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悪の組織、はじめました  作者: enforcer
油断大敵! 忍び寄る影!?
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油断大敵! 迫り来る影!? その16

 

 凄まじい爆風による衝撃に、辺りは揺れる。

 それは勿論、良に覆い被さった軍団にも代わりはない。

 

 数体は衝撃だけで飛び散ってしまう。

 それでも、軍団は庇う事を止めなかった。


 爆風が止み、辺りに煙が漂う。 そんな中、残骸の山が動いた。

 ガラガラと音を立てながら、ノソリと現れるのは良である。

 

『全くエラいめに……あ』


 目を開くと見えるのは、残骸の山。

 然も、それは自分と同じ姿をしている。


『お、おい』


 身を挺して庇ってくれた事は、有り難い。

 が、良にとっては辛い光景であった。


『……友よ』


 聞こえた声に、良は慌てて其方を向く。

 見てみれば、下半身と泣き別れに成ってしまったらしい軍団の一員。

 ソレを、良は慌てて抱き上げた。

 腕も片方が無く、見るほどに痛々しい。


 が、苦痛の呻きや悲鳴は無く、ただ、眼を示す部分がチカチカと点滅していた。


 何を云うべきか、それが出て来ない。

 そんな良へ、ボロボロの片腕が持ち上がった。

 兜に、ソッと指先が添えられるが、その手つきはまるで割れ物を扱う様である。


『君は無事か? 損傷は?』

『あぁ、お陰様な。 ピンピンしてるよ』

『なら、良かった』


 満身創痍どころの話ではない。

 もはやいつ機能が失われるのか、ソレすらも怪しい。


『すまないが、此処までらしい』

『おい、そんな事云うなよ? まだ俺が恩返しをしてないんだ』


 何とか相手の意識を留めようと努める良だが、声は震えていた。


『相変わらずだな。 安心しろ友よ。 私は、君を見守っているよ……』


 そう言うと、兜から眼の光が失われる。

 身体の姿勢はそのままだが、明らかに何かが消えていた。


『……なんだよ、名前ぐらい教えてくれたって良いじゃないか』


 そう言うと、良はソッと動きを止めた残骸を下ろす。

 瞼をソッと下ろしてやる事は出来ないからか、代わりに、動かなくなった腕をやんわりと胸に下ろしてやった。


 大声をあげたいが、それは胸に秘める。

 まだ、やるべき事が残っていた。


 瓦礫を丁寧に探ると、ハナカマリの腕が見えてくる。

 元の色合い故か、探すのにそう苦労は無かった。


『よっ、と』


 グイと引いてやると、カマキリが姿を現す。


『ちょっとぉ、レディなんだから、もう少し優しくしてくれない……』


 助けられたからか、カマキリの声は軽い。

 が、辺りに何が散らばって居るのかを見た途端、声が窄まる。


『生きてるだけめっけもんだろ?』


 言葉は軽いが、声は重い。 

 身を挺して助けてくれた者達の残骸を前に、良の顔は誰にも見えなかった。


 そんな良の耳へ雑音が入る。


─首領! 聞こえてますか!?─


 聞こえる声は、基地にてアナスタシアとカンナの事を任せた博士だった。

 どうやら、先に逃がした一団は基地に辿り着けたのであろう。


『博士か。 聞こえてるよ』


─今すぐ其方へ迎えをやりますから!─


『迎え?』


 良が疑問を感じる前に、軽い音が響く。

 博士が寄越した迎え、ソレは、首領専用のマシーンであった。


 辺りの煙など意に介して居ないのか、止まる。


『お前か。 助かるよ』

 

