強キャラ(意味深)
「ここらへんに赤い何かが打ち上がったような気がしたんだけどな。気のせいだったのかな?」
オークが棲み着く森の前で、珍しい赤い目をしている女の子が一人で歩いていた。
「ねぇアカ、この辺りに生体反応はある?」
女の子は宙に浮いている赤い光に向かってそう問いかけた。
(もう少し先を進んだところに倒れてる人がいるよ。)
「分かった。危険はない?」
(危険はないと思う。)
「一応警戒はしといてね。」
(了解。)
女の子はそのまま先に進み続けた。すると先で男の人が倒れているのに気がついた。
男は苦しそうにしていた。
「アカ、この人って強い?」
それを気にせずに女の子は話し始めた。
(基礎能力ではオークより強い。)
「”スキル”は?」
(こっちは結構曲者だね。魔法は全て跳ね返されちゃうね。)
女の子は少し目を見開いた。
「私と相性が悪いね。できれば戦いたくない相手だよ。」
(出血は多いけど生きてるよ。助けるの?)
「私へのメリットがないよ。」
(でもこの人もこの世界の者じゃないっぽいけど?)
女の子はそれを聞き少し考え込んだ。
「今から治癒魔法を使うからアカも手伝ってね。」
(了解。)
女の子は男の傷口に手を伸ばし魔法陣を描いた。その後、明るい光が男の傷口を覆い傷口はなくなった。
「アカ、この人の血をなんとか補充できる?」
(ちょっと難しいけどできると思う。後で対価はそれなりのをもらうけどね?)
「分かってるって。」
女の子との会話が終わると、光は男に近づき更に強く光った。
しばらくすると光が弱まり元の光の強さに戻った。
男は苦しみが楽になったようで息が穏やかになっている。
(なれないことをやったから疲れたよ。今日はもうアカネのこと手伝えないからね。でこの人をどうする?一応どこかで治療してもらう?)
「そうする。この人の持ち物に冒険者証があったからそこに連れて行くよ。」
女の子...アカネは自身より体格が大きい男を背中におぶって、ここから比較的近い王都に向かってあるき始めた。
***
俺はオークとの戦いの後で大怪我を負って倒れてしまった。
倒れている時も意識がかすかにあり傷の痛みに苦しんでいた。
覚えていることは温かい光りに包まれ、痛みによる苦しみが消えたことだけだ。
そして苦しみから開放された俺は完全に意識を失ったのだ。
俺はギルドの医務室らしき場所で目が冷めた。
俺は硬い床で寝させられていた。周りにも同じように寝かせられている人が何十人もいた。
ここはどこだ?
俺がそう考えていると見知った顔の人がこちらにきた。
「スアットさんがいるっていうことはここは冒険者ギルドか。俺はなんでここにいるんですか?オークにやられて倒れたところまでは覚えてるんですけど。」
なんと俺が目を覚めるまで様子を見てくれていたようだ。
スアットさんは俺を心配するような顔をしていたがすぐに答えてくれた。
「兄ちゃんを見つけてくれた女の子が傷を魔法で治した上でここに運んできてくれたんだ。それがなかったら兄ちゃんは恐らく死んでたって聞いてるぞ。兄ちゃんを一人なのにも関わらずにここまで運んできてくれたんだ。後でお礼をするといいぞ。」
俺が負った怪我はなかなかな大怪我だったはずだ。それを魔法で治せるということは相当魔法を使えるということだ。その子の話だけでも聞きたい!
「その女の子は今どこにいるんですか?」
「どうした。デートにでも誘うのか?」
死にかけてた人に向かって普通にからかってきた。
先程までの疲れもあってか俺が少し苛ついてしまった。
それが顔に出てしまってたのかはわからないけれどスアットさんは正直に答えてくれた。
「すまない。あの子は兄ちゃんと話がしたいそうだからギルドの中にまだいるぞ。」
俺と話したい?もしかしてお礼をめっちゃせびられるの?
とりあえず話さないと何もわからないから行くか。例え多額のお金を要求されようとも‼
俺は医務室から出て女の子が待っているという待合室へと向かった。ここはギルドマスターの部屋とは違い遠くはなかった。今は体力が消耗しているから助かった。
俺が案内されて待合室に入ると女の子が寝ていた。赤い髪のショートカットの可愛いと言うよりきれいな女の子だった。
でっ、なんで寝てるの?
