キス2
なぜだろう?
初めてサーフィンをした日のことを思い出した。
海の上で波が来るのを待っていた。
「今だよ。」
サーフィンの先生にトンッと押されて、無我夢中にパドリングをすると、海は下の砂浜が見えるくらい透き通っていて、私と同じ方角に無数のキラキラした小魚の群れが勢いよく泳いでいた。
全然怖くない。
波で押し出される感覚を全身で受け取って、勇気を振り絞って前を向き、手を離してボードの上に両足で立つ。私がたどり着くはずの波の先には、海岸を散歩する人、海で泳ぐ人たちが小さく見えた。
波に乗るってこういう感覚なんだ。
いつもは海岸からサーフィンする人を眺めていたのに、今は逆の景色なのが不思議でたまらなくて、だけど最高に気持ち良かった。
一瞬で砂浜に辿り着いて、油断していたらボードが波と一緒に戻りそうになった。リーシュコードで強く足を引っ張られて、あせってボートを掴んで、バシャンッと身体ごとひっくり返ってしまった。溺れるかと思って焦った。
あれ?私何をしているんだろう。
オムちゃんは付き合わないと言った。
それなのにキスしている。
なんで?なんで?
待って、ここ外だよ。
さっきまでニンニク食べたよ。
私は突き放そうとオムちゃんの身体を両腕で押した。
「…っやだ!」
「아…아, 미안…귀여워서 나도 모르게 … 정신차려보니…」
オムちゃんが何か言ったけれど、日本語ではなかった。
たぶん2人とも正気ではなかった。
オムちゃんは私をぎゅっと抱きしめて俯いた。私も恥ずかしくて顔を上げられず、下を向いてしばらく固まっていた。
雨上がりの静かな公園は、遠くで車が通り過ぎる音が聞こえるくらい静かだ。
自分の胸の音だけが激しくドキドキと鳴っているのが分かる。