宿泊と魔石の可能性
のんびり回にしたかった。
短めにするつもりが長めに書いてしまった...
俺はそのまま今日泊まるために宿を探しに行った。
宿を探していると結構いい宿を見つけた。
外見は若干古いが大きめの宿である。
憩いの泉という大きな看板が下げられた宿に俺は入った。
中は結構多くの客で賑わっていた。ぱっと見た感じ客はほとんど冒険者だった。
全員それなりにいい装備をつけているようでお金を結構持っているようだ。
なるほどそれで憩いの泉か。
受付は人間のお姉さんがやっていた。だがこの世界の人では珍しく髪色が青色だった。
「今日ここに泊まりたいんですけど部屋は空いてますか?」
お姉さんは少し上の空で俺が前に立っても気づかなかったが、話しかけるとはっとしたようにして話し始めた。
「すみませんっ‼私ついボーっとしちゃう時があって、無視してるわけではないんです!お部屋に泊まりたいんですね、部屋は1部屋だけ空いています!小さい部屋ですがそれでもいいですか⁉はぁはぁはぁ...」
お姉さんは一気に喋った。そのせいで少し息切れをしていた。
「それでいいです。大丈夫ですか?」
「大丈夫です。ではこちらの鍵を。宿泊料は銀貨1枚です。」
お姉さんは息を少し整えて冷静になったのか先程のようには喋らなかった。
気づいたことが一点ある。
この宿、宿泊料が高い!
俺がゴブリン討伐の依頼で貰ったのが銀貨5枚。ギルドから貰ったのが金貨10枚。
この世界で銅貨100枚で銀貨1枚。銀貨100枚で金貨1枚だ。
前世の感覚で言うと銅貨1枚で100円だ。(でも別に前世の感覚が役に立つわけでもないのでこれは気にしないでもらっていい。)
装備を制作するのに金貨10枚全部払ったからあと銀貨4枚しかない。
まさかのいきなり金欠...
俺は少し落ち込みながら部屋へと向かった。
お姉さんは小さいと言っていたけれどまぁまぁ広くて、ギルドマスターの部屋くらいの大きさがあった。
家具は机とベッド、そしてまさかのお風呂付き‼
これは宿泊料が高くて当たり前だな。
俺は依頼の疲れを少しでも休めるためベッドで深い眠りについた。
***
わしは鬼人のデモン。昔はAランク冒険者をやっていたが今は歳で鍛冶屋をやっている。
元々鍛冶師という仕事に興味があったことと鬼人が感覚に優れている種族であることもあり、すぐに自分の店を持てた。
だが今とても難しい装備の制作に当たり作業が詰まっていた。
「あのナオトとかいう奴め。ガントレットで魔法を使えるようにしろなどふざけたことを言いおって。」
この世界では普通、剣士は魔法を自分で剣に込めて威力をあげるのに使うため魔法を使えるようになる武器などないのだ。
「だが最近はぬるい仕事ばかりだったが今回はいい仕事ができそうだ。」
だが武器で魔法を使うにはどうすればいいのか。
この世界での魔法の原理は生き物は基本すべて魔力を持っている。
生き物は魔法を使うために魔力を生み出し貯める機能と力に変換する機能を持った器官がある。
だが人間は魔力を生み出すことのできる器官しかない。
ならば人間はどこで魔力を力に変えなきゃいけないのか。
そこで魔力伝導率の高い武器を使うことで魔力を力に変換し魔法を使うことができるのだ。
魔物は魔力を生み出し貯める機能と力に変換する機能が備わっている。
だから武器がなくても竜は火を吐くことができる。
そして魔力にも適している魔法とそうでない魔法がある。
人は個人差によりどの魔法が得意か苦手かなどがある。
魔力は生き物によって性質が異なる。それによって得意不得意が決まるのだ。
(ちなみにナオトは治癒魔法だけが得意な魔力を持っているが本人はそれを知らない。)
なので武器によって魔法を使うことができるようには普通はなれない。
「なにかいいアイデアが思いつくかもしれぬし、今回はわしが装備の素材を取りに行くか。」
デモンはいつも素材を取っている鉱山にやってきた。
この鉱山は魔物の種類が多く魔物同士の争いがその死体の魔力によっていい鉱石が取りやすいのだ。
だがその分取る際の危険も跳ね上がっている。
流石にデモンも歳なので激しい動きはできないためデモンの最高傑作とも言えるゴーレムを護衛として連れてきていた。
このゴーレムはナオトの試験の際に使ったようなマネキンとは違い完璧な戦闘用として使われているためなかなか強い。
ゴーレムの見た目は人に近づけられていてデモンにゴビーと名前をつけられるほど気に入られてもいた。