 良がそう声を掛けると、マシーンは乗れと言わんばかりにチカチカとライトを灯す。

 それを受けて、良はカマキリを立たせると乗せる。


『なぁ、バイクぐらい乗れるだろ? コイツなら、連れてってくれる』


 良の声に、カマキリはハッとした様に顔を上げた。


『そりゃ運転ぐらいなら出来るけど、あんたは? どうすんの?』

『俺? 俺はやることが残ってる。 ほら、しっかり掴まって』

『やることって……どうすんのって聞いてるんだけど!』


 カマキリの声に、良は空を見上げる。


『売られた喧嘩は、買わなきゃダメだろ?』


 そんな声は、カマキリには意地を張っているとしか聞こえない。


『馬鹿! あんた飛べるの!? 無理でしょうが! ソレよりも逃げなきゃ』


 ほんの少し前まで、カマキリに取って良は倒すべき敵だった。

 その筈が、今ではくるりと手をひっくり返す様に逆転している。


 その事には、当の彼女ですらも気付いて居ない。


『やって見なきゃわかんねーだろ?』

『意地張ったって無理でしょうが!』


 何とか良を一緒連れて行きたいカマキリ。 例え負けても、意地を張り通したい良。


 二人の意見は、真っ向から違っていた。


 このままでは埒が明かない。

 そんな二人に「いや、そうでもないですよ」と声が掛かる。


『誰!?』


 カマキリの声に、煙の向こうから何者かが姿を現す。

 顔を見せた青年だが、良は忘れていない。


『あんた……どうして』 


 急に現れた青年は、元大幹部のセイントである。

 良の声に、青年は苦く笑った。


「いや、まぁ、まだやることが残ってるんじゃないかと、それに……」

『それに?』

「忘れちゃいました? 星の向こうからでも、駆け付けるって云ったこと」

『そういや、そんな事云ってたっけな』


 良と青年の会話から、カマキリも青年が敵ではないのだと感じる。


『知り合いなの?』


 問い掛けるカマキリに、良は『あぁ、友達ダチさ』と答えた。


 良が友だと言えば、彼女も納得は出来る。

 戦闘中の山の中に平然と背広姿で現れる時点で、ただの人間では有り得ない。

 ただ、自分よりも良と親しげな青年に、僅かに目が蠢いた。


『でも、その人だって飛べないでしょ?』


 ほんの少しだけだが、ツンとした声。

 最も、それに気付けるだけの余裕は今の良には無い。


『いや、そうでもないんだなぁ、コレが』


 そう言いながら、良はカマキリを預けたマシンへと近寄ると、ライトを少し撫でた。


『よ、この人を頼んだぜ? 超特急でな』


 主の信頼に応えたいのか、マシンはエンジンを唸らせる。


『へ? あ、ちょ!? キャ!?』


 カマキリが何を云う前に、猛然と走り出す。

 力強く走っていくマシンとカマキリを見送った良は、青年と向き合った。

 以前は敵だった。 だが、今は違う。


『さて、早速で悪いんだけど……前みたいに運んでくれないか?』

「それは、構いません。 が、もしかしたら」

『そう、そのもしかしてさ。 上で飛び回るアレを落とすんだ』

 

 良の声に、青年は肩を竦めると「云うと思いましたよ」と笑った。

 

  *


 森を焼く煙の一部が膨らみ、其処がパッと散る。

 長く尾を引きながら、小さい何かが飛び出していた。


 傍目には、何かが誘爆でもして飛び上がった様に見えなくもない、

 

 ただ、飛び上がったソレは、確実に地上攻撃を続ける航空機へと向かう。


   *

 

 既存のどの航空機では有り得ない動きで、青年と良は飛ぶ。

 あっという間に、追い付いて居た。


「どうするんです!」

『何処でも良いから! 胴体辺りで下ろしてくれ!』

「それで、その後は!?」

『決まってんだろ! 中からぶっ潰すのさ!』

 

 周りを流れる空気故か、二人の声は若干荒い。

 それでも良の声を聞いた青年は頷く。


「大丈夫ですか!?」

『任せろよ』


 若干の不安げな顔と共に、青年は良を機体に下ろす。

 おろされた時点で、良は腕を振り上げると、そのまま機体表面へ打ち付けた。


 ただの人間がそんな事をしても、拳を痛めるだけだろう。

 が、改造人間の手は苦もなく刺さる。

 それはあたかも、解体用の工具の様であった。  


 穿った穴に手を引っ掛け、無理やり押し開く。


 十分な穴が開いた段階で、良は其処から中へと飛び込む。

 その様を、青年は心配そうに見ていた。


   *

 

 いきなり航空機の壁に穴を開けたらどうなるか。

 答えは単純に中が大荒れに成ってしまう。

 

 中に居た者達は、本来の仕事を忘れて大慌てであった。


 ただ、そんな騒ぎの中で平然と立っているのは良である。


『なんだよ? これぐらいがなんだってんだ?』


 生身の人間が急激な気圧の変化と揺れに襲われる中、良は平然とそう言い捨てる。

 本来ならば、一人一人念入りに相手をしてやりたいが、其処まで時間を使うつもりはなかった。


 揺れなど意に介さず、操縦席が在るで在ろう機首の方を目指す。

 途中、乗組員が拳銃で良を撃つが、ドングリ程の弾では装甲を抜くことなどは出来はしない。


『おい、いい加減にしろよ?』


 撃たれた良は、撃った相手の頬を叩いた。

 その勢いは凄まじいのか、叩かれた首は有り得ない方を向いてしまう。

 この時、良は怒りからか手加減をしていなかった。


 叩いた相手の身体が崩れ落ちるが、ソレには気を止めない。

 良は、ただ前へと歩いた。


    *


 操縦席だが、基本的には扉で後方とは区切られている。

 もし、機体に何らかの問題が発生しても、操縦を続けられる様に。


 とは言え、そんな扉ですら良にとってみれば差ほどのモノでもない。

 手を突き入れ、力任せに引っ剥がす。


 良が操縦席へと入り込む訳だが、相手が驚かない訳もない。


「貴様!? どうやって!?」


 警告音が喧しく鳴り響く中、機長と良は向かい合う。


『どうやって? 企業秘密さ。 そんな事よりもだ、テメェら、手出し出来ないからって好き放題やってくれたじゃないか、覚悟は出来てんだろうな?』


 当たり前だが、地上攻撃を行っている者達にとって、今の事態は有り得ない事だろう。


 殆どの場合、地上に居る者達は手も足も出せずに散る。

 その筈が、いつの間にか誰かが機内に入り込んでいた。

 有り得ない事に、副操縦士ですら震えていた


『おいこら、テメェらの裏に誰が居る? ソイツの名前と、何処のアホだか言えよ。 そうすりゃ、命ぐらいは何とかしてやるぜ?』


 本来ならば、機内の者達全員を挽き肉(ミンチ)にしてやりたい。

 だが、大型の地上攻撃機を用意出来る者などそう多くはないだろう。


 怒りは胸に秘め、良は相手を睨んでいた。

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