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悪の組織、はじめました  作者: enforcer
油断大敵! 忍び寄る影!?
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油断大敵! 迫り来る影!? その15


 良が率いる組織は、規模だけを見れば脆弱な部類に入る。

 大規模な作戦を実行出来るだけの戦力も無ければ、人員と怪人の数も不足している。


 それでも、そんな小規模な筈の組織は、敵側の想像を超えていた。

 直ぐに終わる筈の作戦は、一向に終わらず、それどころか、犠牲者の数だけが増えていく。


 そんな戦場の空の上ではグルグルと旋回する飛行機は僅かに光を放っていた。


   *


 轟音立てて飛び回る飛行機だが、その中の一機はただの輸送機ではない。

 機体側面から覗くのは幾つかの砲塔。

 

 その機体は、地上攻撃用のモノである。

 

 本来ならば、怪人の投入によって隠密の内に事を片付ける手筈。

 事が終わったならば、全ては無かった事になる。


 しかしながら、それが失敗した場合の備えとして、この機は派遣されていた。


 航空機の中で、機長は、何処からか送られて来た連絡を受ける。


「は? 確認しますが、下には味方の部隊が展開中ですよ? 現在も戦闘は続行中で……」


 尋ねる機長ではあるが、その顔色は芳しくはない。

 数秒後、機長は「……了解しました」と応えた。


 忌々しそうに通信機を切る機長へ、副操縦士コパイロットが怪訝な顔を覗かせる。


「機長、どうされたんです? 司令はなんと?」


 尋ねられた機長は、眼を細めた。


「今すぐ、下を全て焼き払え……とのお達しだ」


 苦い声に、副操縦士は目を見開く。


「冗談ですか? 今、下では味方の部隊が戦闘中なんですよ?」


 確認の為に問う副操縦士だが、機長は前を向いたままである。


「損害は考慮するな、だそうだ」

「そんな、しかし……」


 自分の意見を具申しようとする副官を、機長は一睨みで黙らせる。


「いいか? 俺もお前も、ただの駒だ。 上がやれというなら、それを疑わずに黙って従う。 それとも、お前の勝手で止めるか?」


 機長は静かに自分の腰へ手を伸ばす。

 其処には、ホルスターに収まる拳銃が在る。

 必要ならば、それは使用を許可されていた。


 問われた副官は「いいえ」と応じるしかない。


「では、始めよう」

 

 言葉少ない機長は、操縦桿を傾ける。


 良達が派手に戦って居るからこそ、わざわざ誰かが標的を指示せずとも飛行機からは見えている。


 許可無しに他国の土地に向かって航空機からの発砲などは言語道断だろう。

 とは言っても、内々に話を通されていればそれは変えられる。


 だからこそ、組織の飛行機は悠々と空を飛びながら、標的を狙った。


「射撃手、攻撃開始。 下に居る動く者は、全て片付けろ」

 

 機長がそう指示を飛ばすと『了解』という声が返ってくる。


 程なく、飛行機の側面から覗く砲塔が火を噴き出す。


 20ミリ機関砲、40ミリ速射砲、105ミリ滑空砲。

 どれもこれも、人間をあっという間に挽き肉に出来るモノだ。


 当たり前だが、下には自軍の怪人も居るだろう

 しかし、それは無視されていた。


    *


 混戦が続く中。 怪人を倒しては次へ、また倒しては次へ。

 いつまでソレが続くのか、何時になれば終わるのか。


 良はそう悩んだ。


 どれだけの怪人が投入されたのかは知る由もないが、良にとっては馬鹿げた戦いとしか思えない。

 

 誰が何を得するでもなく、ただ、戦う。


 そんな中、敵側の怪人の一団が急に吹き飛ぶ。


『なんだなんだなんだぁ!? 俺は何もしてねーぞ!?』

 

 慌てる良の周りでも、何かが炸裂した様に弾けた。

 木は倒れ弾け飛び、同時に怪人も吹き飛ぶ。


 破片が飛んできて装甲に当たっても、問題は無い。

 ただ、愕然とする事実は見えていた。


『ちきしょうめ!? 上からか!?』


 慌てて空を見上げれば、見えるのは発砲炎。

 光ったと思った途端に、何かが飛んでくる。

 

 この事態には、敵側の怪人達ですら予想外だったのだろう。

 皆が戦いを止め、何が起こって居るのかすら分からず慌てる。


『どうなってる!? 俺達が居るんだぞ!』


 知らされていないからか、怪人は声を張り上げる。

 が、直ぐにその怪人に何かが当たり、その身体は飛び散った。


『どうする!? このままじゃ無理だ!』


 良と共に戦っていた蜂にしても、空に居る相手では分が悪い。

 そんな仲間の声に、兜の中で良は歯をギリリと軋ませた。


『やいテメェら! 聴け!』可能な限りの大声を、良は張り上げた。


 もはや敵がどうのこうの云っている場合ではない。


『今から逃げるぞ! 俺に付いて来い!』

『おい! 冗談だろ!?』


 蜂は慌てるが、良は譲る気はなかった。

 ほんの少し前まで、殺し合っていた輩にも声を掛けてしまう。


『喧しい! 死にたくなきゃ死ぬ気で走れ!』


 そう言うと、良は踵を返し、駆け出す。

 端から見れば敵将の敗走に見えなくもない。

  

