表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
乙女ゲームのモブに転生したので、男装薬師になって虚弱な推しキャラを健康体(マッチョ)にします~恋愛? 溺愛? 解釈違いです~  作者:


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

41/45

魔王の復活と乙女ゲームのシナリオ

 美女がパッと扇子を広げる。そこには東にあるミギ国の王家の証である二頭の獅子と中央に薔薇の紋章。


「私はバルバラ・リュ・ミギ。ミギ国の女王よ」


 その凜とした姿に気圧され、人々の足が自然と下がる。

 ただ一人、今にも死にそうなほど顔を真っ青にしているハーパコスキ伯爵を除いて。


(顔を青くするぐらいなら、気絶でもしてくれないかなぁ)


 突然の女王の登場に驚きながらも、私には関係ないと他人事のように眺めていた……けど。


「三年前、(わたくし)の国で一部貴族によるクーデターが起きたわ。その時、私たちはこの国の王の手を借りてヒダリ国へ亡命したの。ただ、突然のことで子どもたちは連れていけず。私は反撃の準備をしながら、ミギ国に残してきた子どもたちのことを心配したわ。それで、とある盗賊にクーデターを起こした貴族の所にいる私の子どもたちを、誘拐して私の下に連れてくるように依頼したの」


 私はバルバラ女王の話に引っかかりを感じた。


(ヒダリ国へ亡命……子どもたち……とある盗賊……まさかね)


 必死に否定する私。それでも、心の中でダラダラと汗が流れる。


「盗賊は優秀で、子どもたちをすぐに誘拐してくれたわ。でも、この国を抜ける途中、慣れない旅で子どもたちは体調を崩して動けなくなった。困っていたら、通りすがりの薬師が食料と薬をくれたというじゃない。おかげで子どもたちは回復。旅を再開して私の下に来ることが出来たの。愁いがなくなった私は心置きなくクーデターを起こした貴族を潰して、ミギ国に戻ったわ」


 スッキリした笑みで満足そうに話すバルバラ女王。クーデターを起こした貴族は髪の毛一本も残っていないかも。


 ゾクリとした寒い空気がホールを覆う。


 そこで氷のような水色の瞳が動いた。切れ長の目が私の胸にむけられる。その視線の先には静かに輝く紫の宝石のブローチ。


「そこのお嬢さんが付けているブローチ。それは通りすがりの薬師に謝礼として贈ったモノよ。そこのお嬢さんがブローチを付けている、ということは、私の子どもを助けた薬師の親族、ということでしょう? つまり、その薬師が三年前にカフェで会っていた盗賊の頭領は、私の子どもたちを助けた報酬を渡していた、ということ。その幻夢灰(ファントム)という毒とは無関係よ」


 バルバラ女王が妖艶な微笑みを浮かべる。その美しさと大人の色気に女の私でもグラッとしてしまう。

 返事を忘れて見惚れていると、隣にいたアンディ嬢が私の腕をつねった。


「痛っ!」

「レイラお姉様!」


 ムッと口をとがらせ拗ねた様子のアンティ嬢が私を睨む。


「私以外の女性への浮気は許しませんよ」

「浮気!? いや、今はそれどころじゃなくて!」


 私は視線だけを兄にむけて小さく頷いた。それだけで兄も頷く。さすが双子! 理解が早い!

 兄がバルバラ女王に頭をさげた。


「すべてはバルバラ女王のご説明通りにございます」


 顔を青くしていたハーパコスキ伯爵が兄に怒鳴る。


「なっ!? いい加減なことを言うな! なら、何故すぐにそのことを言わなかったのだ!?」


 頭をあげた兄がハーパコスキ伯爵に顔をむけた。


「隣国の王族に関わることを、私のような下賎者が勝手に口にするわけにはまいりませんから」

「クッ!」


 平然と言い訳をする兄。役者になれるぞ!

 私が心の中で兄に拍手喝采していると、アトロがハーパコスキ伯爵に訊ねた。


「これでヤクシ家の子息が盗賊の頭領と取引していた内容は分かったわけだが……ハーパコスキ伯爵は何故、三年前にこのようなことがあったのを知っていたのだ?」


 その場にいる全員から不審な目が集まる。

 全身から滝のような汗を吹き出しているハーパコスキ伯爵が苦し紛れに叫んだ。


「い、今は私のことより、ルオツァラ公爵一家に毒を飲ませた犯人について議論すべきだ!」


(誰のせいで話が逸れたと思ってるの!)


