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悪の組織、はじめました  作者: enforcer
凶悪!! 惑星滅菌計画!!
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凶悪!! 惑星滅菌計画!! その4


 暫く後、慌てて戻って来た博士が慌大広間の戸を押し開く。

 

「お待たせしました!」


 そう言って、博士が高々と掲げたのはマシンの頭脳を司る部分である。  

 マシン本体を分解し、取り出されたソレ。


 モノ自体は、例えるならば装飾された水晶玉に近かった。 

 中身がうっすらと光る玉を、金属の鎧が覆う。


「この子が居れば、何とか成るかも知れません!」


 博士の言葉は、自信と不安が半々であった。


 敢えて機械を【コレ】と言わない事は、彼女の信頼を表している。

 ただ、同時にマシンの頭脳が巨大ロボットを動かせるのかと問われれば、何の保証も無い。


 悪く言えば、伸るか反るかの大博打と言えた。

 科学者ならば、本来は確率や数字を重んじ、運や奇跡などは信じないものだ。


 だが、博士は見ている。

 絶対的に負けそうな状況にも、メゲずに立ち上がる良の姿を。


 普通ならば、サッサと投げて逃げたく成る様な時ですら、諦めなかった首領の背中を。 


 そんな博士の声に、良も立ち上がった。


「ま、どの道このまんまじゃあ上手くないからなぁ」


 既に説明を受けては居る。 地球上、何処へ逃げても意味がない、と。

 良は、拳と掌を打ち鳴らした。

 

「よっしゃ、とりあえずいっちょやってみるか!」


 改造人間に成って以来、良は以前の自分を捨てていた。


 何事に対しても、我関せずという姿勢スタンス

 

 多くの者達と出逢う内に、そんな良の性格は逆転をしていた。


 失敗をする前に諦め、事を起こさない。 ソレであれば、傷付く事もない。

 そんなただの青年、篠原良は、もう居ない。


 この場に居るのは、悪の組織の首領兼、改造人間、篠原良である。


 結果がどうであれ、行う。 失敗しても、立ち上がれば良い。

 座して死ぬよりも、立って戦う事を選ぶ。


 そして、組織の面々もまた、博士と同じモノを見てきている。

 誰よりも率先し、矢面に立つことを恐れず、皆を引っ張る首領を。


 良の声に、女幹部が前に一歩出た。

 いつかの如く、身に纏うマントをバサッと翻す。


「皆の者! 聞いたな!」


 アナスタシアの声に、構成員達はビシッとポーズを決める。


「「首領! 万歳!」」


 構成員達もまた、女幹部の様にポーズを決める。

 それだけでなく、なんと新規加入の怪人達までもが、同じ事をし、同じ声を上げたのだ。

 対面上しない幹部も居るが、それをわざわざ咎める者はこの場には居ない。


 一気に盛り上がる大広間。

 

 そんな中、ただ1人だけウーンと唸らせるのは魔法少女である。


「地球の為に戦う悪の組織って……普通居ないけどねぇ」


 自分は組織の一員ではないという立場からか、愛はそう言う。

 そんな少女に、隣で騒ぎを見ていた青年、橋本が笑った。


「地球ってか、自分達の為に戦うんだから、まぁ在る意味は悪の組織で合ってるんじゃないかな? まぁ、今じゃ此処には悪い奴が居ないけどね」

 

 サラッと意見を述べる橋本に、愛は首領である良を見る。


「「「首領! 万歳!」」」


 未だに続く良への歓声。 

 こっぱずかしいからか、流石に組織に混じって声を上げる事はしなかった。


 当たり前だが、組織の誰もが自分を【正義の味方】だとは名乗っていない。

 ただ、少女もまた、声を上げる者達と同じ様に、良を支えようと想っていた。

 

