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悪の組織、はじめました  作者: enforcer
静寂! 裏で蠢く者達!?
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静寂! 裏で蠢く者達!? その4


 虎女の意見には、良も文句は無い。

 ああでもないこうでもない、そんな理屈を取っ払えば、最も簡単な解決方法では在るだろう。


 だが、問題が一つだけ在る。


 果たして、それが【何処の誰】なのかと言う事だ。


「んー、確かにその通りなんだが……」

「でしょ? 良い考えでしょうが?」

 

 良に意見を肯定されたのが余程嬉しいのか、虎女は感情を隠さない。

 如何にも誉めろ言わんばかりである。


「でもなぁ、相手が誰かわからないだろ?」

「……うっむぅ」


 良の声に、虎女は口を閉じてしまう。


 もしも、今すぐ良が【ぶっ殺して来い】と頼めば、虎女は嬉々として向かうだろう。

 が、如何に本人にやる気が在った所で、行く場所が無ければ意味が無い。


「それに、攻めると成ると、どうなるかな」


 敵側へ攻め込むという事は、損害を考慮しなければならない事でも在った。

 

 事実として、今居る基地を防衛する際、確かに被害は軽微ではある。

 しかしそれは、良や大幹部達が死に物狂いで戦った結果だ。


 辛くも防衛は果たし、組織の構成員には死者は出ていない。

 だが、モンハナシャコ女と虎女はボロボロであり、下手をすれば2人ともに散っていただろう。


 仲間の誰かが死ぬ。


 それは、良にとってみれば自分が傷付くよりも恐ろしい事だった。

 自分の事ならば、幾らでも取り返しはつく。

 が、守れなかったならば、それを考えるだけでも恐ろしい。

 

 首領が優しいと言う事は、アナスタシアにもわかる。

 その性格故に、彼女は良に続こうと決めたのだ。


 女幹部が、一歩前へ出た。


「首領。 おこがましい事かも知れませんが、発言の許可を」


 堅苦しい性格のアナスタシアらしい声に、良は笑う。


「えーと、どうぞ?」


 首領からの許可に、女幹部は息を吸い込む。


「今でも、我等は危機です。 で在れば、打って出るしかないのでは?」


 アナスタシアからすると、今の基地を捨てると言う事は忍びない。

 が、敵に位置が知られている以上、留まる事は危険だと分かっていた。


 次の襲撃は、更に苛烈なモノに成るだろう事は容易にわかる。

 何故なら、相手は世間の事など一切合切を無視して力を行使できる。

 

 現代の大国ですら出来ない事を易々と。


 今回は辛くも勝利したが、次回にどうなるか。

 ならば、今すぐに決断が必要であった。


「首領、御決断を」


 少し前の弱々しいアナスタシアではなく、今の彼女は、女幹部としての顔を見せていた。

 真面目な意見に、良も唸る。


 組織の首領である以上、その決定は難しい。

 加えて、全員の命が良の背中に在る。

 それは、投げ出したくなる程に重い。


 緊迫感が増す中、突如として呑気な音が響いた。


「なんだなんだぁ!? 敵襲かぁ!?」

「ちょっとちょっと。 アナスタシア、落ち着けって」


 いきなりの事に取り乱す女幹部を虎女がやんわりと抑える。

 

 音の正体だが、それは、良のスマートフォンの着信音であった。


「なんだろ? ちょっとすんません」


 皆に詫びつつ、良はスマートフォンを手に取る。

 画面には、知った様な知らない様な番号が映っていた。


【000-0008】と。


 そんな番号があり得るのか、ともかくも、良は通話を繋げてみる。


「あー、はい? どちら様ですか?」

『やぁ、首領』


 聞こえた声は、妙に懐かしい。

 今までも何度か聴いたが、知らない筈なのに知っている様な気がした。


「あんた、どうして」

『君が困ってるのは、見えてたからな』

「え?」


 良は、慌てて辺りを見渡す。 が、見えるモノは変わらない。

 組織の幹部達に、部屋の内装。


 何処からか見られているという気配は無かった。


「みてたって、どうやって?」

『いや、其処は大した問題じゃないんだ』


 凄まじい問題な気もするが、声の主は気にした様子はない。


『友が困っているなら、見過ごせないよ』

「有り難いんすけど、どうしてだ? どうして其処まで俺を?」

 

 なんとか相手の真意を探ろうとする。

 が、返ってくるのはウンと鼻を唸らせる音だけ。


『君は、恐らく憶えていないだろう』

「いや、そら前にも云われたんすけどね?」

『私は君に、世界を壊す手伝いをさせた』

「はい?」


 全く覚えの無いことである。

 声の主が云うには、良は以前にとんでもない事に荷担したらしい。

 しかしながら、そんな記憶は良には無かった。


「やー、俺そんなにヤバいことしてましたっけ?」

『友よ。 過ぎた事は気にするモノではない。 ともかくも、私は今度君が世界を造ろうとするのを手伝いたいんだ』


 とてもではないが、電話で軽く交わす話題でもなかった。

 世界を造ると言われたが、そんな自覚は良には無い。


『とにかく、君達は今すぐ移動しなければならない。 その為の場所は用意してある』

「えぇ!? マジっすか?」

『座標は直ぐに送る。 だから、急いだ方が良い』


 念押しの後、通話は途切れた。

 電話を終えた良に、幹部達の目が向けられる。


「誰です?」


 アナスタシアからの質問に、良は鼻を唸らせた。


「うーんな、まぁ、何度か助けてくれてる……人なんだ」


 厳密に相手が【誰なのか】を知らない以上、それ以外答えられない。

 が、ソレでは不満なのか、カンナが良に寄った。

 