 叫びたい衝動を抑えていると、アトロが仕方ない、と本題に戻した。


「では、ルオツァラ公爵一家が飲まされたという幻夢灰(ファントム)という毒。それだけ厳しく制限された毒ならば、入手できる人物は限られるし、そこから容疑者を捜すはずだが、何故しなかった?」


 自分で墓穴を掘ったハーパコスキ伯爵が顔を強ばらす。


「ですから、この毒がそこまで重要とは知らず……」


 口ごもるハーパコスキ伯爵にアトロが追い打ちをかけた。


「そういえば、貴殿が王に提出した毒の成分表には幻夢灰(ファントム)の文字はなかったようだが、どういうことだ? もし、幻夢灰(ファントム)の文字があれば、王が気づかれるはずだ」

「そ、それは……その報告書が偽物だからだ! 誰かが私を陥れようと偽の報告書を作ったのだ!」


 アトロが私が持っている報告書を見た後、王に進言をした。


「では、この報告書が本物か偽物か鑑別をするのはいかがでしょう? あと、これまでの捜査で不審な点が多いので別の者による監査を入れるのは、どうでしょうか?」


 王が大きく頷く。


「そうだな。ハーパコスキ伯爵を担当から外し、ルオツァラ公爵一家毒殺未遂の捜査のやり直しを命ずる」


 王の決定にハーパコスキ伯爵が声を漏らす。


「なっ!?」


 その声に即座にアトロが反応した。


「王の意向に不満が?」

「い、いや……」


 気まずそうに顔を背けるハーパコスキ伯爵。


 その光景に私はホッと息を吐いた。ちゃんとした捜査がされれば、祖父はすぐに釈放されるはず。


 ようやく見えてきた希望を感じていると、疲れた腕に温もりが触れた。顔を隣にむけると、私以上に安心した顔のアンティ嬢が見上げている。

 私は笑顔で心から礼を言った。


「ありがとうございます、アンティ嬢。助かりました」

「いいえ。レイラお姉様は私の体を治してくださいました。お兄様も分かりづらいとは思いますが、ヤクシ家に感謝しております。その恩を少しお返ししただけです」


 その言葉に私はハッとした。


(前世の私はいつも苦しくて、辛かった。だから、少しでも同じ思いをする人を減らしたいと思って薬師をしていた。それが、こんな風に繋がって広がるなんて……)


 感慨に耽っているとアトロがやってきた。


「その報告書の真偽を確認するため鑑別する」

「はい、よろしくお願いいたします」

「お兄様。くれぐれも無くさないように、お願いいたしますわ」


 ここでアンティ嬢がコッソリと囁く。


「私が依頼して盗賊がレイラお姉様に届けた大事な報告書ですからね」

「え? アンティ嬢が?」


 驚く私にアトロが小声で言った。


「わかっている。それに、この破棄されかけていた報告書を見つけたのは私だからな」

「ふぇっ!?」


 まさかのことに呆然としている私からアトロが報告書を取る。

 その時、ハーパコスキ伯爵が狂ったような高笑いをあげた。


「私の計画を台無しにしおって! こうなったら、強硬手段だ!」


 ハーパコスキ伯爵が巨体を揺らしてアトロに体当たりをする。


「何を!?」

「キャア!」


 アンティ嬢の悲鳴とともに私の体が引っ張られた。


「えっ!? な、なにっ!?」

「騒ぐな!」


 ハーパコスキ伯爵に背後から体を押さえられ、首元にナイフが突きつけられる。


(どうやってナイフを持ち込んだの!?)


 今にも私を刺しそうな気配のハーパコスキ伯爵。背後に視線をむければ、憤怒に顔を染めている。


「それも! これも! おまえが最初にブルーサファイアのネックレスを受け取らなかったからだ! こうなれば、全世界を支配して、おまえを手に入れる!」


 まったく話が見えない。


「世界!? なんなの!?」


 ハーパコスキ伯爵がナイフを持っていない手で懐から収納袋を出した。


(なんで収納袋が!? まさか、警備兵に賄賂を渡して持ち込んだ!?)


 私にナイフを突きつけたまま、器用に収納袋からグラスのような形をした黄金の杯を取り出す。凝った飾りと繊細な模様が彫られているが、年代物と分かる古さも帯びている。

 ハーパコスキ伯爵が黄金の杯をナイフに近づけた。


「この杯を血で染めれば魔王が復活する!」


 ここで私は乙女ゲームのシナリオを思い出した。


 王子の二十歳の誕生日に魔王が復活して、主人公(プレイヤー)が召喚される。でも、どうやって魔王が復活したのかは不明だった。前触れなく、突然復活したようなシナリオだったから。

 まさか、裏で誰かが復活させていたとしたら……


(まさか、ここで乙女ゲームのシナリオが始まるの!?)




よければブックマーク、評価☆をポチッとお願いします!(*ノ・ω・)ノ♫

はげみになります!«٩(*´∀`*)۶»

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