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悪の組織、はじめました  作者: enforcer
油断大敵! 忍び寄る影!?
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油断大敵! 迫り来る影!? その14


 一斉に向かってくる怪人達に、良は思わず兜の中で笑う。


『あはは……こりゃあ逃げたくなるなぁ』


 良の声に、隣で構える蜂はフンと鼻を鳴らした。


『逃げ出したって良いんだぜ? 別に、こんなのは初めてじゃない』

 

 強がる声に、良の笑い強くなった。


『云ってみただけさ。 第一、本気で嫌ならとっくに逃げてるよ』

 

 良の声に、嘘は無かった。

 ハッキリ言えば、組織丸ごと捨てて逃げ出す事は出来なくはない。

 その為の資金も在れば、後はするかしないかだけの話である。


 そうしない理由は、単純だった。 

 ただ単に、相手が気に入らないからである。


 人として生きていた間、良はずっと我慢を自分へ課してきた。

 何をするにせよ、ジッと耐える。

 それは、生きる為には仕方のない事だとは分かっても居た。


 そうせざるを得ないから、そうする。


 その生き方は、在る意味家畜のソレである。

 何を考えるでもなく、ただ生きる為だけに自分を捨て去っていた。


 良にとって、それは辛い人生であったと振り返る。

 だが、今は違った。


 嫌ならば嫌だと、堂々と言える。

 気に入らないなら、相手を存分にぶちのめせる。

 見た目に映える奇跡は無いが、その分、生きている実感が在った。


『それに……』

『……それに、なんだよ?』


 思わせ振りな良に、蜂は催促する。


『此処で逃げたりしたら、皆に向ける顔が無くなっちゃうぜ』

『あんた、つくづく首領には向いてないな』


 蜂の云いたい事は、良も分かっていた。


『んなこたぁ、云われるまでもないな。 向いてないって、しょっちゅう云われてる』


 自分が如何に組織の首領に相応しくないのか、それは自覚している。

 そもそも悪の組織である以上、他人に気を向ける事自体馬鹿げている。

 

 適当に命令に従いながら、したい事をし、好きなように生きる。

 その方が、人生は余程素晴らしいモノに成るだろう。


 本質的に、人間は他者を不幸にしか出来ない。


 他者を不幸に陥れる事で、自分はその分の幸せを掴み取るの事が出来る。

 何処までも貪欲に、何処までも冷淡に。


 もしも、良にそれが出来るのでれば、今頃組織は全く違う形をしていた筈だ。


 ソレが出来ない故に、良は、首領自らが前線に居た。


 後少しで、良達は怪人に飲み込まれる。


 が、二人の改造人間が怪人に飲み込まれる前に、何者かが横から割って入って来た。


『なんだぁ?』


 自分のそっくりさんが急に現れたなら、人は驚く。

 良にしても、それは例外ではない。


 そして勿論、相手側も驚きを隠せなかった。

 

『なんだ、此奴は!?』


 怪人の声に、良と瓜二つの乱入者は相手を指差す。


『貴様ら悪党に名乗る名など無い!』


 現れた軍団は、全員が同じ声で、全くの乱れなく同じ瞬間タイミングでそう言った。

 言葉だけでなく、動きにもそれは現れている。


 連携を取るという事は、意外な程に難しく、他者との意志の疎通が欠かせない。 

 でなければ、互いに邪魔をしてしまいマトモに動きも取れないだろう。

 

