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魔女と魔性と魔宝の楽園~追放された転生貴族の自由気ままな【蒐集家】生活。ハズレ前世に目覚めた少年は、異世界で聖剣もモフモフも自分の城も手に入れる~  作者: 御鷹穂積
第一章◇未来視の妹を探す、狼耳の少女

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第16話◇解決方法?




 未来視を持っているという、マーナルムの妹。


 そんな破格の異能(スキル)がありながら、村の壊滅と奴隷化という結末を迎えてしまったという。


 何故そうなったのか分からないという彼女に対し、俺はそれこそが妹にとって『最良の未来』だったのではないかと告げた。


「――――っ。お待ちください! それはあまりにも……!」


 同胞は死ぬか奴隷になるかで、聖獣は所在不明で、自分は聖騎士団に捕まった。

 そんな未来が最良だと信じたくない気持ちは、分かる。


 事実、マーナルムにとっての最良ではないのだろう。


「未来視といっても、世界の全てを視ることは出来ない筈だ」


 俺の言葉に、マーナルムがうっと言葉に詰まる。


「た、確かに妹が視ることが出来るのは、面識のある者の未来だけです。『国の行く末』といった漠然としたものを視ることは出来ません」


「おそらくだが、彼女は村が襲撃される未来を視た。そしてそれは変えられないと知ったんだ」


 彼女の未来視は村では信じられていただろうが、謎の勢力がやってくるから村ごと移動しようと言って、「はいそうですか」とはならないだろう。


 ほとんどの人間は、そう簡単に自分の居場所を捨てられない。


 それに、彼女の種族は魔獣に勝てるくらいに強い。襲撃者が来ると言っても、撃退すればいいと考えた筈だ。


 事実を告げても、襲撃を回避は出来ないことを、マーナルムの妹はすぐに理解できた筈。


 そしてマーナルムのこの真っ直ぐな性格を思えば、姉妹だけでの逃走も現実的ではない。

 仲間を見捨てて逃げるなど、マーナルムには出来そうにない。


 そして先程彼女自身に聞いた、逆らった者達の末路だ。


 これは完全な想像だが、マーナルムの妹は――襲撃で姉が死ぬ未来を視たのではないか。


 姉は決して逃げない。突如村が襲撃されれば、応戦して命を落とす。

 だが、魔獣襲撃を理由に村から離れさせ、その間に村が占拠され――妹が人質にとられたら?


 姉は投降し、殺されずに済む。


 俺はそういった自分の考えを、マーナルムに告げた。


「そ、そんな……。いや、ですが……。それは、妹ならば、あるいは……」


 動揺を隠しきれない様子のマーナルムに、俺は更に言葉を投げかける。


「お前は死にかけるような『罰』を受けてでも妹を助けようとした。同じくらいの気持ちで、妹がお前を助けようとしてもおかしくないんじゃないか?」


「姉の死が『最悪の結果』、村を捨てての逃亡が『実現しない未来』と考え、どちらも奴隷になるという未来を『最良の結果』としたと……?」


 マーナルムはふらふらと後退し、ベッドの縁に足を引っ掛け、ぼふんっとベッドに倒れしまう。

 そのまま顔を腕で覆い、しばらく沈黙が流れる。


「……ロウ殿」


 次に顔を上げた時、彼女は落ち着きを取り戻していた。


「あぁ」


「……おそらく、真相はロウ殿のお考え通りなのでしょう。悲劇が避けられぬ中で、妹は最もマシな未来を選択したと、貴殿の話を聞いて理解しました」


「未来視を持ってるのは俺じゃなくてお前の妹だ。実際のところどんな考えだったかは、本人に聞けばいい」


 マーナルムが瞳に決意を漲らせ、強く頷く。


「はい……!」


「よーし……! マーナルムちゃんの妹さんとお仲間さん達、そして聖獣さんも見つけましょう!」


 シュノンもやる気を出す。


 元々、あてのない旅だ。

 自分の気の赴くまま動いてもよいだろう。


「そ、それで、ロウ殿……。現状を打破するお考えがあるとのことでしたが……お聞かせ願えますか?」


「そんな大層なものじゃないが、選択肢は大きくわけて二つあると思う。このままマーナルムを連れて逃げるか、マーナルムを自由にして堂々と妹を探しに行くか、だ」


 マーナルムが考え込むような顔になる。


「そう、ですね……。しかし、どちらも現実的ではないかと」


「そうだな、両方の選択肢に課題がある。奴隷の首輪にはそこまで詳しくないが、マーナルムの居場所が今の所有者にバレてないってことは、場所を特定する機能はないんだよな」


