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次の日から母には奇妙な点がいくつかみられるようになった。それは、他人にはわからないような細かいとてもとてめ小さなことであり些細なことであったがまだ幼い正にはとても気がかりであった。なにより母が母ではないのではないかという不安が正をそうさせた。
しかし正はその些細な変化を無理やり隠すかとばかりに母の変化を見逃すよう努力し始めた。
『自分は気にしすぎだ!!母さんはなにもかわっちゃいない!現にいつもどうりの母さんじゃないか』
正は呪文のように自分に言い聞かせていた。
そのころ正の住む町では大きな出来事があった。
それは新しくできた病院にとても有名な医者が赴任してきたのだ。彼の名は、南啓介。彼は、数年前に日本人で初めて国際的な賞を貰った人物であった。一躍時の人となった。しかしそのあと彼は研究で大きな失敗をしてしまった。そこで彼の助手をしていた人が亡くなった。マスコミは、彼を大きく取り上げた。
『南啓介 国際的賞も水の泡!!実験失敗で助手死亡!!』
その結果彼は医療の表舞台から引きずりおろされ田舎の病院へと赴任してきたのだ。
町は、有名先生が病院に来たというだけで大きく取り扱い彼を歓迎した。彼も町の人の暖かさに折れかけた心をなんとかつなぎ止め、またコツコツと医療の現場へともどっていった。
真新しいものでもりあがるのも最初のうちだけである。
それからというものは、またいつもの田舎の町に戻りつつあった。