キス
抱きしめても、リリは泣き止まない。
頭を撫でてリリが落ち着くのを待った。
だけど、すればするほど自分の方が落ち着かなくなり、リリの耳から頬もゆっくり何度も優しく触れた。柔らかい。触るたびにリリの耳につけたピアスがゆらゆらと揺れて、俺の手を誘っているかのようだ。可愛い、可愛い、可愛い。
不謹慎だけど、涙が溜まった瞳が綺麗で、少しでも力をこめたら折れちゃいそうな身体も、すごくすごく可愛い。泣くのを我慢しているのか、ぎゅっと唇を閉じているのさえも愛おしい。頬を撫でるだけじゃ欲求が収まらず、思わずリリの唇の端から端までをゆっくりと右の親指の腹で触れた。
こんな時に最低な欲望で頭がいっぱいになった。この小さくてぷにぷにした唇を食べてしまいたい。リリの口をこじ開けたらどうなるのか試してみたい。いやいや、流石にそれは許してくれないよな。自分が自分じゃないみたいに感情が暴走している。
リリの唇を避けるように耳へ、瞼へ、額へ、頬へ、首へ何度も丁寧にキスをした。何度も何度も頭を撫でて、耳元で可愛い、好きだと俺の気持ちを伝える。足りない。唇にキスしたい。全然物足りない。あぁ、これ以上は我慢できない。こんな可愛い人を前にして、理性とか正義とか絶対に無理だ。完敗だ。
「ごめんね。」
俺は軽く挨拶みたいに唇に触れて、それだけじゃ当然終われず、リリの上唇をむさぼるように吸って、柔らかくて温かい感触を何度も何度も自分の口の中で確かめた。すげぇ気持ちいい。
少し目を開けてリリを見たら、頬がピンクに染まっている。首すじから鎖骨のラインがそそる。何でこんな男を誘うような無防備な服を着ているんだ。言葉に具現化できない感情のもどかしさをぶつけたくて、必死になってリリの後頭部、うなじ、肩、背中、腰を順番に撫でていく。全部俺の物にしたい。
リリが、ぎゅっと抱きしめ返してきたので、たまらず下唇も上唇と同じように執拗に吸って可愛がってあげた。感情が爆発しそうだ。呼吸が荒くなる。なんでこんなに可愛いのか。好きだ。リリが大好きだ。
「リリ、お願い…。口開けて。」
俺はもう待つこともできず、半ば無理矢理、舌をねじこんだ。
途端にリリが可愛い声を出して、頭の中が真っ白になった。
無我夢中でリリの舌を見つけて、自分の口にふくんで転がした。舌先が交わるたびに、全身を駆け巡るように指先、足の先まで刺激が昇ってくる。
「…っやだ!」
リリの大きい声で、現実に戻った。
「あ、あ、ごめん。可愛くて気がついたら止まらなかった。ごめんなさい。」と言ったつもりだけど、それが日本語で言えたのか韓国語が出たのか分からない。
自分がしたことを思い返したら、がっついた10代みたいで超恥ずかしい。いや今どき10代でもこんなこと強引にしないだろうな…。
ちらっとリリを見たら耳まで顔が真っ赤で、瞳がとろんとしていた。ヤバいくらいにエロい。
これ以上見ていられなくてリリの顔が見えなくなるように、ぎゅっと抱きしめた。