターン終了する」


ブラッド・コインのコア 

特殊コア

1ターンに1度、以下の効果からひとつを選択して発動できる。

:コインの乗っていないこのカードにコインを乗せ、赤エナジー1点を発生させる。

:このカードからコインを取り除き、紫エナジー1点を発生させる。


 赤と紫を交互に出せる2色コア。

 ただ置いただけの1枚に、モニター越しに翼とステラの表情が曇り、アッチョは狂喜の大音声を配信に乗せていく。


「こぉおおれぁぁはああああ! このカードはぁあああああ! キタアアアア!」

「え、な、なんだよ? ただのコアカードだろ?」

「世界大会観てないの? あれは……この前の大会で神木さんが優勝した赤紫(ブラッドカラー)中速(ミッドレンジ)デッキのカードです……!」


 カードのプレイ環境の下調べの足りてない社長息子は、ステラの指摘を受けてもよくわかっていないようだった。


長重郎(あのこ)は色んなデッキを使うからね。

 そのときに一番強いデッキを使うのがポリシーの子だからアグロやコントロールを握っているときも多い。

 けど、あのデッキは……ブラッド・ミッドレンジを使っているときのあの子は――ちょっと、強いわね」

「師匠の二コラさんからのお墨付きいただきました! さあ! 対する牧門奇兵の初手に期待が集まります!」


「俺のターン、ドロー、《ガーデンの奇襲コア》をセット、緑エナジーを出し、《訓練兵》をプレイだ」


ガーデンの奇襲コア

特殊コア

1ターンに1度、緑か紫エナジーのいずれか1点を生み出す。

このカード以外のコアカードを3枚以上コントロールしているなら、

このカードは戦場に出たターンにエナジーを生み出すことができない。


アーマーリザーズの訓練兵 【緑】

属性:爬獣・トカゲ・獣人・戦士

あなたがこのカードよりAPかBPの大きいモンスターを召喚したとき、このカードを1段階強化する。

また、このカードが破壊される場合、2段階弱体化させることで戦場に残しても良い。

AP100/BP100


 やる気に溢れるトカゲ戦士の《訓練兵》が戦場に降り立ち、“他の仲間が来たら強化されるであります!”と宣言しつつ戦場で手に持っていた槍を素振りしている。

 モンスターを横に並べて相手を殴り倒す。牧門の勝ちパターンだが、長重郎は見逃さない。


「《コインコア》にコインを乗せ、赤エナジー生成。そのエナジーで《訓練兵》を対象に、《赤い稲妻》だ」


赤い稲妻 【赤】

魔法カード

奇襲(このカードは任意のタイミングでプレイできる)

モンスター1体に300ポイントのダメージを与える。


 迸るエネルギーがトカゲ戦士を捉え、一撃で消滅させた。

 横並べは許さないという確固たる意志の表れだった。


手番を貰う(テイク)、ドロー、コアをセットし、2エナジーから《真夜中のスカルジャグラー》をプレイ」



真夜中のスカルジャグラー 【1赤】

属性:人間・道化・暗殺者

猛毒(このモンスターからのダメージが与えられたモンスターはBPに関係なく破壊される)

このカードが召喚されたとき、手札を1枚捨て、カードを1枚ドローする。

AP300/BP100


 トゲの付いたナイフに、見るからに毒々しい紫色の液体をぬりたくったピエロが狂気じみた笑顔でナイフでお手玉をしているが、対照的なまでに冷静に長重郎は効果で捨てる手札を選んでいるようだった。


「テキストに従い、1枚捨て、1枚引く……捨てたのは《思考の押収》だ」

「了解した。対応はない」

「このままターン終了(パス)

「俺のターン。ドロー。《鉄鱗アナコンダ》を召喚、ターン終了だ」


鉄鱗のアナコンダ 【紫緑】

属性:爬獣・蛇

あなたのモンスターが強化を受ける場合、1段階多く強化される。

APP200/BP300


手番を貰う(テイク)、ドロー、コアをセットして《赤い稲妻》を《アナコンダ》を対象にプレイする」

「破壊される」


赤い稲妻 【赤】

魔法カード

奇襲(このカードは任意のタイミングでプレイできる)

モンスター1体に300ポイントのダメージを与える。


 汎用性の高い除去カードの2枚目が、リプレイのように牧門のモンスターを焼き払う。

 これで牧門の場にモンスターはなくなり、続く攻撃宣言を受け、無人の荒野をナイフジャグリングの狂人が駆け抜けた。


牧門:LP2000→LP1700


「戦闘終了。2エナジーから《真夜中のスカルジャグラー》をプレイしテキスト。1枚引いて1枚捨てる……捨てるのは《凡庸の排斥》だ」


 リプレイのような展開が続く。

 長重郎は先ほどのターンと同じジャグラーを召喚し、捨てたカードは先ほどの《思考の検閲》と同じく手札破壊カード。

 これで長重郎は2枚の手札破壊カードを破棄していることになる。



思考の押収 【紫】

魔法

このカードの発動コストとして、200ポイントのライフを支払う。

対象のプレイヤーの手札を公開する。

対象となったプレイヤーの手札からコアではないカード1枚を指定し、墓地へ捨てさせる。


凡庸の排斥 【紫】

魔法

対象のプレイヤーの手札を公開する。

対象となったプレイヤーの手札から1以上4コスト以下のネームドでもないカード1枚を指定し、墓地へ捨てさせる。

(コアカードのコストはゼロであり、捨てさせることはできない)



「これは……どう見ますか? 二コラさん、《思考の押収》は制限カード、デッキに1枚しか投入できない強力カード。それを捨てていましたが……」

「長重郎のゲームプランが明確、ということですね」

「ゲームプラン、というと?」

「長重郎が出している《ジャグラー》は猛毒持ち、牧門くんがどれだけモンスターを大型化させても相打ちを取りやすい。

 対策だったはずの破壊を無効にできる《訓練生》も早期に除去されたし……長重郎の手札にはまだ除去が2枚有る」


 モニターの隅、ワイプには手元カメラから飛ばされた長重郎の手札が表示されている。

 ニコラの話すように、そこにはモンスターを確実に破壊する除去カードが握られている。


「モンスターを横並べさせ、それぞれの効果を重ね合わせて育てる戦術はケアできる。それなら手札を覗く必要もない……ここから見ると、そうなんだけど、それを迷わずに実行できているのは、さすが長重郎とは思うわ」

「ハンデスを残すべきだった、と?」

「奇兵のデッキの全容がわからないし、手札を覗いて確認をしたいというのは本音ね。

 ただその誘惑を断ち切り、2枚とも捨てて除去での盤面制圧のプランに体重を掛けた。

 我が弟子ながら基本と応用、そして自分を信じるプレイングができていると思うわ」


 それでも、それでも牧門なら。牧門奇兵ならここからの何をしてくるかわからない。

 そんな期待が画面越しに世界中に広がるが、8ターン後。

 早期というわけではないが、決して早くもないターンの後だった。


「サレンダーだな。二試合目をやろうぜ」


 静かにふたりしかいない席で次のゲームの準備がはじまるが、配信を見ている層は大いに沸いていた。

 まさかの展開。あまりに早すぎる奇兵の敗北。











評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