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悪の組織、はじめました  作者: enforcer
静寂! 裏で蠢く者達!?
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静寂! 裏で蠢く者達!? その5


 怪人達の協力も在り、作業の効率は大幅に進んだ。

 その力は、例えるならば人型のフォークリフト並みだろう。


 が、単純な上げ下げしか出来ない機械に比べれば、人と同じ精密な動きが出来る事は大いに助けに成る。


 作業が進む中、とある怪人達が良へ顔を向けた。


「首領! コレはどうします?」


 そんな声に、良はウンと其方を見る。

 すると、其処には在るモノが見えた。


 ソレは、かつて良が破壊した組織の意匠エンブレムだった。


「あー、まだ片付けてなかったのか」


 思わず良は溜め息を漏らす。

 以前の組織を代表するモノであり、前首領とも呼べる残骸。


 実際には邪魔だからと、部屋の隅に放置されていた。  

 何故ソレが片付けられなかったと言えば、首領である良がそれを命じなかったからである。


「まぁ、そんなの捨てちゃって良いよ」


 もはや過去の遺物であり、新しい組織にとっては必要が無い。

 が、良が指示を出した途端に、遺物の一部が光った。


─ソレは困るな─ 


 突如として響く声。

 その声には、組織の誰もが聞き覚えがある。


「わ!?」「なんだ!?」


 驚いたからか、怪人達は意匠を思わず放した。

 壁から外れたソレは、無様に床を転がる。

 が、機能は生きているのか、真ん中のランプがチカチカと光った。


「まさか、首領!?」良の中に疑念が湧く。


 が、倒した筈の者が蘇る筈はない。

 其処で想うのは、相手が誰かと云うことだ。


「いや、んな筈がねぇ、誰だ?」


 良が睨めば、意匠は笑う様に光る。


─礼儀が成っていないな。 此方がこうして接触する事だけでも、光栄な事なのだぞ? 我々は貴様等にとっては神に等しい。 感謝して欲しいものだ─


 響く声に、良は目を細めた。


「あー、ようやく見えて来たぜ。 テメェだな? コソコソと後ろに隠れてああでもねぇこうでもねぇとやってる奴は」


 声の相手を察したからか、良は意匠を睨む。

 かつてもこうして対峙したが、その時とはだいぶ違った。


─我々を此処まで引っ張り出した事は誉めておこう。 此処まで来れた者は、そう多くは居ない。 其処でだ、そんな勇敢なる貴様に提案が在る。 今なら全てを不問に処そう。 降伏しろ─


 尊大かつ傲慢。

 そんな声に対して、いの一番に動いたのは、虎女だった。

 

「はっ!! 何を偉そうにしんての!? あんたなんざ!!」


 怯える怪人や構成員を余所に、カンナは一挙に床の意匠へと近付く。 

 小煩いガラクタを踏み潰さんと、足を上げる。


 改造人間であれば、瓦礫程度は踏み潰せる。 が、そうは成らなかった。

 その理由だが、カンナは動きを唐突に止めている。


「おい? どうした!」


 虎女の異変に気付いたのか、アナスタシアが声を上げる。

 それでも、虎女は足を上げたまま固まっていた。


─無粋な真似をするべきではないな、改造人間よ。 我々は、首領と話をしているのだ─


 大幹部の異変に、良も焦りを隠せない。


「何しやがった!?」


─そう驚く事か首領? 駒と云うモノは、誰かが動かすから動くのだろう? この様に─


 響く声と共に、虎女の体が震える。

 何かに抗っては居るらしいが、身体は、確実に動かされていた。


「……ぐ……ちく……しょう」


 呻く声から察するに、どれほど力んで居るのだろう。

 それでも、虎女の身体は意匠に対して跪いていた。


「カン……んな!?」


 同僚の大幹部の異変に、アナスタシアも慌てた。

 が、助け起こそうと近付いた途端に、彼女もまた動かなくなる。

 

─幹部足る者は、大首領に跪いて頭を垂れろ─ 


 その声は、アナスタシアの身体に反応を示させた。


「なん、なんだ!? 身体が」


 本人は一生懸命に身体に力を入れて訳のわからない何かに抗おうと足掻く。

 だが、そんな意志とは裏腹に、体は云われたままに動いてしまう。


「アナスタシアさん!?」

「首領……申し訳、在りません……この様な無様を」


 軋む程に食いしばった口から漏れるのは詫びである。

 女幹部は良に詫びるが、その身体は組織の意匠に跪いていた。


─改造人間共、お前達もだ。 創造主の前であるぞ─


 響く声は【何をしろ】と命令してはいない。

 が、怪人もまた、意匠の方を向くと膝を付いていた。


 唯一声を聴いても問題無いのは、良だけである。

 その光景を目にした良の全身の毛が逆立った。


「こんの、くそったれ野郎が」


─再改造を受けた貴様だけには無効だろうが、そんな事は些細な事だ。 篠原良、貴様には言った筈だぞ? 貴様を後悔させるとな─


「ぅるせぇ! 卑怯だぞテメェ!?」


 たった一人抗う良を、意匠から漏れ出る不気味な声が嘲笑う。


─卑怯? それがなんだと云うんだ? 改造された玩具が何を云う─


「身体は機械だろうがよ……」


 そう言いながら、良はバッとその場から飛び出した。


「中身は人間なんだよ!!」


 未だにチカチカと光を放つ意匠を砕くべく、良は起動の動作を取った。


「変……身!」


 姿を変え、相手を砕かんとする。 後少しで良が届く。

 だが、それを防いだ者が居た。


『んな!? なん、でだ』

 