「そうですね。そもそも逃げられぬよう『罰』を設定しているようでした」


「だな。もう『罰』を受け終わった以上、この街から抜け出して旅をすること自体は出来る」


 マーナルムが言いにくそうに、しかし意を決した様子で口を開く。


「し、しかしこの首輪は外せません。『罰』を受けたので今のところ拘束力はありませんが、私を伴っての移動は厄介事を生みます」


 俺は頷いた。

 彼女には現状を正しく認識する知性と理性がある。


「奴隷の所有者確認だな」


 奴隷は所有物扱いで、しかも高級品。


 たとえば貧民窟の住人がピカピカの宝石を見せびらかすように歩いていたら、誰でも不思議に思う。

 同じように、彼女ほどの奴隷を連れていれば、いやでも目立つ。


 そうなると起こるのが、所有者確認だ。

 俺とこの子が一緒にいるのを役人などに見咎められた場合、契約魔法で繋がっている主従なのか確認されてしまうのだ。


 違ったら、俺は奴隷泥棒ということになり、一瞬で犯罪者だ。


『我ならば破壊出来るが』


 リアンの言葉に、マーナルムがブンブンと首を横に振った。


「い、いえ、聖獣様に、このような汚れた道具の始末をお任せするなど出来ません! そ、それに……商人はわたしが妹の許に駆けつけると読んでいる筈です」


「ん? 妹は金髪の聖騎士の一団が囲ってるんだよな? お前の今の主人は、そいつらの居場所を知ってるのか?」


 彼女が小さく頷いた。


「はい。私は囚われの身で、街の名を聞くことも出来ませんでしたが……。同胞たち含め、一度奴らの拠点で牢に入れられていたのです。そこに複数の商人がやってきまして……」


「その一人が、マーナルムを買ったと」


「そうなります」


 ……それはいいことを聞いた。


 つまり、今のマーナルムの所有者に話を聞ければ、妹の所在が分かる。


 仮に既に移動している場合でも、重要な手がかりには違いない。


「じゃあ、二つ目の選択肢だな」


「……商人が、私を解放するとは思えません。ロウ殿やシュノン殿、そして聖獣様の武力を疑うわけではありませんが、そもそも私の為に罪を犯すような真似を、恩人にさせるなど……」


「ん? あー、そうか。うん、お前は何か勘違いしているな」


 彼女は、俺の言う『解放』が武力行使だと思っているようだ。


 とはいえ、仕方のない面がある。


 旅の途中とはいえ、滞在中のこの宿は決して高級宿ではないし。

 メイドを伴っている、そこそこ良い服を着た少年とはいえ、俺は貴族の子息には見えないだろう。


 だから、マーナルムが俺の懐事情を勘違いするのは、むしろ当然のことと言えた。


 だが、俺には追放を予期して自分で溜めていた金の他、兄に貰った路銀、更に――『倍々の壺』があるのだ。


 一日経てば、中に入れたものが倍になるという夢の魔法具。


「大丈夫。正攻法で行くつもりだ」


「せ、正攻法……つまり――」


「あぁ。マーナルム、俺がお前を購入する」


 シンプルだが、それ故に簡単ではない。

 彼女自身、自分が奴隷として高級品であることは、ここまでの流れで理解しているだろう。


 だから、単純なその答えを導くことが出来なかったのかもしれない。


「ロウ殿……失礼ですが、私に付けられる値は、その……」


「大丈夫だ、任せてくれ。だが、お前を買うにあたってやることが二つある」


 俺があまりに悠然としているものだから、マーナルムは気圧されている。


「な、なんでしょう……?」


「お前に付けられるであろう値段を知らなければならないのと」


「ならないのと?」


「値段によっては、数日待ってもらう必要がある」


 『倍々の壺』に入れたものを増やすには、丸一日待つ必要があるのだ。


「は、はぁ……」


 マーナルムの困惑顔を見て、俺は自分の持つアイテムについて説明してやることに決めた。



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