俺が疑問を持つと女の子はタイミングよく起きた。
「ん、アカありがと。」
女の子は何もない宙に向かってそう言い俺の方を向いて喋りかけてきた。綺麗な赤い目をしていた。
「怪我はもう大丈夫?」
「大丈夫。君が助けてくれたおかげで助かったよ。君が俺をここまで運んできてくれたのかい?重かっただろうに。」
「それは大丈夫。私は力も強いから。それより助けたお礼代わりにお願いがあるんだけど。」
ここで来た。一瞬全身の筋肉が強張った。いくらきれいな女の子にお金を要求されても絶対に断るんだ。
「あなたの仲間に入れてほしいんだけど。」
えっ?俺の仲間に?なんで急に。俺は困らないから別にいいけど流石に怪しい...
「どうして急に?俺と組んで君にメリットがあるの?」
ここは疑問を直接ぶつけることにした。
「それはあなたが強いからに決まってるでしょ?私は今から冒険者登録をする新人だから強いあなたの仲間になったほうが私にメリットがあるに決まってるでしょ?」
おっと、結構砕けた話し方というか,,,強い。
「なんで俺が強いって断定できるの?」
「あなたも私と同じでしょ?そのくらい分かるわよ。」
それって、この子も俺と同じ転生者っていうことか?この世界に来てから2番めくらいの驚きだった。
もちろん1番はデモンさんに借金をしたときのことだ。
「いいよ。俺も治癒魔法が使える人と一緒にいると心強いし。」
そう言うと女の子はキョトンとした顔をして言った。
「えっ?あなたも治癒魔法は使えるよ?それも私より結構強いのが。」
たった今一番の驚きが更新された。っていうか俺魔法が使えないと思ってたけど、治癒魔法が使えるの?
もしそうだったら嬉しいけど。
「でも仲間に入れてもらったし、私が使い方は教えてあげる。他の話もしたいしね。
名前を言うのを忘れてたね。私はアカネ・クリムだよ。呼ぶときはアカネでいいから。」
アカネがそう名乗ると何故かスアットさんが驚いていた。そしてアカネに食いつくように話しかけた。
「アカネさんはラストネームがあるのか?」
どうして名字があるだけなのに驚いているのだろう。アカネも少し混乱しているし。
「私はあるけど、それが普通じゃないの?」
「ラストネームを持っているのは貴族だけなんだよ。つまりこの子も...」
そっか、転生者は地球の人だからもちろんみんな名字があるけれど、この世界の人はみんな持っているわけではないらしい。俺が助け舟を出してあげないと。
ちなみに俺がこの世界の字を読めるのは日本語がそのまま使われていたからだ。
「俺もラストネームは持ってるよ。名前はナオト・マサノだから。」
「本当か?兄ちゃんも何者なんだ。やっぱり貴族か?」
俺が衝撃の事実(?)をカミングアウトしたことでスアットさんも混乱し始めた。
俺はスアットさんに詰められたことで、転生のことだけはなんとか伏せたが、それ以外のことはほとんど話してしまった。転生の件については大幅な嘘をついた。罪悪感しかない。すみません...
それを聞いてスアットさんは何かを思い出したようだった。
「つまりアカネさんも兄ちゃんも気がついたら記憶を失って倒れていたと。だからステータスがなぜか高い理由については全くわからないのか。そういえばそんな話をどこかで聞いたことがあるような...
そうだ!兄ちゃん達以外にもそんな人が何人もいたという記録があったんだ。そういう人たちは何故か冒険者を目指すがその点、ステータスが高く、何かに優れていた。だからそういう人たちは軒並みSランク冒険者になっているんだ。兄ちゃん達もそうなるかもな。まさか俺がそれに当たるとは思ってもいなかったが。」
俺はスアットさんから話を聞いて他にも転生者がいることを知った。全員なんとか誤魔化せてるようだが俺が目指しているSランク冒険者にもれなくなれているらしい。俺としては羨ましい。だが俺もなれる可能性が高いということだ。他の人が貰ったスキルにもよるけど。
「ところでアカネさんは冒険者登録をしたいんだってな。じゃぁステータスを測るからついてきてくれ。」
そうスアットさんがアカネを案内しようとした。
「いやだ。ステータスを測らないといけないわけでもないんでしょ?私を一番下のランクの冒険者として登録すればいいでしょ?私はステータスを他の人にあまり見せたくないの。」
だがアカネはそれを断ってしまった。
断られることは基本ないためさすがにスアットさんは固まってしまった。
俺は普通にアカネのステータスが知りたいんだけど、どうすればいいのかな?
同じ転生者だし、聞けば教えてくれないかな?
一人呑気に俺はそんなことを考えていた。