 が、謎の軍団にはそれが無かった。

 全員が一つの意志によって統率され、乱れは無い。


 良の劣勢をひっくり返して見せる軍団。

 ただ、一つ疑問が湧いた良は、手近な1人の肩を掴む。


『お取り込み中申し訳ないんすけど』


 そう声を掛けると、兜が良を見る。

 やはりと言うべきか、全くの同じ姿という事には違和感が強い。


『何だ、友よ』


 聞こえて来た声は、良には憶えがある。


『……あんたは! でも、なんで』


 慌てる良に、兜は小さく縦に揺れる。


『前にも云ったが、私は君に返しきれない恩がある。 君に報いる為ならば、何度でも君を助けるよ』


 有り難い事には代わりはない。 

 ただ、その理由が良には分からなかった。


『んー、すげー助かるんすけどね、どうして其処まで?』


 良の中では【何をした】という記憶は無かった。

 それに対しての反応は、僅かに兜が横へ揺れるだけだ。


『必要だからそうしてる。 君は、私の友だからな』


 その言葉には、真意は含まれていない。

 だが、声色には【二度と大切なモノを失わない】という決意を秘めた力が込められていた。


 ただ、事を知らない良は首を傾げそうになる。

 そんな良の背中を、蜂がバチっと叩いていた。


『ほら! ボサッとしてんな! 今がチャンスだぜ!』


 促された良は、思わずウンと頷く。


『今行こうと思ってんだよ! すんません! また!』


 挨拶もそこそこに、蜂へと続く良。

 その姿を、兜から覗く目線が追っていた。


   *


 現れた軍団だが、勿論とばかりに基地の防衛もしていた。

 ただ、やはり謎の存在には誰もが困惑を隠せない。


 何せその姿は良その物なのだ。


 特に、基地の守りを任された魔法少女はウンウンと唸る。


「どうしたのかね?」


 掛けられる声に、愛はハッと成る。


「え? あ、いえ……あの人達、誰なのかなぁって」


 傍目には良その物もなのだが、立ち居振る舞いは違った。

 人間臭さが残る良に対して、軍団は機械に等しい。


 少女の疑問に、剣を拭う壮年はフフッと軽く笑う。


「誰なのか、それは問題かい?」

「え? でも」

「首領を助ける為に、わざわざ手間暇掛けてくれる奴が居る。 それに、君もそうだろ?」


 壮年の声に、愛は分かり易く眼を泳がせた。


「い、いえ、私は、その、何て言うか……困ってる人を見捨てられなくて」


 如何にも取って付けた様な少女の声に、壮年は笑う。


「ふぅむ? ならば、問題ないのではないか? 彼、いや、かの者達もまた、此方が困ってるこらこそ助勢してくれるんだ。 在る意味、首領の人徳が成せる技かな?」  


 大幹部であるソードマスターの声に、少女は小さく頷く。

 何せ、川村愛にしても、同じ気持ちだったからだ。


「それにしても……まだ来るんでしょうか?」 


 良が前線で戦っていたからこそ、基地まで辿り着ける怪人は多くはない。

 それでも、時折姿を見せる。


 現れた以上は、倒さねば成らない。

 だが、如何に怪人といえども、中身は人なのだ。


 アナスタシアとカンナにしても、変身した姿でどうであれ、その中身は人が入っている。


 その事実に、少女は心を痛めていた。


 それでも、次々と怪人は運ばれてくる。

 まるで地獄の蓋が開き、其処から亡者が這い出た様に。


「向こうには、向こうの事情も在るんだろうな」

「でも、こんなの意味ないですよ! こんな事に何にもならないのに!!」 


 愛の声に、壮年は笑った。


「その通りだお嬢さん。 人間だけが意味も無く戦えるんだ。 意義や意味なんて無くて良い。 ただ、したいからする。 それは、古の昔からずっと同じだよ」

「そんな、じゃあ、終わらないですか?」


 憔悴し掛ける少女に、壮年は鼻を唸らせた。


「どうだろうな? もしかしたら、首領は何かを変えられるかも知れない」


 そんな声に、愛はパッと落ち掛けていた頭を上げた。


「そう、そうですよね! 篠原さんなら!」


 確証が在る訳でもない。

 それでも、少女は自分の知っている良に縋っていた。

 何故なら、ソレこそが彼女の目的だからだ。


 残念な事に、その人物は遠くで近場に居なかった事だろう。


   *


『ブェックシ!?』唐突に兜から漏れ出るくしゃみ。 


 花粉も埃も、関係が無い筈の改造人間である。

 にも関わらず、良は鼻がムズムズと成るのを感じていた。

 

 珍しい光景に、蜂も顔を向ける。


『どうしたい? いきなりくしゃみするとか』

『え? いや、なんか、急に鼻が』


 何も無い時ならば、この二人の会話はたわいないモノだろう。

 が、乱戦時は違う。


 如何に増援が来てくれたとは言え、敵側の怪人は多数だ。


『今だ! かかれ!』

  

 相手側の怪人達もまた、必死である。

 命令をされた以上【出来ませんでした】では通らない。


 失敗は即、自分の廃棄処分を意味している。

 背中に常に死を背負った者達にとってみれば、勝つしか道は無い。

 馬鹿げて居ようが居まいが、怪人に成った以上はそうする他はないのだ。

 

 ただ、そんな怪人達を何かが弾く。


『お?』『あん?』


 良と蜂が何事かと驚く。

 二人ともに、空中の相手を叩く様な飛び道具は持っていない。

 つまりは、誰かが何かをしたという事になる。


 辺りを見渡せば、ソレは見つかった。 


 如何にも痛々しい姿の怪人が三人。

 ハナカマキリ、女郎蜘蛛、蛾

 ただ、その三人の姿を良は忘れては居ない。


『なんだ? 新手か?』


 すわ敵かと構える蜂を、良が手で制した。


『あんたら、どうして?』


 とっくに逃がしたと思った良だが、当の三人は逃げなかったらしい。


『だって、私達、行く場所無くて……』

『それに』

『貴方に傷物にされちゃったし』


 実に場違いかつ、言葉が不味い。

 三人の声に、蜂の眼が訝しむ様に窄まる。


『首領、あんた……そんな酷い事を』

『おいこら! 誤解すんな! 俺は断じて疚しい事はしてない!』


 身の潔白を示したい良だが、今はその余裕が無かった。

 釈明するつもりならば、半日は語れるかも知れない。

 が、戦闘中にそんな事をしている暇が在る筈もない。


 今ともかく、戦いを終えるべく構えを取り直す良。


『とにかく! あんたらはそんな体で無茶すんな! 無理をしないように隠れとけ!』


 如何に改造人間とは言え、ボロボロのままでは戦える筈もない。

 自分がしてしまった事とはいえ、捨て置けないからか、良は三人へ指示を出す。


 そんな良へ、蜂は『あんたも隅にゃ置けねーなぁ』と茶化していた。

 実際には良の人柄を誰よりも蜂は知っている。

 何故なら、彼もまた、良に助けられたら者だからだ。


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