   *


 以前は逃げる為に基地を放棄した。 が、今回は違う。

 皆が皆、絶望からではなく希望を持っていた。


 そしてソレは、在る効果を生んだ。


 嫌々ながらさせられる作業と、嬉々として行うのでは効率が全く違う。

 時には、倍以上の結果を出す場合も珍しくはない。


「よーし!」「やるぞー!」


 やる気が溢れ出した声。 

 コレを誰が云ったのかは問題ではない。

 自然と口を付いて出たという事が大事なのだ。


 基地に着くなり、全員揃って新しい基地へとなだれ込んでいた。


「よぉし! では、早速で済まないが皆には手伝って貰おう!」


 ウズウズと今にも動き出しそうな構成員達を前に、先ずはアナスタシアが口火を切る。

 次いで、虎女が手をパッと振った。


「半分はあたし、半分はアナスタシアで班分けね!」 


 実にテキパキと指示を飛ばす大幹部二人に、良はホホウと声を漏らす。

 アナスタシアとカンナが説明をする中、良は博士の肩をチョイと突いた。


「はい? 良さん、何ですか?」

「あのさ、機械苦手なんだけど、俺にも出来る事ある?」


 首領の申し出と在れば、部下の博士は断れるモノではない。


 とは言え、少女は悩んだ。

 機械が苦手な良に出来そうなのは掃除ぐらいだろう。

 だからといって、組織の長に掃除をしてろとも言い難い。


 其処で、優れた博士の頭脳は、妙案を捻り出す。


「そう言えば、良さんって、料理出来ます?」

「ん? ま、そら、なんせヤモメが長かったからね」


 ボソボソと何事をかを呟く良の声は聴かなかった事にして、博士は微笑む。


「じゃあ、皆の為になんか用意してください!」


 在る意味、博士の声は首領への丸投げであった。


   *


 着々とロボット起動の為の作業が進む中。

 そんな組織の長は、なんとジャガイモの皮を剥いていた。 


 先にパパっと米を研ぎ終え、炊飯は機械に任せた良は、既に次の仕込みを始めている。


 人数分の弁当買い出しという手も在るが、領収書が切れない。

【悪の首領様】では微妙な事この上ないだろう。


 幸いな事に、以前に運び込んだ荷物の中には、食材も機材も含まれていたのだ。

 野外でも使えるモノが多いのは、組織の性質上だろう。


 とにもかくにも、其処で、良は自炊を思い付く。


 下手に買いに行くよりも速いのではないかと。

 そもそも悪の組織が出前デリバリーなどは言語道断なのだ。


 無論、 新しい基地に台所等という高尚なモノはない。

 正に、野外での男の料理とでも云うべき光景である。

  

 組織の首領が、芋の皮を剥くというのは、在る意味異様だろう。


 とは言え、それをして居る本人からすれば気楽な作業だった。

 嫌々に誰かと戦わされるよりも。


 其処へ、細い脚が近付く。


「あのぉ……」


 気まずそうな声に、良は顔を上げる。 


「お、川村さん」

「なんか、私もしよーかなぁー……って」


 現代人の少女とは言え、愛はお世辞にも機械に詳しい質ではない。

 ましてや、謎の巨大ロボットの事など分かる筈もなかった。 

 其処で、少女は自分にも出来そうな仕事を探していたのだ。


「そ? じゃあ、ニンジンの皮剥けるぅ?」


 試す様な声に、少女は胸を張ってフンと鼻息を漏らした。


「それくらい出来ますよ! 馬鹿にしてるんですか?」


 憤る愛に、良は軽く笑いながらニンジンを差し出した。


「そんな位で怒んないでよ。 ほら、手伝ってくれよ。 結構な人数分だからさ」

 

 やんわりとした良の声に、少女は如何に【仕方ない】という顔を見せた。


「ま、そんなに云うなら」


 手渡されるのがニンジンであり、些か少女の希望とは違う。

 それでも、頼られるというのは悪い気はしなかった。


 作業が二人に成ったからと云っても、そう劇的に速まることは無い。

 そもそも、愛の手付きは料理初心者のソレであった。

 武器を振るうのが上手いからといって、他もそうであるとは限らない。

 が、良は少女を急かすつもりは無かった。


【させた】ではなく【してくれる】という点を尊重する。


 事実、愛は単調な作業でも黙々と、だが楽しそうであった。


「川村さん」

「ふぇ!?」


 いきなり声を掛けられたからか、愛は危うくニンジンを落とし掛ける。

 落としはしなかったが、少女はジロッと良を見た。


「もう、なんですか急に」

「いや、なんかさ、すっげー楽しそうな顔してたから、何だろうってね」

 

 良の問いに、愛は胸の中が熱く成るのを感じた。

 作業その物はそう大して楽しそうなモノではない。


 多感な少女からすれば、良と何かをして居る事が大事なのであった。

 表には出ない愛の内心を形容すれば【初めての共同作業】というモノに当たる。

 

「う、うーんと、ほら、私達、ずーっと戦ってばっかりでしたよね?」

「あぁ、そうだな。 今と成っちゃ、こういう方が気が楽だよ」


 少女よりも手際良い良は、既にジャガイモの皮むきを終え、既にゴボウの笹掻きへと入って居た。

 とは言え、愛の目にソレは入っては居ない。


 良と二人で、何かをして居る。 それが重要なのである。


「ところで、コレで何作るんです?」

 

 料理に疎い愛からすると、材料だけでは推測が付かない。

 そんな少女に、良はなんとも言えない顔を覗かせた。


「んー? まぁ、時間もアレだし、一汁山菜ってのは難しいなぁ。 時間が在れば、色々出来るんだろうけどね」


 良と愛の間には和やかな空気が流れてはいる。

 が、現在の組織は戦闘への準備中であり、平時ではない。

 それは、少女も勿論分かっていた。


 其処で、ふと何かを思いついた愛は、パッと良を見る。


「じゃあ、その内に組織を引退してお店でもやるとか?」


 腹の中を探る様な少女の声に、良は苦く笑った。


「そうさな、いつか、今すぐは無理だけど……な」


 夢は幾らでも語ることが出来る。 ただ、良に取ってはそれが難しい。 

 コレからまた戦いに行かねば成らない。

 そして、今度の戦いもまた、帰って来れる保証は無いのだ。


 良の声に僅かな影を感じたからか、愛は直ぐに別の話を思い付く。


「あ! そう言えば!」

「お? どした?」


 急に何かを思い出した様な愛に、良の目は丸くなる。


「忘れ掛けて居ましたけど、旅行ですよ、旅行! なんか、また人数増えちゃいましたけど」


 意外な記憶力を発揮する少女に、良も笑いが湧いてきた。


「あー、色々あって延び延びに成ってまして」


 如何にも旅行代理店とでも言いたげな良に、愛は、ズイと近寄る。


「約束破りはサイテーですからね? 忘れちゃあ駄目ですよ?」


 しっかりと念押しする愛に、良はウンと頷いた。


「分かってるよ。 てか、川村さんって意外に記憶力良いのな?」

「あー! 意外ってなんですか? 意外って! 失礼ですよ!」


 少女の小さな怒り。

 それは、戦いにささくれ立った良の心に取って、一時の清涼感をくれた。

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