 だが、辺りに降りかかる火砲からか、怪人達は自ずと良の後へと追い始めていた。


  *


 良と怪人達が目指して居るのは、組織の地下基地。

 その基地にも、やはり弾は降り注ぐ。


 ただ、保険として良が愛を残した事が幸いしていた。 


魔法障壁マジカルシールド!!」


 少女が声を上げながら杖を振れば、淡く光る壁が基地を取り囲む。

 以前にも、少女の力は砲弾ですら止めて見せた。

 

 障壁によって阻まれた砲弾は、その役目を果たせない。


 が、障壁に触れない場合、話は違った。


 雨の様に飛んでくる銃弾は怪人ですら引き裂き、大きめな火砲は地面までもを抉る。

 時折飛んでくる大砲は、基地の防衛を担っていた軍団諸共、怪人ごと辺りを吹き飛ばして居た。


 良と同じ姿が、飛び散る。

 その様に、愛は思わず口を手で覆う。


 中に人が入っていないとは言え、見ていて気持ちの良い光景ではない。

 ましてや、自分が慕う相手と全くの瓜二つが引き裂かれる。


「酷い……どうして」


 基地を護る為に、愛はその場を離れる事が出来ない。

 離れてしまえば、もう基地を護る事が出来る者は居ないのだ。 

 事実、大幹部であるソードマスターは何も云わずに座っていた。


 剣では砲弾を撃ち落とす事は出来ない。

 無力感故に、口を出す事もない。


 押し黙る壮年とは違い、魔法少女は必死に辺りを見渡す。


「篠原さんは……」


 呼び掛けはするが、頼まれた以上それを全うする。 

 良を慕う少女は、唇を強く噛んでいた。


   *


 基地から離れた良だが、兎に角走る。

 敵を基地から離す為にと、思った以上に離れてしまっていた。


 改造人間の脚速く、その移動は素早いと言える。

  

 但し、それはあくまでも同じ目線で見ていればの話である。

 遥か上空から見れば、相手が例え100キロで走っていても速くはない。

 

 寧ろ、動き回っている分、狙いは付けやすかった。

 

 怪人も必死で逃げ回るが、戦車ですら破壊出来る砲弾の前には無力である。

 

『ぎゃあ!?』撃たれ倒れる怪人。


 何とか助けようにも、誰もが逃げるだけで精一杯である。


『走れ!! もっと速くだ!』


 誰彼構わず狙われて居る。

 基地まで後少し、という所で、良は後に続く者を鼓舞した。


 奇妙な程の一体感。 

 敵の怪人達の中にも、何故自分は先を走る者と戦っていたのかと感じる。


 そんな中、一発の砲弾が良の後に続くハナカマキリを捉える。


『姉さん!?』『嘘!』


 まさか、自分達の身内に当たるなど、想定外の蜘蛛と我が慌てる。

 見てみれば、カマキリは片足が吹き飛んでいた。


『行って! 止まっちゃ駄目!!』


 走るどころか、歩けない自分を敢えて見捨てるカマキリ。

 その姿に、良は足を止めていた。


『おい! 首領!?』


 振り向こうとする蜂に、良は先を指差す。


『向こうだ! そのまま走れ!』


 行き先示した良の声に、蜂が『くそ! コッチだ!』と応える。


『お前らも行け!! こんなとこで死にたくねぇだろ!?』

 

 それだけを言い残すと、良は倒れたカマキリへと駆け寄る。


『あんた、なんで……』

『うるせぇ! 話は後だ!』


 相手が動けないと悟や否や、良はカマキリを担いだ。

 怪人で在れば、脚程度ならば何とか成る。


 基地に向かう間にも、多くを見捨てた。

 その悔しさが、良を愚考に駆り立てる。

 

 カマキリを担ぎ上げ、急いで先に行った者たちを追う。


『なんで、私……あんたを殺そうとしたのに』


 始末しようとした相手に助けられる。

 ソレはカマキリにとっては理解の及ばない行為であった。


 そうする謂われも無ければ、理由がわからない。

 先程戦った時ですら、良はカマキリに手加減をしている。


『なんでだぁ!? 俺が大馬鹿野郎だからさ!』


 自分が如何に馬鹿な真似をしているのか。

 それは良自身が一番分かっていた。


 敵側の怪人を見捨てた所で、誰に文句を云われる筋合いもない。

 それどころか、しなくても良いことをしてしまっている。


『……あんたさ……いる?』 

『はぁ!? なんだって!? 今すんげー忙しいんですけどぉ!?』

『なんでもない……』


 カマキリが何かを問おうとしたが、爆音に掻き消され聞こえなかった。 

 確認したいのは山々では在るが、そんな余裕など無い。

 ましてや、余分を担いで居る分、必死である。

 

 そんな良の背中を、激しい衝撃が襲った。


『ぐわ!?』『キャッ!?』


 大型のダンプにでも突っ込まれたかの如き衝撃。

 装甲のお陰か、貫通こそしなかったが、転倒する。


 倒れた動けない標的ともなれば、狙い目だろう。


 降り注ぐ砲弾が、良へ向かう。

 如何に装甲が硬かろうが、直撃ではどうなるかわからない。


 そんな二人を庇う様に、軍団が多い被さっていた。

 

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