境目
シャワーを浴びてドアを開けたら、目の前にジフンがいた。
『朝帰りだ。』
ジフンがニヤニヤ笑いながら日本語で話した。
「またしょうもない日本語覚えたな」
俺はあくびするフリをして口元を手で隠した。
気を抜くと、今朝までのことを思い出して顔が緩みそうになる。
「今日、試験なのにテウはずいぶん余裕だね。」
「まー試験は積み重ねだから、焦ってもな。」
「あの画像何だったの。背景LOVEのやつ。」
そういえば、昨日嬉しすぎてSNSに載せたんだった。
思わずニヤける。
「ヘヘ…。リリと付き合うことになった。」
「マジか。え、それで朝まで?」
「なりゆきで…。」
「寝たの?」
「いいだろ、もう。何だって。先輩は?」
「まだ寝てるよ。午前だけ休みだって」
先輩は結局うまくいったのかな。
本当は30分だけ帰って来るなと言われたのに、半分嘘ついてしまった。リリが韓国語分からないのをいいことに、我ながら姑息だと思う。
まだ一緒にいたいと正直に言っても、リリだったら許して家に上げてくれたかもしれないのに。
もう少し年上らしい態度取らないとダメなのは頭では分かっているつもりなんだけどなぁ。
何だか焦ってしまって、いい人でいられない。
先輩が起きてこないので、とりあえず先に2人で朝飯を食べることにした。
先輩がいなくても目玉焼き丼が定番化している。ジフンが目玉焼きを作る間に、俺は器にご飯を盛った。味付けは、塩、ケチャップ、ソース、マヨネーズと色々試したけど、一周まわって醤油に落ち着いた。
何度食べても旨い。いや、今日はきっと何を食べても旨い。
食べ終わった頃に先輩は起きてリビングに来たけど、一言も話さず不機嫌そうにソファに転がって、もう一度寝始めた。
これは…昨日失敗したんだろうな。
ジフンに目くばせをして、静かに家を出た。
玄関のところでスマホを見た。
シャワーを浴びる前にリリにメッセージを送ったけど、まだ返信がない。既読スルーされている。
既読スルーは前からだし、少なくともバイトが終わったら返事くれるはず。でも付き合って2日目で、ちょっと冷たくないか?
俺のメッセージが悪いのかな。
オム:昨日はありがとう。これからもよろしくね。
疑問系でもないし、返信しづらい?
それとも、大好きとか愛してるとか書くべきだった?
こんなこと比べても仕方ないけど、元カノだったら既読スルーはありえなかった。
でもリリだから許せちゃうんだよな。
何されても可愛くて仕方がない。
寂しいは、寂しいけど。
俺だって忙しくて返信出来なかった時もあったし。
いやいや、でも!付き合ったら、コレはひどいよな?
許すと許さないの境目をモヤモヤしながら、ジフンと学校に向かった。