 良の前に立ち塞がるのは、良が助けた筈の三姉妹。

 ただ、彼女達も嬉々として動いた訳ではない。

 その顔は、恐怖に歪んでいる。


「駄目、体が動かない」「逃げて……首領」「嫌、やだ、もう戦いたくない!」


 三人はそれぞれ嫌がるが、本人の意志に改造された体は従わなかった。

 一瞬で姉妹は姿を変えると、意匠を守る様に囲む。


─さて、次はどうする? 首領?─


 そんな声は、まるで良の出方を見て楽しんでいる様であった。

 例えるならば、ボードゲームにて絶対的に相手を追い詰め、その上で相手の反撃を見ている風情である。


『きたねぇぞ!? 女を盾にしやがって!?』


─そうか? ならば戦えばいい─


 響く声に、アナスタシアがゆらりと立ち上がる。 

 ブルブルと震える事から、如何に力んで居るかがわかった。


『アナスタシア!?』

「駄目、です……首領……身体が勝手に」


 本人が如何に否を示そうが、改造された身体には関係が無い。

 女幹部は、その身をモンハナシャコへと変える。


─さぁ正義の味方よ。 敵の大幹部だぞ? 倒してみせろ─


 響く声に、アナスタシアの体は従う。

 死に物狂いで抗って居るからこそ、その動きは鈍い。

 が、確実に足は良へと向かっていた。


『……こんの、ド畜生が』


 絞り出すような良の声に、アナスタシアの腕が勝手に畳まれる。


『首領!? 離れてください!』


 そんな声と共に、蝦蛄女の拳が飛び出す。


 元にされたシャコですら、水中にて小爆発を起こす程の威力を誇る。

 その何百倍とも成れば、勿論その威力はそのまま跳ね上がるだろう。


 アナスタシアが抗うからか、なんとか直撃は避けた良。

 だが、掠っただけでも、装甲には跡が付くほどであった。 


『あぁ!? どうすりゃいい……』


 戦おうと思えば、戦えなくはない。

 アナスタシアの自我が在る以上、蝦蛄女の動きは鈍いのだ。


 その気に成れば、倒す事は出来る。


 が、それが良に出来る筈もなかった。

 目の前に立つのは怪人だが、よく知っている人だ。


 然も、本人の意志はそのまま残されている。


 動けない良に、アナスタシアは何かを思い付いたらしい。

 ヒクヒクと触角を動かす。


『首領! こうなれば仕方在りません! 私を倒してください!』

『出来る訳ねぇだろ!?』


 叫ぶ良に、蝦蛄女が身体を左右へ揺する。


『何も殺せなんて云ってません! 腕か脚か、一時的に破壊し、動きを止めてください!』

『冗談だろ?』


 戸惑う良に、虎女も横目で対峙する2人を見る。

 如何に動きが鈍かろうとも、アナスタシアの強さは虎女も知っていた。


「首領! あたしら改造されてんだよ!? ちょっとぐらいじゃ死なないよ!」

『そうですよ!! 壊れても……必ず立ち上がりますから!』 

 

 虎女の声に、蝦蛄女も続く。

 だが、良に取ってはそんな選択はしたくなかった。

  

『簡単に云うなよ』


 言うは易いが、行うは難い。


『そんな事、出来ねぇんだ。 したくねぇよ』


 頭ではそうするべきだという事は分かる。

 が、身体は動くことを拒否していた。

 良の心が、友を傷付ける事を拒んでしまうのだ。 


 動けないとなれば、格好の的だろう。

 

『駄目!! 首領! 避けてください!!』


 蝦蛄女の拳が飛び出し、良を捉えた。 一応、腕で胸は庇ってはいる。

 それでも、左右同時のパンチは凄まじい威力であった。


 大型ダンプに弾かれた様に、良が宙を舞う。

 

『首領!?』悲痛な声で、アナスタシアが叫んだ。


 壁にぶち当たりながら、なんとか止まるが、兜から漏れ出るのは呻き。


『あー……全然平気だよ。 なんちゃねぇ』


 意に反して自分を殴ったアナスタシアを慰めんと、敢えて良は強がる。

 が、その凄まじい威力には内心驚いていた。


 怪人の頭を苦もなく飛ばすパンチである。

 無敵の装甲によって辛くも防がれはしたが、良の腕は痺れに震えていた。


『首領! お願いだから!』


 この時ばかりは、アナスタシアも女幹部としての顔を投げ捨てた。

 慕う者を、自らが傷付ける事は彼女にとっては辛い。


 同じ幹部である虎からしても、その辛さは痛感していた。


「あんた男でしょ! アナスタシアを止めて!!」


 自分が出来れば、直ぐにでもカンナはそうしただろう。

 だが、出来ない以上は良を頼る他はない。


 2人の幹部の声を受け取った良は、構えた。


『ちょっと痛むかも知れないが、恨むなよ? アナスタシア』

  

 渋々といった声に、蝦蛄女も構える。


『恨みはしません……ですが、責任は取ってもらいますから』


 如何なる意図によって、アナスタシアはそう言ったのか。

 それを確かめる暇は無い。


『勿論だ!!』そう云うと、良は猛然と前へと進む。

 

 蝦蛄女の拳は確かに凶器だが、同時にその軌道は単純である。

 戦い続けた良だからこそ、それがどう動くのか、読めた。


 繰り出されるパンチを避け、蝦蛄女の背中へと乗る。

 ただ、当たり前の様にアナスタシアの体は良を振り落とそうと暴れ出した

 

『あー!? 大人しくしろって!! 暴れるな!!』

『私だって、こんな形で乗られるのは嫌です!! 速く!』


 アナスタシアの必死な声に、良はその腕を掴んだ。


 

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