 ただ近寄るだけではない。

 腰を折り、目を細めながら自分の頭を良のソレへ寄せる。


 訝しむ様な虎の視線は、首領だとしても怖かった。


「誰? まさか、女?」


 カンナの低い低い声に、良の口は真一文字に成り目が泳ぐ。


「しょ、そんなことはないよ」


 いきなりロボに成ってしまった様な良である。

 当たり前だが、それは自白としてしか聞こえない。


 第一、改造されている虎女の耳は格別だった。

 良の通話など、虎女にとっては聴こうとすれば簡単である。

 焦る首領に、虎女はフゥンと鼻を成らすと身体を起こした。


「ま、別に良いけどね。 ところで、どうすんの?」


 良が誰と話していたか。 

 それも気になる虎ではあるが、此処で粘着していても時間の無駄だった。

  

 アナスタシアに倣い、虎女も良の決断を促す。


 良は、意を決して立ち上がった。


「基地を放棄する」


 淡々とした良に、女幹部と虎女は目を見張った。

 だが、2人とも何かを云うわけではない。


 そんな幹部に、良は苦く笑って見せた。


「俺もさ忍びないよ。 やっと慣れて北のにさ」


 首領である良にとっても、この基地は特別なモノであった。

 嫌な思い出も在れば、良いことも在る。

 そんな全てを、捨てねば成らないのは辛い。


「頼むよ皆、我慢してくれ」


 この余計な一言が、良の首領らしくない所だろう。

 それでも、場に居る者達は嫌だとは感じない。


 寧ろ、自分達の近くに居てくれる親近感が増した。

 

   *


 首領からの命令が下れば、組織は動き出す。

 頭からの指示を受けて、その手足として幹部達が動いていた。


 静まり返った筈の基地の中が途端に活気付く。


「総員! 必要なモノだけで良い!」


 元々が女幹部であるアナスタシアは、テキパキと指示を飛ばす。 

 彼女からしても、基地の放棄は忍びないが、構成員や首領の為を思えば割り切れた。


 建物だけを護った所で、其処に住まう者が居なければ意味が無い、と。


 アナスタシアと同様に、カンナも同じく構成員を動かす。


「余計なモノは諦めろ! 重い大砲は駄目!」


 カンナの指示に、構成員達は「は!」と応える。


 運搬が困難なモノは全てを諦める他はない。 

 

 虎女にしても、元々が支部を任された程の大幹部である。

 その為、指示に無駄が無い。


 更に、基地に一番詳しい博士も、二人に負けじと頑張っていた。


「あ! それは、アッチへ! えーと、それは、コッチです!」


 改造人間に比べると、些か貫禄不足ではある。 

 元々が他人にああでもないこうでもないと指示を飛ばす立場でもなかった。

 が、やはり其処はソレ、詳しい事には代わりがない。


 三人の大幹部を元に【組織丸ごとお引越計画】進んだ。


   *


「んー……」鼻を唸らせる良。


 着々と進む計画を見ながら、良は何とも言えない気分に成った。

 何故なら、この引っ越しは自分が首領として初めて出した計画である。

 

 とはいえ、訳のわからない悪巧みではない。


 下手に固執し、余計な犠牲を出さない為にそうする。

 そんな首領の元へ、大幹部の一人が近寄っていた。


「どうしたんすか?」


 良の声に、壮年は首をゆったりと振った。


「いや、私も戦いならば気が楽だが、誰かにアレをやれと言う事は嫌いでね」

「はぁ」

「昔は、ずっとそうだった。 あっちへ行け、こっちへ行け。 そんな風に使い走りにされたもんだよ」


 そう語るソードマスターなのだが、全く経歴すら不明である。

 ただ、良はそんな壮年に妙な親近感を感じていた。


「俺だって、ホントは嫌ですよ。 命令をするとか、全然柄じゃないし」


 今までの人生に置いて、良はどちらかと言えば【使われる側】だった。

 誰かに云われて、ソレをする。

 考えて見れば、その方がずっと楽だった気がした。


 自分は何も考えず、ただ指示を待ち、受けたら動くだけ。


 しかしながら、今の良は【使う側】である。

 顔をしかめる首領に、幹部は苦く笑う。


「慣れるさ。 いずれね」

「そんなもんすかね?」

「君が、組織を続けて行くつもりならね」


 壮年の声に、良はふと先を見通す。

 果たして、敵を倒したらどうすべきなのか。

 自由に成ったなら、なにをすべきかを。

 

 様々な事が頭に浮かぶが、それは、まだ先の事である。

 今の良にはやるべき事があった。


「首領!」


 掛けられる声に、良はハッとなる。


「へい! 何でしょ」

「怪人達が、手伝いたいと申し出て居りますが」


 構成員の声に、良は小さく頷く。

 本来ならば、敵側だった怪人達を信頼するのは難しい。

 が、誰もが良の後へ続く事を選んだ者達だった。


 第一、借りられるならば猫の手でも欲しいのが実情である。


「良いじゃないか、手伝って貰ってくれ。 重たいモノでも運んでくれるだろう」

「は! 首領!」

  

 意外に首領らしい度量を見せる良に、大幹部は感心していた。

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