最高傑作なだけあってAランク冒険者並みの戦闘力がある。
デモンは薄暗い洞窟の中に松明を持って入った。デモンも自衛用に短剣を隠し持っている。危険なのは魔物だけではないからだ。いい鉱石は鍛冶師に高く売りつけることができるため横取りを狙って盗人が襲ってくることもあるのだ。
デモンが長い洞窟の中で鉱石を取りながら進んでいた。
近づいてくる魔物はゴビーが反応し即座に倒してくれるのでデモンは鉱物を取るのに集中できた。
ところがデモンはいつもとは違うことに気づいた。
「このあたりにもいつもは鉱石があるのに今はもとからなかったかのようにない...」
あたりの岩に鉱石が一つも見当たらないのだ。鍛冶師や依頼を受けて鉱石を取りに来る人はみんな鉱石をすべて取り尽くさないのが暗黙の了解となっている。
だからこれは異常だった。
「もしかすると違法に採掘している輩がいるかもしれんな。ゴビーよ警戒態勢に入れ。」
ちょうどデモンが警戒し始めた時にそれが出てきた。
「ゴーレムか。だがいつも以上に核が多い。異常発達個体か。運が悪いな。」
デモンが遭遇したゴーレムは体の表面に複数の魔石が見えていて普通のゴーレムよりも体の作りがゴビーのように人に近くなっていた。
ゴーレムが自然に発生する理由ははっきりとは分かっていない。発生するパターンが多すぎるからだ。
今回はおそらく強い魔物同士が争いあい相打ちになり、たまたま近くにあった鉱石を魔石が取り込んでしまったパターンだろう。こういう時のゴーレムは複数体の強い魔物の魔石をコアにしているため異常発達個体と呼ばれ他のゴーレムとは一変して強いのだ。
時にAランク冒険者を倒してしまうほど。
「こうなったらやるしかないの。ゴビーよ様子を見ながらあいつの核を破壊するんだ。」
デモンがゴビーに命令するとゴビーは様子見でゴーレムを殴ろうとした。
だがゴーレムは手を前に出した。
「まずい!ゴビーよ避けろ‼」
デモンは危険を感じ取りゴビーに急ぎ命令をした。ゴビーは命令に従ってゴーレムから離れた。
その瞬間ゴーレムの手から魔法陣が現れ勢いよく炎が吹き出した。
そしてゴビーが先程までいた場所の岩をドロドロに溶かした。
「魔法が使えるゴーレム⁉まずいっ‼ゴビーよ急いで逃げ,,,」
デモンがゴビーに逃げるよう命令をしようと振り返るとそこには右腕がドロドロに溶け右足も若干溶けたゴビーがいた。先程のゴーレムの魔法は地面だけでなく避けるのが遅れたゴビーをも溶かしていた。
デモンは焦っていた。Aランク冒険者並に強いゴビーの装甲が普通の魔法で溶けることがありえないのだ。しかも魔法が使えないはずのゴーレムに。
デモンの最高傑作でもあるゴビーがこんなになってはもう使い物にならない。
デモンは苦渋の決断をした。
「ゴビー。最後にお前に命令をする。あのゴーレムを吹きとばせっ‼‼」
ゴビーはその意味を瞬時に理解し、ゴーレムに向かって右足が溶けながらも走り出した。
ゴーレムは何か危険を感じたのか逃げようとしたがゴビーがそれを許さなかった。
デモンはゴビーが盗人などに盗まれて悪用されないようにいつでも自爆できるような仕掛けをゴビーに仕掛けてあった。
ゴビーはゴーレムを羽交い締めにし自爆をした。
爆発の衝撃は凄まじく洞窟の天井や壁をも粉砕した。デモンはゴビーが自爆をする時に巻き込まれないように離れていたため無事だった。
デモンがゴビーが自爆したところに行くと大きな魔石が3つ転がっていた。ゴビーの自爆はゴーレムの装甲をすべて吹き飛ばすことができたがコアまでは破壊しきれなかった。
だがデモンはゴビーを失ったことにより悲しみを忘れ、あることを考えていた。
「この魔石...あのゴーレムが魔法を使えていたということはこの魔石に何かがあるのか。」
魔物のどこに魔力を生み出し貯めるのと力に変換する機能がある器官があるのか。
実は魔物の魔石がその機能を受け持っているのだ。なので魔石をギルドが買い取りそれをいろんなものに加工することができるので魔石の買い取りも行っているのだ。
だが魔石だけあっても普通は魔法は使えないためゴーレムも魔法が使えないのだ。魔石は魔力を力に変換することができるが魔法陣は描けない。なので別に魔法陣を描くことのできる器官が必要なのだ。
ではなぜあのゴーレムが魔法を使えたのか。
ゴーレムのコアになった魔石に魔法陣を描く機能が備わっていたからだ。
「ナオトめ。とびきりいい武器を造って驚かせてやる。」
デモンの顔にはいたずらめいた笑みが浮かんでいた。




